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第83話 取材(前編)


「『月間LEタイプ』の星乃です。本日はお時間をいただきありがとうございます」


 ボク達にぺこりと頭を下げるのは、月間LEタイプのインタビュアーさんだ。一見すると、とても取材をする側の人間には見えない派手な恰好をしている。しかも小柄で可愛らしく少女のように見えた。


「星乃さんも探宮者(LE)さんだったんですね」


「ええ、趣味と実益を兼ねていまして……本業は雑誌編集者なのですけど」


 そうなんだ……まあ、確かに異界迷宮内でのインタビューや探宮リポートなんて探宮者でないと出来ないから当然と言えば当然か。


「ですので、同業者でもありますので……と言っても『奇跡の欠片』の皆様とは比べ物にもならないレベルですけど。とにかく気楽にお答えいただければと思っていますので、よろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 代表して朱音さんが答え、頭を下げたのでボク達もそれに倣った。


 現在、ボク達がいるのは、いつも活動しているハブ迷宮の通称『はじまりの間』にある取材用の特別ブースだ。『はじまりの間』はけっこう広く、ボク達が5月に受けた認定講習だけでなくイベント用の小ステージやパーテーションで区切られた簡易的な取材用スペース等が常設され、各種の催しに対応している場所となっているのだ。


「インタビューについては原則、事前に回答していただいた質問を中心にさせていただきますので、ご安心ください。ただ、(あらかじ)め言っておきますが、話の流れで思いもよらない質問が出ることもありますので、ご容赦願います」


 朱音さんに提出した質問シートか……何を書いたか、すっかり忘れてる。でも、蒼ちゃんと相互チェックして修正したから問題ない筈だ。蒼ちゃん的には、ボクが迂闊なことを書いて身バレしそうで不安だったので事前に確認したかったらしい。 

 けど、どちらかと言えばボクのカッコいい言い回しや高尚な回答をわかりやすい表現に直されただけの気もする。ちょっと腑に落ちないけど、今の多様性の社会ではお役所言葉等も優しい言葉に置きかえる時代だそうだから仕方ないのかもしれない。ふっ、才能が有り過ぎるのは罪だな。


 あ、そういや思い出した。設問に『尊敬する、もしくは気になる探宮者は誰ですか?』ってのがあり、蒼ちゃんは『残像のアイリス』こと『アイリス・ミルキーウェイ』(ストーカーお姉さんである彩芽さん)の名前を書いていたっけ。ホントに尊敬してるんだ……。

 え、 ボク? もちろん、推しのあの人だけど文句ある?


 そうそう、その彩芽さんと言えば、近々またこっちに来るらしい。何でも、お盆周辺は配信やイベントで大忙しのため、時期をずらし夏季休暇と称して来襲するつもりのようだ。その間、蒼ちゃんを占有されるので、ボクとしては迷惑この上ないのだけれど。


「それでは早速、インタビューを始めますね……」

 


◇◆◇◆◇◆


―5月末にデビューし、瞬く間に人気探宮者パーティーになられた『奇跡の欠片』の皆さんですが、そもそも探宮者になろうと思われたのは何故ですか? きっかけ等がありましたら、お話しください―


フレア:そうですね。あたしは身近に探宮者をしている者がいたんで、その影響かな。小さい頃から自然となりたいと思うようになってましたね。


リーフ:わたくしは、子どもの頃テレビの特集番組で見た異界迷宮という未知の世界や探宮者の自由さに憧れを抱いたのがきっかけでした。今もずっと憧れています。


ラピス:私もリーフちゃんの気持ち、よくわかります。ホント、憧れの世界ですよね。ただ、私の場合は恥ずかしい話ですが、経済的な理由もあって探宮者を目指しました。少しでも母の助けになりたくて……。


―とても立派な理由だと思います。残りのお二方は?―


クロウ:……そこに異界迷宮があったから。


シロ:登山家か、あんたはw


クロウ:そう言うシロは?


シロ:ボクは…………なりゆき?


クロウ:もっと駄目だろ。


シロ:嘘ですw ボクもフレアさんと同じで幼い頃から探宮者になりたいと強く思っていました。それに……。


―それに?―


シロ:ここでは詳しく言えませんが、譲れない理由といいますか、誓ったことがあるんでボクは異界迷宮の最奥を目指してるんです。


―それは熱い理由ですね。とても素敵だと思います。では次の質問ですが、パーティーメンバーの中で特に第一印象が強かったのは誰ですか? また、その理由もお聞かせください― 


フレア:やっぱりシロかな。いろんな面で彼女は目立ってたから。うん、とにかく凄かったんだ、他に言い様がない。


リーフ:フレアさんもですか。わたくしにとってもシロ様は衝撃的でした。それまではフレアさんとの出会いが一番だと思っていましたが、軽々とそれを越えていきましたから……。

 

ラピス:私もシロ君です。幼馴染なんで、ずっと憧れてました。今もその想いは変わっていません。


クロウ:皆に合わせるわけではないが、自分もシロだ。存在自体が、アメイジングと言っていい。


―シロさん以外のメンバーが全員シロさんと答えるとは思いませんでした。本当に凄いのでしょうね。当のシロさんはどうですか?―


シロ:何でみんなボクなの? 普通はフレアさんでしょ。それかラピスちゃん。ボクなんかミジンコみたいな存在なのに……。えと……ボクにとって印象が強かったのは、もちろんラピスちゃんです。さっきも言ってたけど幼馴染なんで他のメンバーより想いは深いと思います。


―なるほど。幼馴染の関係性って素晴らしいですね。では、次の質問に移りますが……―


(中略)


―それでは、ここからは個々のメンバーへの質問となります。恐らく読者も気になっている質問でしょう。さっそく、ラピスさんとシロさんへ質問です。先日の配信動画で『二人は付き合ってるの?』という視聴者さんからの質問に対し、シロさんは『付き合ってません』、ラピスさんは『今のところは』と答えていましたが、今後お付き合いする予定があるのでしょうか?―


シロ:そ、それ質問シートになかったよね。


―事前にお話した通り、話の流れからの質問ですね―


シロ:そ、それについてはボクに聞かれても……。


―ではラピスさん?―


ラピス:シロ君次第とだけお答えします。


―シロさん、ラピスさんはこう言ってますが?―


シロ:の、のーこめんとで……。


フレア:なあ、リーフ。二人が付き合うって、どういうことだ?


リーフ:フレアさんは詳しくわからなくて大丈夫です。簡単に言うと、二人はとっても仲良しってことですね。

 

フレア:なんだ。それじゃ、あたしもみんなと付き合ってるぞ。


クロウ:フレアは黙っておこうな。


フレア:?


リーフ:ラピスさん、シロ様。わたくしは、いつまでもお二人を応援しておりますので、ご安心ください。


シロ:何を安心しろと……。


(中略) 


―なるほど。『奇跡の欠片』の今後の方針がよくわかりました。これからもぜひ頑張ってください―


フレア:ありがとうございます。


―さて、今のが最後の質問となりました。長い時間、たくさんの質問に答えていただき本当にありがとうございました……そして最後の最後なのですが―


◇◆◇


「最後の最後なのですが……サプライズでスペシャルゲストをお招きしております。その方を交えて歓談していただき、インタビューを終了したいと思います」


 な、何だって……やっと終わると思ったのに。


「スペシャルゲストはある方の質問シートから選ばせていただきましたので、ご期待ください」


 ただでさえ、恥ずかしい質問でメンタルよわよわなのにスペシャルゲストに耐えられるか不安だ。いったい、誰だろう?


「それではゲストの方、ご登場願います」


「え?」


 取材ブースに入ってきた人物を見た二人は同時に声を上げた。

第83話をお読みいただきありがとうございました。

前編・後編となりましたw

どうも夏バテか熱中症気味です(>_<)

次回も無理せず頑張ります!

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― 新着の感想 ―
誰だ? ワンチャン蘇芳さん?
ややっ、誰が来たんだろう???
>>けど、どちらかと言えばボクのカッコいい言い回しや高尚な回答をわかりやすい表現に直されただけの気もする。 果たしてどんな回答をする気だったのか…。 今回登場の記者、わざわざ名前が出る辺り、意味の…
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