第三十四話②(アカリ視点)
「皆さん避難して下さい! 強力な敵がこの国を攻めてきています、今すぐ避難を!!」
何で私がこんな事、しないといけないのよ……。
今回の作戦で、私は街を効率よく混乱させる為に、今現在暴れているマヤトの脅威について、知らせ回ることになっている。
皆にあいつは物凄く危険な存在なのだと言う事を知らせて、作戦を効率よく動かすのが目的だそうだ。
その為に私は今、アイツが魔法で雨を降らせている中、全身がびしょ濡れになりながらも、あらゆる場所を訪れている。
ものの数分で、下着まで水に浸したかのように濡れてしまっている。今すぐにでも着替えたい、と言うよりも帰りたいとさえ思っているが、そうもいかない。
民家が密集している箇所や、飲食店が立ち並ぶ場所など、兎に角人が集中して集まっているであろう場所を駆け巡る。
「おい嬢ちゃん……あの男がこの街を滅ぼそうとしているというのは本当かね」
「え? ……えぇ、事実よ。あいつはこの街を……いや、世界を滅ぼそうとしているわ。何せあんな魔法見た事がないでしょ? 奴はそれをやってのけるつもりなのよ」
遂に噂は街全体を駆け巡り、私が流していない噂まで流れ始めていた。
街を滅ぼそうとしているだなんて、そこまでの事を私は口にしていない。でも、好都合ね。
既に皆は自分たちの家や、施設に避難を開始して、まるで災害に備えるかのような行動をとっている。
1人1人が今後どうなってしまうのかといった不安に駆られているかのように、震えながら身を潜めている。
私はひとまず、ある程度話が広まった事を確認した為、皆が避難している大きな広場にやってきた。
そこには老若男女問わず人が集まっており、大きな広場だと言うのに既に鮨詰め状態となっていた。
「ちょっとどきなさいよ、服が汚れるじゃない!」
「僕のアクセサリーに触れないでくれるか!? いくらすると思っているんだ!」
こんな状況だというのに、この街の人々は相変わらず、人目につく豪華な衣装やら装飾品を身につけている。
危機感があるのかないのか、こうしてみるとわからなくなってくわね。
呆れてため息を漏らしながら、私は空を見つめた。
そこには空を飛んでいるマヤトの姿があり、しっかりと作戦を実行にうつしていることがわかった。
後のことは、マヤトとパンプキンさん、そして女王様が作戦の主軸となる。
私はこの場で皆を見守っていようと思う。作戦の成功を信じて。




