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第四話②

 ひとまず、アカリが挑めるランクの中で、最も高難易度のものを申請して、早速俺たちはクエストに向かう事にした。


「ちょっと、こういうのって普通は、防具とか持っていくもんじゃないの?」

「そもそも俺のステータスが普通じゃないからな。そのようなものは必要ないんだ」


 不安そうにするアカリを他所に、俺は早速町を出て、クエスト場所へと向かっていく。


「ここからどれくらいかかるわけ?」

「町から1時間もすればつくと、受付のお姉さんが言っていただろ?」

「言ってたけど…貴方、何か移動する魔法とか持ってないわけ?」

「持ってはいるが、そんなものを使うのは情緒に欠けるだろ?俺は戦闘においては手加減をしないが、こう言ったところではなるべく魔法を使いたくないんだ」

「全く……変なこだわりなんて持つんじゃないわよ」


 アカリとそんな下らない、まるで言い合うような会話をしながら、俺たちはクエスト先である。

 『触れぬ森林』へと向かっていった。


 ――


 アカリは文句を垂れながらも、結局一度も休む事なく、歩き続けた。


 そして遂に何もない道を抜けて、木々で先を見る事が出来ない森を発見した。

 ここが今回の目的地、『触れぬ森林』だろう。


 俺たち2人よりの何倍も大きな木々が生えており、太陽の光が森の中を照らさない上に、長く丈夫な草が生えている。

 これは先に進むのに苦労しそうだ。


「思ってたよりも森ね。人が歩ける道がなさそうじゃない」

「俺たちがいた世界みたいに、整備されていないからな。自分たちで森を切り拓きながら進むしかない」


 俺たちは長く生えた草木を避けながら、先へ先へと進んでいく。

 湿った暑さが続いており、服は汗ばんできて、偉く喉が渇きはじめてきた。


「ねぇ…何か飲み物とか持ってない?本当に何も持ってきてないから、どうしようもないんだけど」

「うるさいやつだな。……仕方ない」


 俺は汗を拭いながら魔法を発動させて、この周辺の地形を調べた。

 そしてこの近くに川がある事を知り、それをアカリに知らせると、クエストなど二の次だと言うように、その川へ案内するように催促される。


 ――


「……すごいわ。本当に川がある」


 そう言って川に近づき、手で水を掬うようにして、水を飲む。

 アカリは満足そうにしながらそれを続ける。


「気が済んだら先に進むぞ」

「貴方は飲まなくていいの?」

「もう飲んだ。お前が夢中になって飲み続けてる間にな」


 川の近くだからか、ここは森の中と比べて涼しく、とても心地が良い。

 クエストを早く終わらせたいが為にアカリを急かしたが、正直この場に止まっていたい気持ちが目ば始める。


「それにしても貴方の魔法って本当に便利ね。地形を直ぐに把握出来るって、かなりこの世界を生きていく上ですごい事じゃない?」

「だからこそ、この力は面白みがないから使いたくないんだ。もう使わせないでくれ」

「だったら、クエストが決まって直ぐに向かうんじゃなくて、しっかりと準備させてちょうだい」

「それは……わかった」


――


 少ししてから俺たちは再び森を捜索し始めた。

 先程たらふく水を飲んだというのに、既にまた喉が乾き始めた。先程まで渇いてきていた服も、再び汗でびっしょりとなってしまう。


「貴方、良い加減その服脱いだらどうなの?ていうか何でこの世界で制服なんてきてるのよ」

「この世界にない服の会場だからな。これは言わば俺のアイデンティティだ。文句を…言うな」

「私は別にいいけど、もう既に朝でダラダラじゃない」

「それをいうならお前だっていつまでその妙なドレスを来てるんだ?こんなところ出来ていても、動きにくいだけだろ」

「動きにくいわよ!そういうなら何か新しい服買わせなさいよ!!」


 余程服に対して不満があったのか怒らせてしまった。

 俺たちはヘトヘトになりながら、先の見えないこの森を進んでいく。


「1つ聞きたいんだけど、このクエスト目標のモンスターって何なの?クエスト名は『森の主の討伐』とかになってたけど、あれ何で肝心のモンスターの名前が書いてないわけ?」

「依頼書でよくあるやり方だな。具体的なモンスター名などは記載しないで、冒険者の好奇心を刺激する。そういった、昔のながらのやり方みたいだ」


 だがこれも、やり過ぎは禁止とされている。

 あまりにクエスト内容が違った記載をされていた場合、例えば物凄く強靭なモンスターを討伐する依頼なのに対して、『初心者でも討伐可能!!簡単な討伐クエスト!!』などと言ったクエスト名にする事は、固く禁止とされている。


「森の主ねぇ……やっぱりファンタジーっていうくらいだから、ゴブリンとかオークなのかしら?」

「ただのゴブリンやオークじゃ主にはなれないな。とは言え森の主といった名前なら、ドラゴンということもないだろうし……検討がつかないな」


 そんな話をしている最中、すぐ近くで何やら大きな物音が聞こえ始める。

 明らかに、自然が発する音ではない。


 地を這うような異質な音に加えて、重く、そして森全体を大きく揺らすこの感じ、相手の姿は未だ見えないが、その大きさは大体察しがついた。


「……噂をしてたら何とかって事ね」

「探す手間が省けたな。直ぐそばに開けた場所がある、あそこでやり合うぞ」


 そう言って俺たちは直ぐそばにある、木々などが生えておらず身動きが取りやすい、開けた場所に移動した。


 これにより、敵から俺たちは丸見えとなっただろう。

 いよいよこの森の主のお出ましとなる。


 その予想は見事的中し、森の中から巨大な何かがこちらに突っ込んできた。

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