採取と戦闘そして魔石
アトリアに連れられて山道を下ること十数分。
森の入り口にやって来た。
意外とこの村高所にあるんよね。
「この森で私は薬草やキノコを採取してるから、その手伝いをお願いするわ。」
『具体的には何をすれば?』
「そうね…。獣としての鼻の良さなんかを活かして、場所の当たりをつけてくれないかしら? それと、何か近づく者が来ないか警戒をお願いするわ。」
『はーい。』
そして、辺りを嗅いで臭いを嗅いで回ること少し、木の影からいい匂いがするのを感じとると、その場所に近づいてアトリアを振り返った。
「いい感じね、この調子で頼むわね。 …これは、食べられるけど、薬向きではないキノコね。」
しばらくこんな調子で進むかと思いきや、アトリアに制止された。
「止まって。霧が深くなってきたからそれ以上先は行かないほうが良いわ。」
『なんか在るん?』
「いいえ、でも色々出るわよ。あまり霧が濃いところは進まないにこしたことはないわ。」
なんか色々出るらしい。幽霊とかかな?
そんなこんなで、霧が深くなるところは避けて、雪の森の中で探索を続けた。
アトリアは時折、普段から使っているらしい薬草の群生地に立ち寄って薬草を詰んできていた。
そして体感時間で2時間ほど採取を続けた後、帰ろうということになった。
「それにしても、なんで食べられるキノコばっかり見つけるのがうまいのよ? 見た感じ肉食っぽいのに。」
『比較的マシなニオイの元を辿ったらこうなったんよー。』
「わかったわ、帰り道では試しに嫌な臭いの元も教えてくれる?」
そして、帰り道で嫌な臭いの出どころを探って探索をしてみると、何かいた。
「あれは、魔物の類ね。あなたと同類ではないみたい。」
『判るの!? っていうか魔物っているの!?』
「魔力の流れが良くないの。 こちらから仕掛けるわ、アナタもついてきて!」
『えー!?』
こうして、魔物と見られるものに先制攻撃を仕掛ける流れになった。
ちなみに魔物の姿はでかいリスみたいな何かでした。
アトリアは駆け出しながら腰に付けていた石で出来た剣を、剣に付いた紐で振り回して突撃した。
ボクはそれに続くこと数歩遅れて付き従う。
「ラビ、あなた爪も牙も在るでしょ、戦ってみせなさい。」
『作戦:おまえにまかせた、かー。』
そう念じつつ、リスに飛びかかって組み伏せに掛かる。
元は人間だった気がするだけにいきなり噛み付くのは気が引けるんだよね。
が、リスが思った以上にタフでパワフルな所を見せて逆に組み敷かれそうになった。
そのまま、転がりながら格闘を続け、タイミングを見計らってその場を飛び退くと、
アトリアの石剣がリスの脳天を直撃した。
「上出来、及第点よ。」
『うわー、痛そー。』
そして、アトリアはそのまま石剣を紐で引き戻して左足を軸に1回転すると、勢いを付けて石剣をリスに叩きつけた。
使い方のせいもあるだろうが、石剣は切れ味が悪そうに見えた。
それでも、勢いを付けた攻撃はふらついていたリスの胴体に突き刺さると、そのまま向こう側に切っ先を貫通させた。
リスの傷口からどす黒い瘴気のようなものが立ち昇ると、そのまま動かなくなった。
「解体するわ、中身を取り出して。」
『やだー。リス臭いんじゃー。』
と言いながらも動かなくなったリスの体の中に前足を入れると、硬いものに触れた。
取り出してみると、何かの力を感じる黒い塊であった。
「それは魔石ね。瘴気が固まったものよ。」
『さっきの黒いの。』
「この大きさのものを持つのがいるとなると、結構まずいかもしれないわね…。」
『大きいと良くないの?』
「そうよ、大きいほど強い瘴気を受けている証だもの。近くに瘴気溜まりでもあるかもしれないわ」
『瘴気を吸うとまずい?』
「短時間なら問題はないけれど、正気を失っていくそうよ。だから早めに帰って報告しないと。」
『はーい。』
ともあれ、帰りを急ぐこととなった。