目覚めと獣、そして祠
データぶっ飛びました_(:3」∠)_
雪が降っている中、数多の記憶が駆け巡る。
それは走馬灯のようでありながら、差し迫った危機があるわけではなかった。
満足のいかない人生だったと思う。
何事かを成すには半端で、途中までで終わっていたのだから。
灰色の空の下、雪で白く輝く森の中でボクは目を覚ました。
地面に横たわった体を起こし、目を瞬かせる。
「ここは…どこだろう?」
そう呟いたつもりだったが、喉から出たのは「きゅう…。」という鳴き声であった。
そっと自分の手を見ると、白く毛で覆われた前足に、肉球と爪が備わっているのが見て取れた。
どうやら、今の自分の体は人間のものではないらしいということが分かった。
体の各部を確認してみる。
細長い体に白い体毛、爪は肉食獣に近く、尖っている。
腰に当たる部分の両側に、長いヒレのようなものが見える。
また、付け根まで確認できないが、背中にも同じく長いヒレのようなものが2つ確認できた。
尻尾は、根本が太く先へいくほど細くなった、トカゲなどの様な構造に毛の生えたもの。
どうやら、見た目はイタチにヒレを4つ足して、尻尾の根本を太くしたような見た目をしているらしかった。
ここまで分かっている事から思い浮かんだのは、毛皮の体を持つ四足竜、ファードラというものだった。
自分の体について分かった所で、雪の中であったことを思い出し身震いをした。
寒さが応えるのでどこか休めるようなところを探したいと思った。
当て所なく彷徨ううちに自分の体でも入り込めそうな祠を見つけた。
祠は手入れされていて、何者かの手が入っていることが確認できた。
祠の石像の前には、小さな石の祭壇が設けられ、お供え物と思しき団子状の食物と、良い香りのする液体が供えられていた。
そこで気づく、今の自分はお腹が空いていることに。
しばらく逡巡した後、石像に向かって一礼した後、「すみません、いただきます。」と言ってお供え物を食べることにした。
やはり「きゅう」という鳴き声しか出せなかったが。
しばらく待ってみて、特に何事も起きなかったので、神はいない、いても許された、と思った。
団子は、冷えて固くなっていたが、よく噛んで味わうようにして食べた。
繊維状の食感を感じ、何かの穀物をすりつぶして、熱を加えたものらしいことが分かった。
意外と頬肉はあるようで、そんなにこぼさず食べることが出来た。
次に、良い香りのする液体だが、おそらくはお酒の類であるらしいと予想した。
舐めてみると意外と甘く、何かの蜜を発酵させたものではないかと感じられた。
気づくと全部無くなっていて、かなりお腹が減っていたのだということが今更ながら認識した。
食べ終わってしばらくすると、酔いが回ってきたのか猛烈な眠気が襲ってきた。
休んだらすぐに出るつもりで、しばらく休ませてもらうことにした。
おやすみなさい。