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第三十五話①

「ほぉ……国の危機に自ら姿を現すとは立派なものだな、女王よ……」

「随分と偉そうですね。言葉を慎みなさい」


 全くもって見事な演技だ。

 女王の俺に対する視線は、本当に怒りや嫌悪を感じさせるほど鋭く、もしかしたら本当に怒らせてしまったのではないかと錯覚してしまう程の迫力だ。


「貴様のような威勢のいい者は嫌いではない。我と共に来る気はないか?」

「お断りします」

「そうか、ならば仕方がない。強者らしく、力尽くでいこうか」


 俺はそう言いながら両手に魔法を発動させて、ドラゴンに動くように命令を出した。

 鼓膜が破裂してしまいそうになるほどの雄叫びをドラゴンは上げながら、街へと降り立ち、たちまち暴れ始めた。


「臆する事はありません。我らが誇りを、力を、奴に見せつけてやるのです」


 女王の逞しい発言に、兵士は活気付いて皆は雄叫びを上げながらドラゴンの元へと走り始めた。

 弓矢などの飛び道具などを扱う者たちは皆俺の元へ攻撃を仕掛け始めるが、当然そんな攻撃は俺には通用しない。

 なんせ身の回りには強風が吹き荒れており、下から飛ばした弓矢程度では、俺の元へ届くことすら出来ないのだ。


 ドラゴンは依然として暴れ続け、兵士は何とか動きを止めようとするが、呆気なく倒されて地面に転がっている。


 俺はと言えば、既に弓矢などを放っていた舞台を風魔法によって壊滅させて、ただじっと辺りを観察していた。


 作戦としては、兵士たちを戦闘不能にするだけで、殺してはいけないと指示を受けている。

 その為これ以上の追撃は出来ないのだ。


 言われなくてもそこまでするつもりはないがな。


 ただドラゴンが面倒だ。

 思ったよりも暴れている為、度々俺が魔法でドラゴンの邪魔をして被害を抑えている。

 もう少し兵士に力があればここまでしなくて済むのだがなと、少しばかり兵士側を応援し始めていた。


「何をやってあるのだ馬鹿者ども! 我の美しい街が壊されているではないか!! 早く倒せ! この不届き者を、早く倒すのだ!!」


 すると窓を開けて、物凄い剣幕を見せながら国王は兵士に向かってそんな台詞を吐いた。

 前線にたって兵士を鼓舞する女王とは対照的に、国王の姿は何とも腹正しく、みっともない姿となっていた。

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