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第3話 今世の私

 ある程度泣ききって、落ち着いた頃、改めて話を進めた。


「なぁ結衣、何があってこんな姿になったんだ。」


本やネットでそんな情報を見たことがない。いや、ラノベとかならあるとは思うが…。


「まだ私も前世の記憶を取り戻して1日しか経ってないから少し話が長くなるけど…。」


「大丈夫。ゆっくりでいいから教えてくれ。」


そう言いながら小さくなった結衣の手を握った。




 私は5年前、確かに死んだ。


交通事故で車に轢かれて、痛いと思いながら体が動かず、


私は死を覚悟した。


最後に思い浮かべたもの、いわば走馬灯で、


私の友人、親友。お父さん、お母さん。お姉ちゃん…。


そして怜生との思い出が無意識に蘇った。


物心ついた時から一緒にいる怜生とは人生のほとんどを一緒に過ごしたと言っても過言じゃない。


それに、これから子供が生まれて楽しく家族で過ごしたいと


思っていたのに…。ごめんね…私の子…。


後悔と悲しみに飲み込まれながら意識が遠のいていった。






「邪魔だ!さっさとお前の部屋いけよ。」


水を飲みに行っただけで怒鳴られ、涙を抑えながら部屋に行った。


部屋といっても押入れに私の荷物、布団が入ってるだけで、この家の私のスペースはここだけだ。


押入れの中で声を抑えて涙を流す。


いつまでこんな日々が続くのだろう。


辛いよ…もう嫌だよ…助けて…怜生…。


………ん? 怜生…?


誰? 怜生って…、知らない人…?


でも何故か想像つく。


それに、思い出さないといけない気がする。


 それから私は必死に考えた。


珍しくこの日は襖の奥の声や、物音に自然と気にならなくなり、集中出来た。


寝る暇も惜しんで必死に、必死に考える。


そして考えている内に分かった。…これは前世の記憶だと。


怜生は前世の私の夫で、前世の名は四海結衣。


前世は交通事故に巻き込まれて死んだ。


色んなことを思い出し、気がつけば今世の私の人格は薄くなっていた。


 今世の私は実に酷い。今の私の名は「椎名らびん」。


5歳で体は痩せ細っていて、傷が目立つ。


父親と母親はどっちも私に興味がなく、邪魔者扱いしてくる。


父は見た目はホストとかにいそうなチャラい見た目で、母を溺愛するが、私は怒鳴ったり殴ったりで扱いが酷い。


母もギャルっぽい見た目で私を19で産んだ。避妊しないから妊娠して仕方なく産んだのだろう。


当然母も邪魔者、いらない子扱いしてくるし、最悪だ。


 でも前世の記憶を思い出したおかげで、希望が見えてきた。


こんな親のところにいる必要はない。


怜生…怜生の元に行けばきっと幸せになれる!


 私は夜、毒親2人が寝ている間、こっそり襖から出て、タンスからへそくりを盗んだ。


仕方ないよね、ここから怜生の家は離れているし、今まで殴ってきた分の慰謝料として貰っとくね。


まぁ、中は1万円程度だからもっと貰わないと気が済まないんだけど。


 そして玄関に行き音を立てないようドアを開けて、外に飛び出した。


流石に5歳程度の子が夜を歩くのはまずい。


だから公園で身を潜めて夜を過ごした。


遠くにいるおじさんがいるのに恐怖を感じて、草むらに隠れたりもした。


 …気がつけば草むらで寝ていて、朝になっていた。


今から歩いても怪しまれないだろう。


待ってて怜生…!この姿でも愛してくれるよね?

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