エロい女は実在する!
コミカライズの練習用に作った話なのですが、もったいないので一応投稿してみました。
後書きにそのコミカライズを載せています。
生物が遺伝子を残す為には、当然ながら生殖行為をしなくてはならない。だから、当然、繁殖の為の欲求、つまりは性欲がある訳で、女にだって性欲があるのも至極自然な話だ。そして、多くの男どもが妄想しているような、性欲の強い女だって中にはいる。
そして、実はうちのクラスにも性欲の強い女が一人いる。……ただ、
――教室。休み時間。
わたしの席から、篠崎さんがモジモジしているのが見えた。わたしは思う。
“篠崎さん、トイレに行きたいのかな?”
しかし、そんな彼女に対し、明るく大きな声では話しかける女がいた。
「あー、篠崎さん、もしかして、オナ〇ーを我慢しているの?!」
……ただ、その性欲の強い女は、男どもが妄想しているような女ではないかもしれない。
わたしは彼女にツッコミを入れた。
「そんなはずないでしょう! 馬鹿か! あんたは! 篠崎さん、困っているじゃないの!」
――輪千智。
かなりのオープンスケベな女である。
輪千は、見た目は背が小さくてどちらかと言えば幼いのに、周囲を気にせずエロい発言をしまくるのである。そのギャップに、男どもは喜ぶどころか引いている。
……一通り輪千を叱った後、わたしはなんとなく篠崎さんに謝った。
「ごめんねー。あいつ、昔っからおかしくてさー」
篠崎さんは大人しい性格で、学園での清純派美人という立ち位置を確立している。「あははは」と困ったように笑いながら彼女は返す。
「ちょっとびっくりしたけど大丈夫よ」
それにため息をつきながら、私は「腐れ縁なんだけどさー、昔っからエロいのよね」と愚痴で返す。
すると思い付いたような顔をした後で篠崎さんは言った。
「でも、良かったわよね。この辺り、ちょっと前まで変質者が出たでしょう? 輪千さん、危なかったのじゃない?」
それを聞いてわたしはまたため息を漏らす。
「それ、実は輪千の所為なのよ。あいつが変質者を追い払ったの」
“お陰”とは言いたくない。
「ねーねー、おじさん。これって大きい方? 小さな方?」
空き地。しゃがみ込んで輪千がそう言っている。目の前には、トレンチコートを羽織った裸のおじさんが。
おじさんは困った声を上げる。
「さぁ、どうかな? 他の人と比べた事なんかないからね」
「へー でも、お父さんよりは小さいから小さいかもよ」
「そうなんだ。でも、君のお父さんが特に大きいのかもしれないしさ」
そのおじさんは下半身をさらしていた。それを輪千は凝視していたのである。
「ちょっと、つついてみるね! えい!えい!」
「あっ 痛い! ちょっと止めて……」
「……変質者を可哀想だと思ったのは生まれて初めてよ」
と、わたしは言った。
つまり、輪千を嫌がってその変質者はこの近辺に現れなくなったのである。
それを聞いて、篠崎さんは困ったような顔を見せていた。いや、本当に困っていたのかもしれない。
次の休み時間。
わたしは篠崎さんと休日の予定について話していた。
「へー、篠崎さん、水族館行くんだ。いいなぁ」
わたしがそう言うと、篠崎さんは「えへへ」とはにかむように笑ってから「楽しみなんだ~」と続ける。
少し意外だったのだけど、彼女は魚の類が好きらしい。……と言うよりも、生物全般が好きなのかもしれない。
「何を見るの?」
「ペンギンは絶対! あと、楽しみなのはチンアナゴかな?」
チン?
それを聞いてわたしはちょっと悪い予感を覚えた。振り返る。
……輪千が近くの席にいるのだ。そして、案の定、輪千のセンサーは反応しているようだった。
“こっちをみてやがる”
輪千は嬉しそうな表情を浮かべている。
「ほら、見て、可愛いでしょう?」
篠崎さんがスマートフォンでチンアナゴの映像を見せて来た。小さく細長い魚が、海底の砂穴から身体を出し入れしている。
「この動きは!」
と、そこで声が聞こえた。見ると、いつの間にか輪千が傍に寄って来ていた。
「やるねぇ、篠崎さん!」
そう言いながら、輪千はバシンッバシンッと篠崎さんの背中を叩いている。「やかましい。黙れ」と、わたしは言った。
「そうそう。チンアナゴって食べられるらしいのよ」
それから篠崎さんはそんな事を言う。
「え? 食べたいの?」とわたし。
アハハハといった感じで、それを聞いて手で違う違うと彼女は示す。
「“アナゴ”って聞いて、もしかしたらって調べてみたのよ。でも、敢えて食べるような魚でもないらしいわ」
「まぁ、そうでしょうねぇ」
と、わたしは返す。予想できた話である。そのタイミングでまた声が。
「チンで細長くてあの動き。口に含んでみたくなるのは道理!」
輪千である。
「まぁ、そうでしょうねぇ」
と、わたしは返す。予想できた話である。こいつならば。
また休み時間。
篠崎さんがモジモジしている。
どうやらまたトイレを我慢しているようだ。そこで声が聞こえた。
「篠崎さん! また、〇ナニーを我慢しているの?」
思わずちょっとコケてしまった。
「だから、そんな訳ないでしょーが!」とわたしは輪千を叱る。さっき叱ったばかりなのに。
「でもー。チンアナゴを見て興奮したのかも」
「そんなの、お前だけだ!」
……だけど、彼女は気が付いていなかった。少し離れた自分の席で、顔を少し赤くした篠崎さんが、小さく「なんで分かったんだろ?」と呟いた事を。
エロい女は実在する!