第三十四話③
「貴様の目的は何だ、どうしてこの街を混乱に落としいれるような真似をするのだ」
「まず訂正しておこう、何も狙っているのは、この街に限ったことではないと言う事をな」
「どう言う事だ……」
「我の目的は世界を終焉へと導く事、この街での惨劇は始まりに過ぎないのだ」
俺の発言に皆が動揺を見せる中、王国騎士長は愛も変わらず勇敢に言葉を返す。
「当然だが、止めさせてもらうぞ」
兵士たちはその王国騎士長の勇気に感銘を受けるかのように奮い立ち、剣を空に向けて突き立てる。
兵士の上げる声で雨音はかき消されて、今にも奴らの反撃が始まろうとしていた。
「どうするかはお前らの自由だ、好きにしろ。その代わり、この物語の結末が悲惨なことになったとしても、目を背ける事なく受け入れるのだ」
俺はそう言い放った後に、空に2つの空洞を出現させた。
この街を覆う程のその空洞からは、強風が吹き込んできており、下にいる兵士たちは立っているのがやっとな程になっていて、今にも飛んでいきそうになっている。
「こんな魔法に怯むな! 我らが力を見せつけてやれ!」
「まだ発動している最中だ、静かにしていてくれ」
その瞬間、空洞の中から大きな鉤爪が姿を現した。
それだけでも一軒家ほどはある大きさなのだが、そこから手足、そして顔を中から覗かしてきたのだ。
その顔はいわば爬虫類のような形相をしており、口からは炎を溢れ出している。
「……ド、ドラゴンだ」
とある兵士がその生き物の名前を言い当てた。
とはいえ、俺が召喚したのはあらゆる魔法を組み合わせて出来たオリジナルのモンスターだ。
勿論モチーフはドラゴンだが、色は黒く、吐く炎は青色にするなどして、よくRPGなどでみるドラゴンとは違った禍々しさを演出させている。
そのドラゴンもどきは大地を揺らすほどの大声を上げている。
兵士たちは恐ろしさからか、すっかりと意気消沈してしまい、今にも逃げ出してしまいそうになっている。
だがこれではまだ終わらない、何せ空洞は2つ用意してあるのだ。
もう1つからも、とっておきのモンスターを召喚してやろう。その用意意気込んでいると、城の中からとある人物が姿を現した。
「そこまでです。…これ以上、私の国を脅かす事は許しません」
するとここで、勇ましくも煌びやか衣装を見に纏った人物がこの戦場へと身を乗り出してきた。
誰しもがその人物の登場に驚きを隠さずにいて、城の中からも国王の動揺している様子が伺える。
それもその筈だろう、その場に現れたのはこの国を収める者の1人、女王様なのだから。




