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第36話 固有スキルとパーティー結成


「え?……えと、この子は……」


「あ、あの……『キャナリー・ライム』です、初めまして。『シロ』さんが一人で心細そうにしてたんで話しかけただけで……」


 何ですと? 話しかけてきたのは、ぼっちのボクを見かねての行動だったの?そんなにボクって所在無げに見えたのだろうか。


「そうなんだ、それはありがとう。『シロ』は人見知りだからね、君が一緒にいてくれて心強かったと思う。助かったよ」


「い、いえ。れも……私も暇だったので……」


 ニコリと微笑むフレア(蘇芳さん)キャナリー(檸檬ちゃん)は頬を染め、ぼーっとした表情で答える。


 やっぱり、フレア(蘇芳さん)のイケメンぶりは凄い。初見の檸檬ちゃんがメロメロだ。男だったら、ホストになってお店でNo1が取れるに違いない。


「とにかく、これでシロとも合流できたから、さっそく探宮部の打合せを始めたいんだが……そのキャナリーさん、悪いんだけど……」


「え、ああ……そうですね。シロも部活所属って言ってましたし……じゃあ、部外者はお邪魔ですので退散しますね」


「いや、決して君のこと邪魔になんか思ってないが……そうしてもらえると嬉しいかな」


「……っ」


 フレアが自覚なしに熱っぽい視線で囁くと、キャナリーさんこと檸檬ちゃんはぽっと火が出るように赤くなった。


 す、蘇芳さん恐ろしい娘。いったい何人の女の子のハートを鷲掴みにするのだろう。


 真っ赤になったキャナリーさんはボク達に一礼すると、熱に浮かされたようにフラフラしながらホールの中心へと戻って行った。


「さて、我々だけになったので、今後の探宮部について確認しようか」


 キャナリーさんを見送るとフレアこと蘇芳さんがボク達部員に向き直った。


「すぐに講習が始まるから時間が無いので手短に言おう。どうやら皆のクラスが全員被らずにすんだので、このメンバーでパーティーを組もうと思うが異論は無いな?」


 一同を見渡すとクロウこと紫黒さんが手を上げる。


「何かあるのか、玄さん」


「いや、自分は問題ないが、念のため全員に参加の意思を確認した方が良くないか?」


 その言葉に部員それぞれがチラリとボクの方を盗み見したのがわかる。

 

 まあ、それも仕方ないだろう。『商人』は一般人のカテゴリーと言えたし、一線級で活躍する探宮者など皆無なのだ。このパーティーのクラスのレア度から考えると格差がありすぎる。なので、パーティー勧誘に二の足を踏むのは普通のことと言えた。


 もちろん、蒼ちゃんはボクと異界迷宮を探宮するのが目的なので、ボクが参加しないのなら自分も参加しないという意思を目で訴えていた。

 ただ、蘇芳さんも初めからボクをパーティーに迎えるつもりだったようで、参加の意思を確認するつもりも無かったみたいだ。いったい、どういう意図でそうしたのだろうか?


 それにしても、やはり『商人』にしたのは早計だったかもしれない。『魔王』というクラスで目立ちたくなかったのに、『商人』も周囲の反応を見ると返って悪目立ちしている気もする。もう少し平均的なクラスにすれば良かった。


 けど、前にも書いた通り、『魔王』は前衛に向いた戦闘スキルが無いので戦闘職にするには無理があるし、魔法もバグのせいで使えなくなっているから魔法職も難しい。それにボクの持っている空間魔法や魔王の邪眼(鑑定)のスキルを誤魔化せるのは商人の『アイテムボックス』や『簡易鑑定』がちょうど良かったから、『商人』系を選択するのは当然の帰結だったと言ってもいい。


 そしてボクには、この件について秘策もあったので、こう宣言する。


「みんなが構わないなら、もちろんボクもこのパーティーに参加したいです」


 ボクのその言葉にそれぞれが違った反応を示す。


 蒼ちゃんはご満悦な表情で蘇芳さんは納得顔、常磐さんは心配げにボクを見つめ、紫黒さんだけが懐疑的な表情を見せていた。


「本当に良いのか、あとで苦労するのは目に見えているのだが……」


「紫黒さん、お気遣いありがとうございます。でも、大丈夫です。ボクには……」


 切り札を出す。


「固有スキル『レストルーム』がありますから」




 固有スキルとは――。


 誰でも持てる一般スキルと違い、そのクラスだけが持てるクラス特有のスキルのことだ。ボクの持っている『魔王の……』シリーズが、さしずめ魔王クラスの固有スキルと言っていいだろう。

 また、基本的に固有スキルは一般スキルより優秀で、しかもそのクラスに特化したスキルなため、探宮者の強さを底上げすることになるのだ。だが、中には変わり種や別次元の強さのスキルも存在している。


 そう……各クラスの固有スキルにもクラスのレア度と同様、優劣があるのだ。なので、同じクラスであってもスキルによって、その強さが大きく異なることになる。超レアのスキルはクラスのレア度を変えるほどの効果があると言っても差し支えない。


 つまり、同じ戦士クラスであっても固有スキルの違いで、誰一人として同じ戦士が存在しないと言えるのだ。

 この個性の存在が探宮者の人気を高めている一つの要因でもある。自分が唯一無二の存在と信じられたし、仮にクラスのレア度が低くてもスキルの組み合わせで、その差を埋めることが出来ると考えられているからだ。


 もちろん、実際はそんな凄い固有スキルなど滅多に無く、多少の差がある程度の固有スキルが数多あまたに存在するだけなのだけど。

 それに高位クラスの者がレアスキルを持っていたら、その差は埋まらない訳で、結局のところ固有スキルガチャもクラスガチャと同様に運による割合が高いと言えた。


「固有スキル『レストルーム』?」


 蘇芳さんが怪訝そうな顔になる。


「聞いたことのないスキルだな」


 奇遇だね、ボクも聞いたことない。

 何故なら、これは『魔王の風采』スキルで、ボクがでっち上げたダミースキルなのだから。


「超レアな固有スキルみたい。スキル説明のテキストを見る限り、かなり役に立つスキルのようだよ」


 そう、『レストルーム』とは魔王専用アイテム『魔王の憩所(いこいじょ)』をスキルと詐称して使用する方便なのだ。

 『魔王の憩所(いこいじょ)』の便利さはこのボクが身に染みてわかっている。これ無しでの探宮など考えられないほど依存していると言っていい。考えてみて欲しい、炎天下の夏にクーラー無しの教室で授業を受けられるか、いやとうてい受けられまい。そのくらいの切実さなのだ。

 これを使いたいがために『商人』を選んだと言っても過言ではない。他人から指差されようが、この選択を後悔することは決して無いだろう。

 

 ボクが『レストルーム』の効果を熱意を込めて説明すると、探宮部のみんなも半信半疑ながら認めてくれた。実際にまだ使用していないのだから、その良さや便利さを理解することは不可能だろう。けど、さすがに講習中に具現化する訳にはいかないので、言葉だけで信じてもらうほか無かった。まあ、実際に探宮した際に否が応でもその素晴らしさに病みつきになるに違いないけど。


「たとえ、足を引っ張ることになっても、このスキルさえあれば、ボクはこのパーティーに貢献できると思う。なので、ぜひこのパーティーに加えて欲しい」


 ボクがそう締めくくると、蘇芳さんは大きく頷き一同を見渡して言った。


「つくももこう言っている。参加に異議が無いようなら、このメンバーでパーティーを組むで問題ないな」


 全員が異議なしと答えたとき、講習の開始を告げる係官の声が聞こえた。

第36話をお読みいただきありがとうございました。

ようやくパーティー結成です。

前衛 聖騎士、守護者

遊撃 暗殺者

後衛 魔導士、商人(笑)

はたして、どうなりますやら……w

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[一言] 商人だって戦えるし( ˘ω˘ )
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