第三十五話②
「お前が国王か……女王とは違って、自分は安全な城の中に籠っているのだな」
「当たり前であろうが! 何故国で一番偉い我が前戦に立たねばならないのだ! 我が可笑しいのではない、可笑しいのはあの女王だ!」
国王は顔を赤一色に染めて怒りを露わにしている。女王と比較されたことにでも腹を立てたのだろうか。
余程仲が悪いことが伺えるな。
「可笑しいね……我が国民ならば、女王の姿は立派に映るはずだがな」
「そんな筈はない! 我は正しい行動をとっておるのだ、国のトップがくたばるわけにはいかないだろ!」
「ならばせめて、城の中からでも指揮をするなりしたらどうなのだ? 何もせずに兵士を怒鳴りつけて、やっている事は無能な上司といったところだぞ」
国王は顔を真っ赤にして怒りを見せたが、睨みんで見せたらすぐさま窓を閉めて城の中へと逃げ帰っていった。
国王だと言うのに、心は小物だな。
そろそろ国民に恐怖を与える事は出来ただろう。
俺と言う存在の偉大さに、恐れ慄き始めているに違いない。ならば、仕上げをするとしよう。
「女王であるお前は気合いがあるみたいだが、お仲間の兵士たちは腰抜けの弱者ばかりのようだな。見てみろ、誰1人として上を向いていない」
兵士は皆横倒れて、地面に転がっている。
「皆を馬鹿にするような言葉を吐かないでください。懸命に戦場へ足を運んだ英雄たちです」
「こんな状況でもまだ庇うのだな……ならば、こうすればどうだ?」
俺は女王を風魔法で浮かせながら、自分の体に近づける。
抵抗を見せているが、女王はそこから離れることが出来ない。
「お前が捕まったとしても誰1人としてお前を助ける事は出来ない。こんな非力な奴らをそれでも庇うのか」
風魔法によって呼吸が制限されている女王は、言葉を返すことすら出来ずに、苦しそうに足掻いている。
それを兵士たちは何とか助けだそうと立ち上がるが、ドラゴンによって直様また倒されてしまう。
「この国を滅ぼしたという記念に、こいつはいただいていくぞ。自分たちの魔力さを呪うのだな!」
そういって高笑いをして見せた俺の頬を、突如銃弾掠め通る。
作戦通りなので何が起こったのかはわかっているが、俺は何が起きたかわからないといった、間抜けな顔を浮かべながら銃弾が飛んできた位置に視線を向ける。
「そこまでです」
そこには拳銃を構えた、いつもの被り物を被ったパンプキンが俺と対峙するように立っていたのだ。




