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第44話 レッドドラゴン

申し訳ありません。一部修正しました。

レッドドレゴンのレベルを下記に変更。

✕ 80

〇 70


「っ……」


 ぞわりとした悪寒がしたボクは無意識に横に飛んで床を転がった。その刹那、今までボクが占めていた空間をドラゴンの鋭い爪が切り裂く。

 まさに間一髪だ。けど、運よく初撃を凌いだに過ぎない。絶望的な状況に変わりなかった。


「ど、どうする……?」


 どうするも何もない。レベル4のボクじゃ、レベル70(推定)のレッドドラゴンなんて相手に出来るわけがない。戦うことはおろか逃げ切ることだって不可能に近い。


 けど……やるしかない。

 

 転がりながら身体を起こしたボクは頭を切り替える。

 ここで諦めたら魔結晶になって遭難してしまう未来が、ほぼ決定だ。誰かに助けてもらうまで一生そのまま埋もれてしまうに違いない。でも今のボクなら、ほんの少しの時間さえ稼げれば、『魔王の憩所(いこいじょ)』に逃げ込むという最終手段が取れる。配信で『魔王の憩所(いこいじょ)』のことがバレてしまうが、この際仕方がない。生き残ることが最優先だ。


「おっと……」


 転がって距離を取れたと思ったら、ドラゴンは身体を捻って尻尾で攻撃してきた。その、尻尾の薙ぎ払いを真上に跳躍して躱す。


 あれ、レベルアップしたせいか今までより身体が軽い? 動きもスムーズで無駄が無い。レベル差を考えれば、到底かわせない筈のドラゴンの攻撃を紙一重で避け続けている。

 いやいや、一つレベルが上がっただけで、こんな風になれる訳がない。何かがおかしいと感じたが、今はそれどころではなかった。


「とにかく逃げ切らなきゃ」


 手持ちの武器はショートソード一本のみ。魔法の剣なのでドラゴンの鱗を傷つけることぐらいは出来そうだが、倒すという大それた結果は望める訳もない。 

 そもそも近づいただけで、その圧倒的な質量で押し潰されてしまうだろう。


「明らかに変だ……けど、これなら……」


 偶然で片付けるのは、もはや不可能なぐらいのレベルでドラゴンの攻撃を回避している。もちろん、少しでも掠れば一巻の終わりであることは明白なのだけど、現状は何とか凌げていた。

 ただ、ドラゴンの近接攻撃の間合いからどうしても離れられないのと、爪や尻尾、噛みつきなど手数の多い攻撃のせいで、『魔王の憩所(いこいじょ)』に逃げ込むタイミングが掴めない。


 どうする……長引けばジリ貧になる。どう考えてもスタミナはあっちの方がある。


 そう悩んでいるとドラゴンの挙動がおかしい。何か首をすぼめて力んでいるような…………あ、ヤバイ、ブレス攻撃だ。


 次の瞬間、溜めたものを解放するようにレッドドラゴンは口から炎を吐いた。 


 ボクは再び跳躍して躱そうとするが、さすがに高さが足りない。このままでは炎で消し炭になってしまう。


 せめて、どこかに足場でもあれば…………。


 そう考えたボクの目の前に目に見えない足場が出現したような感じがした。


 何を馬鹿なと頭では思ったが、身体は無意識に動いて、その足場を使って更に跳躍する。何も無い空間の筈なのに、確かに固い何かを踏んだ感覚があった。


 二度目の跳躍で円錐状の(ドラゴンブレス)を何とかぎりぎりで躱したボクは、そのままの勢いで跳び上がり続け、気が付けば神殿の天井付近にいた。眼下には竜の頭が見える。

 想定外の二段階ジャンプをしたせいなのか、どうやらレッドドラゴンはボクの姿を見失っているみたいで首を左右に動かしボクの行方を探していた。


 チャンスだ!


 ボクは風を切りながら下降すると、ドラゴンの頭めがけてショートソードを振り下ろす。そして目論もくろみ通り、ドラゴンの左目に剣を突き立てた。


「グガァァ――!」


 突然、激痛と左の視力を失い、レッドドラゴンは咆哮しながら頭を振って神殿内を暴れまわる。


 ボクは、その暴走に巻き込まれないようドラゴンの頭から飛び降りると、新たに出現した見えない足場を使ってドラゴンから遠く離れる。


「プライベート・コール!」


 地面に着地したボクはそう叫んで配信を止めると、次に「サモン・ルーム」を唱え、『魔王の憩所(いこいじょ)』を出現させる。


 そして、そのままの勢いで玄関を開け、部屋の中に逃げ込んだ。



◇◆◇



 まさに間一髪だった。逃げ切れたのは、まさに奇跡と言ってよかった。


「はぁはぁ……死ぬかと思った」


 リビングの床に突っ伏したボクは大きな呼吸を繰り返しながら息を整える。


 今までの人生でおそらく一番集中し、最大限身体を酷使した気がした。まあ、そうでなければ、今頃ここにはいられなかっただろう。


【主様、お帰りなさいませ。お疲れのご様子ですが、大丈夫でございますか?】


「ありがと、ユニ君。もう、大丈夫だよ。でも、お水くれる?」


 気が付けば、喉がカラカラだ。


【かしこまりました…………こちら、飲料水でございます】


 机の上に出現した水の入ったコップを手に取ると一気に飲み干した。


「ぷはぁ――生き返る」


 水を飲んで人心地のついたボクはソファーにぐったりと横たわる。


「それにしても……」


 だらりと身体を休めながら、ぼんやりと先ほどの一件を思い返す。


 まるで、夢であったかのように現実感がない。初心者のボクがはるか格上のドラゴンと渡り合うなんて……。


「そうだ!」


 レベルアップの結果を確認しておかなくちゃ。たぶん、今回の一連の幸運に何らかの関与があったのは間違いないだろう。

 

「ステータス・オープン!」


 ステータス画面を開いて中身を確認する。


「えと……HP480、SP480、MP540。5づつしか上がってないのか……能力値は微々たる成長だな。スキルは、と…………なんじゃこりゃ!」


 能力値には大した変化は無かったけど、スキルが問題だった。


 まず、問題ない方から説明しよう。


【『空間魔法』レベル2 空間操作(スペースコントロール):使用者は見えない空間を作り出し、敵にぶつけたり移動阻害させたりできる。盾や囲い込み、足場も可能】 


 これが見えない足場の正体か。今回、逃げ切れたのはこのスキルのおかげと言ってもいいぐらいだ。もし、空間スキルがレベルアップしていなかったらと思うとゾッとした。なかなか使い勝手の良さそうな魔法なので、今後も使い方について研究していこうと思う。


 そして、問題なのはこっちだ。


【魔王の矜持(L4から常時発動):自分より高いレベルの者がいる場合、戦闘が終了するまで一番レベルの高い者の一つ上のレベルとなる。ただし、勇者がいる場合は必ず勇者のレベルと同じになる】


 かなりのぶっ壊れスキルだ。

 無茶苦茶だ、一番高い者のレベルの一つ上になるなんて……。


 つまり、さっきレッドドラゴンと戦った時点で、ボクのレベルは便宜上レベル71(推定)に達していたことになる。それなら、あの動きも納得できた。まさにチートスキルと言っていい。


 もっとも一対一(タイマン)なら最強だが、複数相手だと、それほどチートとは言えない気もした。例えばレベル30の敵が5体相手でボクがレベル31になったとしても、数で押し切られて勝ち目はないように思える。


 さらにテキストには不穏な文言もある。


【ただし、勇者がいる場合は必ず勇者のレベルと同じになる】


 それじゃ、レベル1の勇者がその場にいたら、たとえレベル100の魔王であってもレベル1になるってこと?

 まさにファンタジー漫画の王道のようなスキルだ。


 って言うか……もしかして『勇者』も、この世界のどこかにいるのだろうか?


第44話をお読みいただきありがとうございました。

新たなスキルが覚醒しました。

ますます人外になっていきますw

大丈夫なのか、つくも君(>_<)

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― 新着の感想 ―
配信の方は大変なことになってそう
まだドラゴン討伐まではできないか。残念。
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