第三十九話①
自分のコピーを魔法によって生成して、それを自分がいた位置に置いておく。
俺は今、パンプキンにやられた後に、城の地下にある牢獄に収容されていた。
兵士たちは死体だと思っていたみたいだが、死体を本来牢獄に入れる様な真似をするだろうか。
少しばかり怒りを感じながらも、見張りの兵士が席を外している今のうちに、俺は退散する事にした。
複製したコピーには生命を吹き込んでいない為、万が一にも動き出す事はないだろう。
ここで変に命まで吹き込んでいれば、自分対自分といった、どちらが本物かというSF作品の様な展開になってしまいかねない。
俺の代わりに犠牲となる肉体に、一応手を合わせた後、俺は牢を出ていく。
牢に鍵はかかっていなかった事から、死体を牢獄に捉えたわけではなく、一旦牢獄に入れておいたという事を知る。
どちらにせよ腹正しいが、まぁいいとしよう。
作戦が成功した事に、俺は少しばかり浮かれていた。
簡単な仕事であったとはいえ、成功といった体験は、あまりに心地が良く気が晴れる。
牢を向け出した後、城の中から出ようとしたところで、目の前に複数人の兵士が視界に入った。
俺は咄嗟に物陰に隠れて、奴らがその場を去るのをじっと待つ。
「なぁ……本当にやるのかよ?」
「命令なんだ。従わなければ、どうなる事か……」
「従わないと、一体どうなるってんだよ?」
「それがわかんねぇからびびってんだろ!? あの人がまともだった事なんて一度もねぇじゃねぇか!!」
何やら穏やかではない雰囲気だ。
仲間同士が争っている……というよりも何かに怯えて、嘆いているに近いだろう。
「あの人」という人物は一体誰なのか……まぁ国が管理している兵士たちを動かせる人間など、限られている気もするが、ひとまずもう少し様子を見てみるとしよう。
すると兵士たちは何やら重い足取りで、扉に向かって進んでいく。
兵士たちが扉を開けると、そこは外に繋がっていた。
案外直ぐそこに出口があったことを知り、安堵していると、兵士たちは突如怒号を上げながらその場から駆け出し始めた。
「お前ら、ここを離れろ!」
「こんなところで騒ぐんじゃない! 斬りつけられたいのか!?」
兵士たちは城の前で群れていた国民達に、その様な怒号をぶつけながら、剣を手に取り脅す様にして、その場から離れる様に指示する。
その場所は、パンプキンを支持するもの達が集まっていた場所である。
見たところパンプキンの姿は既に見当たらないが、国民達は未だパンプキンの話題で盛り上がっていたみたいだ。




