第102話 新たな始まり
「そう、私と君とシロ君でパーティーを組んでS級迷宮を目指そうじゃないか……」
オリエさんが確信の笑みを浮かべて四天王ノルテさんを勧誘する。
「なるほど……確かに魅力的な提案ではある」
ノルテさんはボクの方をチラリと見てから言葉を返す。
「……けれど残念だが、謹んでお断りしよう」
オリエさんは「え?」という顔をして慌てて聞き直す。あてが外れて意外だったようだ。
「どうして? 君にとっても悪い話じゃなかったと思うのじゃが」
「ああ、先ほど申したように大変魅力的な提案だと思う」
「だったら、何故?」
納得できないのかオリエさんは理由を問う。
「簡単な話だ。私が貴女を1ミリも信用していないからだ。信頼がおけない人間とはパーティーなど組めん」
至極、真っ当な理由だ。なんなら、ボクもまだ完全には信用していない。
「それに貴女は私を騙してこの場へ誘き出した。そうするしか私と交渉できなかったことは理解している。だから、欺いたことには目を瞑ろう。しかし、その方法として私の敬愛する魔王様を騙ったのは許しがたい」
「そ、それはシロ君のために行ったことじゃ。彼女も納得し感謝している……そうじゃなシロ君」
「え、はい。それは本当です。身バレが防げて助かりました」
助かったのは事実なので、ボクが肯定するとオリエさんは勢いづく。
「君の敬愛する魔王様もそう言っているじゃろ。魔王を騙ったのではなく魔王のピンチを救うための行動じゃ、不当行為ではないであろう」
「……魔王様の御言葉いたみいります。ふむ、そこは大目に見よう。だが、それとは別に貴女が私や魔王様に対し明確に嘘を言ったことは許される行為ではない。それについて、どう言い逃れをする?」
「う、嘘など言っていないが?」
「だがな、貴女は先ほど一部の人間しか知らない事実という前提で、『UR以上のクラスの者に、高確率で前世の記憶みたいなものが生じる』と話された」
「うむ、言ったな」
「貴女の立場なら知り得る情報であり、私や魔王様が知らないのは当然という体で平然と嘘を吐いたのは事実だ。それも私でなく魔王様に対しても……だ」
え? 前世の記憶の件って嘘なの?
「嘘ではないぞ。事実、君にはその記憶があるのじゃろ」
「ああ、だがそれは異界迷宮によるものではない。こちらに転生してきた時から持っていた記憶だ」
なぬ、元々が転生者だったと……?
「そもそもUR以上のクラスに記憶が生じるとしたことに無理があるのだ。蘇芳秋良が『剣聖』の前世の記憶を持っていたなどと聞いたことがない」
うん、確かにそれは聞いたことが無い。蘇芳秋良オタクとしては、そうした逸話や言動があれば絶対に見つけ出すし、あの性格的にそういう秘密を平然と隠し続けるのは無理だと思う。
「こ、高確率であって、100%ではないからの」
「では、貴女はどうなのだ。魔法少女の前世の記憶を持っているとでも?」
「……持ってはおらん」
持っていないんか―い……まあ、全員が記憶持ちとは言っていないから。
「なるほど、貴女も前世の記憶など持っていないと……ちなみに日本のURクラスは何人いたか?」
「6人じゃ……」
「私を入れて7人のうち3人も記憶なしか。サンプルは少ないが、確かに高確率……だな?」
し、辛辣……だけど、同意だ。全く高確率じゃない。
「国際的にはと、逃げても無駄だぞ。私は海外の探宮者の情報にも精通しているからな。海外でも前世の記憶の話題などもちろん皆無だ。さらに『国際迷宮機関』のデータベースに違法アクセスしたことがあるが、そのような情報はどこにも無かった」
「く、詳しいのじゃな……」
いやいや、犯罪行為は普通にダメでしょ。
「当たり前だろう。自分が前世の記憶持ちなのだ。同様な事例があるか調べたくなるのは必然だ。だからこそ、貴女の嘘に気付けた……だが、それはさしたる問題ではない」
ノルテさんは視線をボクに移して言った。
「この嘘が私を引っかけるものであるなら容認した。だが、貴女は私を出しにして魔王様をパーティーに引き摺り込もうと画策したのだ……許しがたい暴挙と言えよう」
え? これってボクとパーティー組むための算段だったの?
「何故、パーティー結成にそこまで執着する? 魔王様の記憶回復のため……いや早急なレベルアップにこそ、何か意味があるのか?」
「…………残念だが、今この場でその理由を詳らかには出来ない相談じゃな」
先ほどまでの動揺が鳴りを潜め、冷静な表情でオリエさんは答えた。開き直りとも違う妙な圧力を感じる雰囲気だった。
「取り繕わずに言うのなら四天王など、どうでもいいのじゃ。シロ君に早くレベルアップしてもらいたいというのが本音じゃな。今の奇跡の欠片が悪い選択とは言わないが、歩みが遅すぎるのが問題なんじゃ」
理由は定かでは無いけど、オリエさんは一刻も早くボクに高レベルになって欲しいようだ。
「で、どうするね。パーティーを組んでS級迷宮を目指してくれるかい?」
「私も魔王様がそれを望むのなら、当然パーティーを組もう」
ノルテさんも前言を翻して、ボクが望むならパーティーに参加すると言う。でもボクの答えは決まっていた。
「あの……前にも言ったけど、お断りします。ボクは蒼ちゃんとずっとパーティーを組むって決めてるから……」
◇◆◇◆◇◆
「撫子、大丈夫?」
「ん? 大丈夫だよ、菫。ちょっとぼーっとしただけ」
初めての異界迷宮体験だったが、『滅紫 菫』は同級生で妹のように可愛がっている『海棠 撫子』の最近の様子が気になって仕方なかった。
病気で一週間ほど入院していた撫子は、退院してから以前と全く変わってしまったのだ。どうやら突然、厨二病を発症したらしく前世がどうのと言い始めて菫を困惑させた。
(けど、撫子は今まで通り、わたしが護ってあげなきゃ……)
「我儘言って、ごめんね。異界迷宮に行ってみたいだなんて……」
「いいよ、撫子。わたしも異界迷宮に興味あったから」
嘘だ、全く興味なかったけど、撫子の望みなら当然叶えてあげたい。
「けど、菫。ここでは本名禁止だよ」
「あ、そうだった。え~と、『グリドラン』ちゃん……何か変な名前?」
「そう? オレはカッコいいと思うけど……それより、君の『イリス』って探宮者名、素敵だよ」
「もう……撫子ったら。けど、その『オレ』って言うの止めた方がいいよ」
「だって、言いやすいだもん。それよりクラスを見てみようよ」
「そうだね。う~ん……と、え? わたしSSRの『姫騎士』だったよ。凄くない?」
「へえ、凄いじゃん。オレは…………」
「どうしたの?」
「…………オレのクラス、LRの『勇者』だ」
第102話をお読みいただきありがとうございました。
少し遅れて申し訳ありません。
今回は正直間に合わないと思ってました。
ハードディスクが壊れてしまい、絶望してました(>_<)
巡回冗長検査エラーが出て、全く読み込めなくなってしまったのです。
おかげで、更新分と設定資料が飛んでしまい、再作成中です。
なので、推敲が出来ていないので、誤字脱字があったらご報告願います。
う~ん、今年もついてないみたいです⤵




