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第四十話③

 南側に進み始めて数時間、日を跨いだ辺りで、こちら側には殆ど宿がないことを知る。

 どうやらアカリの心配していたことが、現実となってったらしい。


「……ここもダメか」

「そうね……全滅ね」


 殆ど宿がないと言っても、1件も宿が存在しないわけではない為、手当たり次第に、とは言っても高々3件程度だが回って確認してみるが、何処の宿も既に部屋は埋まってしまっており、その他の店も一応見てみたが、既に受付を終了していた。


「仕方がない。予想外な事に、街中で野宿だ」

「森の中での野宿は、何というかキャンプをしている気分になれたけど、街の中だと途端に楽しさを感じなくなるわね」


 結局本日は2人から連絡が来る事はなかった。

 連絡は明日……いや、もしかしたら数日は犯人探しに時間をかけてしまうかも知れない。


「なぁアカリ、明日は俺たちも犯人探しを手伝わないか? そうでもしないと、こうした日がまた来てしまうかもしれないぞ?」

「それもそうね……でも、この街で人脈も、土地勘も、何もない私たちが果たして犯人探しなんて出来るのかしら」

「難しいかもしれないが、何もしないよりかはマシだと……思う。単に無駄足な気もするが、それで少なからず用事を早く済ませる可能性が出てくるのであれば、やってみよう」

「そうね。ひとまず明日のことはわかったわ。それで、今日は何処で寝るつもりなの?」

「なんだ、寝るつもりなのか? 俺は明日、何処かの宿が開くまで起きているつもりだったが」

「勘弁しないさいよ。私はもう限界よ、寝たいの、眠たいのよ」


 ならばどうしたものかと考えてみるが、ベストだと思われる解決策は思いつかない。

 今から宿の多い東まで歩くかとも考えたが、東側まで辿り着く頃には、既に日が登っている時間帯になってしまうだろう。


「仕方がない。少し捕まっていろ」


 俺はそう言いながらアカリを抱き上げて、近くにあった建物の屋根へと登り上げた。


 三角の屋根の為、少し立っていずらい環境ではあるが、道端で眠るよりかは幾分かマシだろう。人目にもつかないしな。


「ここを借りて、今日は休ませてもらうとしよう。文句はないな?」

「まぁそうね。落ちそうになったら、拾い上げてとだけ言っておくわ」


 そう言いながらアカリは横になる。

 俺も同じく横になりながら空を見上げると、愛も変わらず綺麗な星空が見えてきた。


「元いた世界とは大違いだな」

「そうね。少なくとも、私が住んでいたところからでは、ここまでの景色はみる事が出来なかったわ」

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