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第三十七話②

 だがどうも引っ掛かる。

 パンプキンの魔法は収納であった筈だが、果たしてそれは衣服のポケットなどを利用した物だっただろうか。


 記憶によれば、ポケットを利用しなくても、特に何もない空間から物を出現させる事が出来た筈だ。

 

 ならば何故、このような手間のかかる真似をしたのか……。


 すると、頭に何かを突きつけられている感覚を覚えた。

 金属の様な、ひんやりと冷たく重厚感の感じるそれが、一体何なのかは直ぐに検討がついた。


 ゆっくりと振り返り、後ろを確認すると、そこには拳銃を俺に突きつけているパンプキンの姿があった。


 コイツは何もせずともその場に浮いている。足を見るに、収納していた体のうち、上半身だけをこの場に出現させているのだ。

 最初からガラクタを使って空を飛ばなくても、こうすればいつでも俺と同じ高さまでくることは出来たのだろう。


 ならば何故そうしなかったのか、それはこうして俺に隙をつくり、確実に止めを刺す為だったのだろう。

 仲間ながらに天晴れだ、魔法を制限しているとはいえ、ここまでスムーズに追い詰められる事になるとは思っても見なかった。


 何処で手を抜くべきかと考えていた程だったからな。


「私の勝利の様ですね」

「……どうだろうな」

「ならばこの状況を、打破してみて下さい」


 そう言いながらパンプキンは引き金を引いた。

 大きな音ともに銃弾が額へとぶつかり、俺は首を反らせた。


 当然魔法で防いだわけだが、側から見れば止めを刺されたかの様に見えるだろう。兵士たちはじっと俺の方へ視線を向けている。

 ここで俺は地面に墜落し、そのまま死体同然に動きを見せず演技を続ければ、今回の作戦は成功となる。


 だが……もう少しだけやり合ってみたいと、そんな馬鹿馬鹿しい考えが俺の中で湧き上がり始めていたのだ。


「なぁパンプキン……個人的な話をしてもいいか?」

「ええ勿論です」

「……正直舐めていた。お前がここまでやるとは思っても見なかったんだ」

「ならば見直してもらえたと言った認識で宜しいですか? であれば喜びを見せたいものです」

「見直した、見直したと同時に悔しさで一杯だ……我儘を言う様だが、もう少しだけ戦いを続けないか? 勿論、作戦は遂行させる」

「構いませんよ。実は、私も全力を出すのは始めてでして、今もアドレナリンの分泌によって、震えが治らないんです」


 両者は勢いよく構えをとって、お互いに睨みを効かせた。


 だが、俺自身も、相手であるパンプキンも、何処か楽しそうにしながら戦闘をつづけており、心配そうにする兵士たちを無視して、俺たちは全力でぶつかり合い始めた。

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