第三十三話①
「遅かったわね。暇だったわよ」
「知るったことか。出来る限り急いではきたんだ、文句を言うれる筋合いわない」
女王の部屋に戻ると、アカリは気だる気にクッキーを貪っていた。ここに戻ってくるまでに1時間も掛かっていないが、アカリから言わせればこれまでに待たされた時間もある為、大変待ち時間が長く感じたのだろう。
まぁ、知ったことではないがな。
アカリはパンプキンの姿を見て、少し驚いた顔を浮かべながら立ち上がった。
俺の体も軽く見ていたが、何もなっていない事を知って、見た事を無かった事にするかのように目を逸らした。
「パンプキンさんのその怪我……何かあったの?」
「それがだな……自分で話すか、パンプキン?」
「話すと言っても単純な事です。偵察部隊を食い止めていたのと、通りに侵入してきた兵士たちを捕らえていたのです」
「通りに兵士って……何をしにきてたのよ?」
「人質目当てだろうな」
アカリはそれを聞いた途端、目を鋭くさせながら、顔を曇らせた。
こう言ったことをアカリは露骨に嫌うところがある。今も相手に対して、とても不快感を覚えているのだろう。
「いよいよ救いようがなくなってきたわね……女王様に報告して、一刻も早く国王側を攻め立てましょう」
「何も国王と戦うと決まったわけではないのだがな。まぁ女王に話を通すのは賛成だ」
するとタイミングを合わせたかのように、この会話の最中にドアの手すりが動いた。
そしてドアがゆっくりと開いて、そこから女王様とメイドが訪れた。
女王様は頭を抑えて疲れた態度を見せていて、メイドはアカリを見るなり怯えた姿を見せている。
「その姿を見るに、交渉は失敗したみたいだな」
俺は話を聞いていた事は内緒にして、女王に話を振った。わざわざ聞いていたと言わなくても、どうせ女王から説明があると思ったからだ。
「えー……残念ながら」
「女王様、お疲れになられたでしょう、一度お座り下さい」
暗い表情を浮かべる女王に、メイドは椅子を差し出して座るように誘導する。
その際もアカリの存在に気を遣っているのか、なるべく近づかず、目も合わせないようにしている。
「別に怯えなくてもいいわよ、もう何もしないわ」
「……はい。でもごめんなさい……何だか怖くて」
俺はその発言を聞いて笑いそうになってしまう。
「確かにコイツは恐ろしい奴だからな」と口にしてしまいそうになったが、アカリが殺意の籠った眼差しを俺に向けてきていた為、それは断念した。




