第三十八話① アカリ視点
曇っていた空は見る影もなく消え失せて、雲ひとつない青空が広がり、その中から溢れ出す光が街を包み込んだ。
その中心に佇むパンプキンは、まるで神話に登場する英雄の様な神々しさを放っており、皆はパンプキンに感謝というよりも信仰する様に歓声をあげていた。
「いやぁ……それにしても大成功ね。貴方が無駄に長引かせたのが良かったのかもしれないわ」
私は通信魔法で、兵士に運ばれている状況のマヤトと会話をしていた。
現状報告件、成功の喜びを分かち合っていたのだ。
「見る目があるな、その通りだ。勿論、全てが作戦通りだぞ」
この発言が嘘である事は直ぐにわかったが、機嫌がいい為飲み込んでやる事にした。
「それで、この後どうするの? このままだと、貴方燃やされるか何処かの山かに処分されるんじゃない?」
「適当な隙をついて逃げ出すつもりだ。勿論、俺の代わりとなるコピーを作りおいてな」
当然かの様に言っているが、本来兵士の隙をつくのも、兵士を欺ける程の精巧な自分のコピーを作り出す事も、簡単ではない筈だ。
今回のマヤトが魔法を使用する頻度は、いつにも増して大胆さが見受けられる。
恐らく今後は、「パンプキンの件では、使い過ぎたから」と、より一層魔法の使用を渋る事になるだろう。
女神から貰い受けた力を、ドヤ顔で使用するその姿は腹正しい為やめてほしいと思う反面、ある程度魔法を使用してもらった方が楽である、と言う考えも正直なところ存在はする。
だが、目立つような事をするのも手間を増やす理由になるだろうし、控えめに越した事はないかと、自分に言い聞かせた。
「それじゃあひとまず、私はパンプキン通りに戻ってようかしら、特にやる事もないでしょ?」
「やる事はないが、パンプキン通りに戻るのはやめておけ、まだ危険だからな」
「……やっぱり、可能性はあるのかしら」
作戦は成功して、パンプキンは村人や兵士から慕われる存在になった。
それはつまり、パンプキンの住むパンプキン通りを滅ぼそうとする国王の判断を、反対する者たちが増えたであろう事に直結する。
だが、その事実を受け入れた上で、国王は納得するだろうか。
それを言い出したら今回の作戦はなんだったのかと思うかもしれないが、あくまでも、もしもの話だ。
流石にあの国王でも、一国を救った英雄に、その様な愚かな対応をするとは私は思えない。と言うよりも、面倒な為考えたくはない。




