第三十七話①
兵士たちは一斉にドラゴンに向かっていき、皆でドラゴンの足など、手の届く範囲の場所を攻撃していく。
だが、ドラゴンはその様な攻撃をものともせずに、暴れ続けて街を壊していく。
先程はこの時点で兵士は諦めを見していたのだが、今回は必死にドラゴンへの攻撃を続けて、何とか食い止めようと必死になっている。
先程のパンプキンや王国騎士長とのやり取りで、闘志が燃えたぎっているのだろう。
彼らは止まる事なく行動を続ける。
「よそ見をしては、いけませんよ」
パンプキンは先程と同じく、ガラクタを大量に出現させて、こちらまで飛んでやってきた。
拳銃を握り、俺の頭上目掛けて構えてくる。
だが、魔法で生み出した強風によってパンプキンの腕を反らせて、拳銃がこちらに向かない様に仕向ける。
「どれ程の威力と速さを兼ね備えた武器を持っていようが、それを対象に当てる事が出来なければお飾りと同じだな」
「言い返す言葉がありません。……ただ、私の武器はこれだけではありませんよ」
そう言ってパンプキンは再び、魔法によってあらゆる物をこの場に出現させた。
雨の中では見えにくい程に小さなそれを、何なのか確認する為に目を凝らす。
そしてそれがわかった途端に、俺はその後から急いで離れた。
元いた場所からは突如爆音と同時に激しく火が上がる。
パンプキンはあの場に大量の爆弾を出現させたのだ。
あまりにも捨て身の技であるそれを目の当たりにし、奴の本気度合いを再確認した。
元いた場所は黒煙に包まれており、少し離れた位置からでも、全くもってその中を見ることは出来ない。
……まさかとは思うが、あの爆発に巻き込まれて死んでたりしないだろうか……だとすれば確認せねばならない。
俺はゆっくりと黒煙へと近づいて、風魔法でその煙を退かす。
するとその場には、燃えてよりどす黒くなった衣服だけが取り残されており、風に靡かれながらこちらへと飛んできた。
おかしい、奴の姿が見当たらない。
それも完全に見当たらないのだ。もし爆発に巻き込まれたのだとすれば、少なくとも肉片などは残っている筈、それすら見つからないと言うことは……。
するとここで、腹部を弾丸が掠めていった。
それが何処からの攻撃なのかは、考えずとも直ぐにわかった。
何と燃えた衣服のポケット中から、パンプキンは攻撃を仕掛けていたのだ。
物を何でも収納できる魔法とは聞いていたが、まさか自分自身もその中に入れる事が出来るとは驚きだ。




