第三十五話③
「貴様……何者だ?」
「私の名前はMr.パンプキン、この国の隣に位置するパンプキン通りの長を務めております」
遂に作戦の主役が登場だ。
今まで俺が悪行を行ってきた理由は、ここに繋がる。
今回の作戦はこうだ。
とある悪が国を危機に晒す、それを打ち破るのは通りの長、悪を倒したという恩を国にきせて、国民からの支持も得るといった作戦だ。
今回の作戦で痛い目を見るのは、悪を演じる俺である。
何せ皆からは非難され、さらにはパンプキンによって倒されるのだ。
踏んだり蹴ったりとは正にこの事、その為女王は引き目を感じていたのだ。
だが作戦としては悪くはない上に、それ以外の選択肢が見当たらないのであれば仕方がない。
それに、悪役を演じると言うのは悪い気分ではない。
自己犠牲などは、物語を彩るのに良いスパイスとなる。
そう言った展開は、昨今の作品では見られなくなってきたが、俺はそういった展開が中々に好きであった。
「パンプキンか……ふざけた名だな」
「ならば貴方のお名前をお教え下さい。案外、人の事を言えた口ではないかもしれませんよ」
「ほぉ……言うではないか小僧、ならば教えてやろう……。我が名は『ダーク・オブ・カオス』悪として、この世界を混沌へと導く者であるぞ」
即興にしてはよく出来た名前だ。気に入った、今後もこのキャラクターを使っていくとしよう。
「始めて聞く名前ですね……大それた宣言をしておりますが、本当に実力がお有りなのですか?」
「先程の我の力を見ていなかったのか? こんな力を使える者は、この世界でただ1人、我だけだ」
「珍しい魔法であると言うことが、イコールで強力とは言えませんよ。大衆に知れ渡っていないと言うことは、それ程までに利便性に欠けると言うことかもしれません」
「力を持たぬ弱者の戯言にしか聞こえんな。何か特別な物を持たぬ者は、他者の力を過小に評価したがるからな」
俺たちはじっと睨みを効かせる。
アドリブとはいえ、この場には本当に重苦しい空気が立ち込めていた。
どちらかが動いた瞬間戦いが始まる。だが、先に動いた方が不利に動くのは間違いないだろう。
この距離での戦いであれば先手よりも、それに対抗する後手の方が有利になる。
お互いはじっと動かぬまま少しばかりの時間が流れ、大粒の雨が地面に落ちたと同時に俺たちは行動を起こした。




