第三十六話①
山ほどの大きさはある竜巻を生み出して、空気の密度を上げる為に自分と同じほどの大きさに縮め込む。
それを更に勢いよく回転させて、まるでミキサーの用になった竜巻をパンプキン目掛けて発射する。
距離はある為避けることは可能だろう。こちらとしても、本気でパンプキンを殺しにかかるつもりなはないからな。
……だが、パンプキンは直ぐには避けようとはしなかった。勢いよく向かっていく竜巻には目もくれず、何処かへ拳銃の照準を合わせている。
仕方がない、不自然だがあの竜巻を消滅させる他ないようだ。あんなものが当たって仕舞えば、肉体は人の形を保てないほどにぐちゃぐちゃになってしまう。
俺は竜巻を止める為に、新たな魔法を瞬時に発動させて、それを放とうとする。するとここで、ようやくパンプキンは動きを見せた。
何発も銃を撃ってみせた後、魔法を発動したのか、何処からともなく大きな岩で出来た壁を前へと出現させたのだ。
確かパンプキンの魔法は、あらゆる物を収納できるといったものだった筈だ。まさかあそこまで大きな物まで収納出来るとは思っても見なかった。
まるで有名アニメのロボットが使う道具の様だ。
岩の壁に激突した竜巻は、岩が砕けると同時に消滅した。相殺となったのだろう。
こんな事ができるのであれば、早いうちに壁を出現させるべきだったのではないかと首を傾げた。
あんなに何発もの弾を撃ってきたと言うのに、こちらには一発たりとも掠っていないのだ。何の為にギリギリまで壁を出現させずに、照準を合わせていたのかと疑問が残る。
俺は突如として上を見上げた。
何やら風を切る様な不気味な音が聞こえてきたからだ。
嫌な予感は的中し、ずっと上から何やら小さな弾がこちらへと落ちてきていた。
「なるほどな……」
先程弾丸を放っていたのはこれが目的の様だ。
パンプキンの使っている拳銃の飛距離は長く、それを空高くまで弾丸を飛ばしたのだ。
それが今、俺の元へと真っ逆様に落ちてきている。防ぐか逃げるしなければ頭上に直撃してしまい、俺は戦闘不能どころか死亡してしまうだろう。
防ぐにしろ、避けるにしろ、それらは容易いだ。ならば何故パンプキンはこの様な事をしたのか、考え見れば簡単だ。
「戦いを始めて直ぐに隙を見せるとは、宜しくありませんね」
そういってパンプキンは女王様を竜巻から剥がして、見事に奪還してみせた。
パンプキンは最初から俺を仕留めにかかるつもりはなく、戦闘をするにおいて不利になる女王を奪還する事を目的としていたのだ。




