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艷舞

「痛みも無くなったし、私は適当に時間を潰してるわ。縁があったらまた会いましょ」


 戻ってもやることが無いからと路地の中に姿を消した娼女を見送ると、ゼルはこれで傷を治せと渡された回復薬を腰に括り付け、一路兵舎へと戻った。


「戻ったね、ヴィーラは」

「適当に時間を潰すと」

「そうかい」


 煙管を焚いて独特な匂いを燻らせながら、老婆は相変わらずだと苦笑う。


「済まないね。あんたもやれる事が無いってのに」

「構わない。ここに来た。それが重要なんだろ」

「なんだい、分かってるじゃないか」


 老婆の笑みが深くなり、声が弾んだ。


「そうさね、あんたは責を果たした。なら教えてやろうじゃないか。安心しな、今日は踊り子が居るはずさ」


 彼女は口の中に揺蕩う煙を一頻り楽しんでから吐き出すと、『踊る白鶴』が何処にあるのかを語りだした。


『といっても、白鶴はそう変な場所にあるわけじゃない。ただ場末にひっそりとあるせいで気付かないのさ。こっから行くには……そうさね、一度街門に戻って右手にある厩の周遊場を辿って進んでいくと槌の音を鳴らす家がある。そこを曲がって少し進むと、入り口に大きな提灯(カンテラ)を垂らした短い路地があるから、そこに入って抜けて右に曲がりゃぁ場末の酒場に到達さ』


「…………十分変な場所だろう」


 老婆の案内を反芻しながら歩く事暫く。

 ゼルは鶴の彫刻を施された金板を吊るした建物を前にしていた。

 営業時は開け放たれているのだろう巨大な扉は今は閉まっており、見るものによっては強い拒絶の意志を感じさせる。


「失礼する」

「あ゛?」


 しかしゼルは微塵も臆すること無く扉に手を掛け、鍵も閂も掛けられていなかった大扉を開けて堂々と侵入した。

 それを鋭い眼と共に迎えたのは、上裸の男。

 そこだけを見ればゼルと同じだが、身体に備える肉の質量はゼルよりも一回り多い上に無数の傷が刻まれている。


「ここは今営業してないんだが、何の用だ」


 巨躯の筋肉男はゼルの姿を見るや、今し方机を拭いていた布を放り、警戒も顕にゼルの前に立ちはだかった。


 見下ろされ、威圧されたゼルは、腰元にぶら下げていた皮袋に手を掛けて近くの机に投げ置いた。

 静かな店内に響くのは、じゃり、という多くの硬貨達が擦れる音。

 男はそれを一瞥し、ゼルを睨め付けた。


「金は払う。ここで夜まで暇を潰したい」

「金払えば客っつうわけじゃねぇんだぞ」

「何、邪魔はしない」


 以降互いに言葉も無く睨み合う。

 一秒。夜は喧騒に包まれている酒場に沈黙が木霊する。

 二秒。外で二人の男の他愛もないやり取りが聞こえてくる。

 三秒。睨み合う二人の間を虫の羽音が行き来する。

 五秒。ばしっ、とゼルが徐に腕を突き出し、羽音が止まる。


「「………………」」


 尚も睨み合いが続く。

 七、八、九。そして――


「ふん」


 十を数えた時、男は笑みと共に視線を外して振り返り、ゼルの置いた皮袋を持って無数の酒樽と酒瓶の並ぶ帳場に向かっていく。


「何を飲む」

「?」

「ここに金を落として酒を飲まねぇ奴はいねぇ」

「……なんでもいい」


 ゼルは筋肉男……恐らくこの店の店主だろうものの言葉に、客として滞在許可を得た(認められた)のだと察し、帳場に逆さに載せられた椅子の一つを戻して座り込んだ。


「なんでもいいってんならこれだな。お前さんが落とした馬鹿みたいなモンにはこれが似合う」


 言いながら店主は一つの酒樽の摘みを捻り、杯に注いでいく。


「ツィラーエール。パッツィル特産の銘品だ」

「パッツィル……」


 置かれた酒杯と説明に、ゼルは少しだけ目を細めた。


「おう、フラン最南の都市だ。知ってるか?」

「知ってる。故郷が近かった」


 笑いながらゼルは酒杯を傾けて軽く嚥下し、嘆息。


「…………初めて飲むんだがな」


 何となく知ってる匂い、知ってる味。懐かしい気分。そんな言葉と共にゼルは再びエールを飲み込んだ。

 目の前でいきなり浸り始めたゼルに、店主は他のを出せば良かったかと自問しながら作業に戻った。


「……そうかい、なら存分に愉しみな。だが準備の邪魔はすんじゃねぇぞ」

「分かっている」


 ゼルは店主の言葉に頷きを返し、青い宝石を手で弄びながら何をするでも無く、久方振りのゆったりした時間を過ごした。


 そうして迎えた夜――。


「いやぁ、危なかった! まさかフランに近いこの国に首採りが来てたなんてびっくりだよ! もう一日早く出てりゃ今頃奴の蒐集に加えられてた筈だった!」

「くそぉ! 俺も戦いに参加したかったぜ! そしたらがっぽり稼げたのによぉ!」

「無理だ無理だ! お前さんなんて剣を抜く前に馬に蹴られて終いだよ!」

「なんだと! 銭勘定するしか能のねぇ商人が宣いやがる!」


 今、酒場はゼルが入店した時には考えられぬ程の喧騒に包まれていた。


「そりゃあ、それが儂らの本分だて!」

「ええいくそ! 表に出やがれ!」

「いいとも! そらダズ君、相手をしてあげなさい!」

「違ぇ! てめぇだ軟弱者!」


 売り言葉に買い言葉。飲んで出来上がったもの同士、遠慮のないやり取りを交わして激化するものも居れば、


「よしっ! 喧嘩だ喧嘩だ! お前さんらはどっちに賭ける!」

「やるなら外で無くても良いだろう! ほら、退いた退いた!」


 稼ぎ時だと目敏く周囲に発破をかけて金を集めるもの。

 賭けるなら皆で見なければと、皿に杯と多くを乗せた机を器用に退かすもの。


「俺は護衛に賭けるぞ!」

「俺は冒険者に! 穴に入れんで何が男だ!」

「馬鹿野郎! 堅実に稼ぐのが男ってもんだろ! 俺は護衛に金貨を賭けるぞ!」

「「おおおお!!!」」


 賭けに乗って、酒で緩んだ頭で財布の紐も緩めるもの。


「いやはや、若いと言うのは良いですなぁ」

「全くだ。……冒険者に銀貨一」

「ほ?」


 それらを肴に自分達も愉しむもの。


「全く……男ってのはやぁねぇ」

「そうねぇ……で、貴女はどっちに賭けるの?」

「…………」

「偶にはいいじゃない」


 場の雰囲気に呑まれて内に入るもの。

 本当に多くの客が好き勝手に盛り上がって酒場を賑わせて行く。


「で? お前さんはどっちに賭けるよ」

「ん? そうさな……」


 それはゼルも例外では無く、彼は店主に問われて店の真ん中で拳を構え合う二人の男に目を向けた。


「冒険者だな」


 言いながら腰元から金貨を一枚帳場に置く。


「ほう、根拠は?」

「奴の剣だ。柄の革がすれてる」


 もしあれが貰いもので無ければ、相当な研鑽を積んできたに違いない。

 ゼルはそう語り、商人の護衛に賭けた店主に金貨を没収された。


「目の付け所は悪くないが、奴さんは最近男級になったばかりだ。つまり実戦に弱い」

「くそ……」


 この世界の冒険者の位階分けは貴族と同じ王、公、侯、伯、子、男、騎。

 そして男級は統合組合(ギルド)から最低限の基礎知識を身に付けさせられ、街中で可能な簡単な依頼をこなしたらそれだけで男級に上がれる。


 一応例外もあるが、こんな経緯から殆どの男級は模擬戦と素振り以外で剣を振るった事が無い素人である。

 そんなものが人を護ることを生業とするものに剣でもない拳で勝てる筈もなかった。


 それを知る店主は当然護衛に賭け、それを知らずに剣だけを見たゼルは冒険者に賭け、勝者(店主)に金を取られたというわけだ。


「そんなんで良くもまぁ、賞金首を倒せるものと……」

「若者の無謀と言うのは可愛いですな」

「だろう? ま、期待の新人にしちゃちょいと驕りすぎだが」

「今回がいい灸だろう」


 違いない。両隣に座る老人と冒険者を交え、店主と四人で語り合うゼル。

 幾人かは彼の晒す裸体に驚いたり距離を取ったり、逆に見惚れて遠巻きに見たり絡んだりとしていたが、彼ら二人は自然な態度でゼルに接していた。


「それで、噂の首採りってのはどんな奴だったんだ? あんただろう、首採りの首を取ったっつう、上裸に二剣を佩いた戦士ってのは」

「……多分な」

「おや、やはりそうでしたか。奇特な格好をしているからもしやとは思ってましたが」


 冒険者と老人は、荒くれ家業と商い家業という違いこそあれ、両人ともそれぞれの同業からゼルの話を聞いていた。


 曰く、剣と一体の体捌きで瞬く間に並み居る賊を切り伏せた武芸者。

 曰く、倒す前の賊の宝で自分らの護衛を雇ってしまった自信家にして気骨者。若しくは変人。


 喜怒哀楽。正にそう表現するに相応しい、賭けとその当事者への反応で先程よりも賑わうもの達の騒めきを背に、賭けの前に多くのもの達が話していた噂の当事者の話を聞かんと両人が耳を傾ける。


「すまんが、アレについては語りたくない。凄惨な地獄。その言葉そのものだった。中には乗り込んだだけで戦意を喪失して吐いたやつも出た」

「なんと……」

「奴らと同じ事を……。それ程までに酷かったのか」

「あぁ、そこかしこに首が転がって……ともかく奴自身もそうだが、あの団の連中全員がイカれてた。肴に語るにはちょっとばかし重すぎる」


 その言葉を最後にゼルは酒を一息に煽り、空に酒杯を店主に渡して満たされた杯を受け取る。

 一連の動作に言葉は無く、金銭のやり取りも無かった。

 淹れるのは故郷の味(ツィラーエール)。金は受け取り済み。

 夜を待つ間に生まれた二人の暗黙の了解。


 そんなものが生まれた要因が、今。


 ――しゃん、と。


「「「「――――――――」」」」


 決して大きくない。いや、小さすぎる衣擦れが喧騒の満ちる場末の酒場に静寂を投げ落とし、こつ、こつ、と軽快に床を叩く音だけを場に満たさせる。


 魔力。この世界にある不可思議な力。

 それとは違う、同じ名前の人を惑わす魔性の力。

 そんなものを宿すものが、宿の上階に繋がる階段より舞い降りた。


 魔法使いと旅をして多くの人と触れ合ったゼルでも見た事の無い、珍しい紫色の髪と瞳を称え、薄らと透ける口布から覗く笑みは何処までも艶めかしい。


 濡れてると見紛う程に艶やかな髪。

 妖しげな光を灯して周囲を蠱惑する瞳。

 見るもの全てを魅了するような笑み。


 そして、その美しい面頬に劣らぬ完成された身体。

 露出が多く、美しい身体を飾る為に作られたと言っても納得出来るような薄布と煌めく宝石を従えるのは、大凡の人間では嫉妬すら抱けぬ程の完成された美。


 肌は白磁。胸は少し大きめ程度の椀。程よいくびれと縦の臍の境に覗く鼠径部は否応なく情欲を唆られる。

 臀部とそこから伸びる脚は太過ぎず細すぎず、足の爪先に至るまで靱やかで美しい脚線美を描いている。


 ――ほぅ……。


 何処からか浸るような溜め息が漏れた。

 耽美、という言葉がある。美を至上のものとしそれのみに浸り、陶酔すること。

 ただその美しさだけで場を支配した彼女には、正にその言葉が相応しい。


 軈て彼女は酒場の中央、今し方決闘の為に机を退かされて開けた場所へと到達し、構えた。


 酔いに呑まれて喧騒響いていた場末の酒場は今、狂気にも似た静寂に包まれ、この場にいる全てのものが彼女の一挙一動に神経を研ぎ澄ませていた。


 ――しゃん。


 言の葉は紡がれず、奏でられる音は衣擦れのみ。

 だが、暫くすると何処からとも無く聞こえてくる。川のせせらぎに、火の弾ける音が。


 何もせずとも魔力を撒き散らす魔性の鶴が、婀娜やかに踊る翼から羽根の代わりに宙を揺蕩う雫を滴らせ、彼女の艶やかな身体と酒場の乱雑とした光を取り込み不可思議な色を宿していく。

 それを美しく彩るは、彼女の流麗な動きに合わせて舞う無数の火の粉。


 ゼルは恰幅のいい商人の言葉に半信半疑だった。

 凶悪な賞金首の報奨金に見合う踊り。それが劇場では無く、酒場で見れるという。

 軽く屋敷が建つ程の額を、場末の酒場で。

 胡散臭いにも程があった。だからこそ、好奇心に負けた。そして、納得した。


 この世のありとあらゆる美辞麗句を並び立てる。そんな行いすら無粋な絶対の美。

 劇場で踊ればそれはさぞ映えるだろう、目の肥えたもの達からも万雷の喝采を得られるだろう。

 だが違う。それは違う。ただ煌びやかな()()の劇場ではこの踊りを活かせない。

 精々が国を傾ける程度で、それは余りにも勿体ない。


 舞うだけで静寂を齎してのける美女に、決められた沈黙の中で踊らせるなど余りに不遜。

 ただその美しさだけで魅入らせる魔性を、煌びやかな装飾で彩ろうなど侮辱が過ぎる。


 酒を酌み交わし、勝手に騒いで賑わう粗野なもの共が集まるこの場で、安酒と大して美味くもない料理を摘んで乱雑に語り合う彼らの前でこそ、そんな彼らを黙らせ魅入らせてこそ、その美しさはより映える。


「………………」


 ゼルは無意識に青の宝石を掲げていた。

 同じ色の瞳を持つ女にこの踊りを見せるように。

 ゼルは女を抱いて以降――抱いた時もそうだが――録なものと縁が無かった。


 一見愛想が良いものの、その目の奥では宝を定める盗人娘。

 何処までもイカれ狂った猟奇人と、孕まされたからか、それに寄り添わんと虚ろな目を血走らせながら剣を振るう堕ちた女。


 何方も不快だった。だから殺した。

 後者の方は昼間商人から素性を聞き、貴族の跡取りや純潔に対する価値観等を込み入れて考えれば、ああなるのも無理は無いのだろうと思いはしたが、それでも不快に思うのは変わらなかった。


「………………」


 ゼルは青い宝石を介して、踊り子の舞いを透かし見た。彼女曰くこの石は珊瑚だというのに水面のように透けている。


 捨てたもんじゃない。ゼルはそう思った。

 リッカデュラル家との触れ合い次第では人との関わりの一切を断ち、北に渡ろうと考えていた。

 約六百年程前に魔王と呼ばれる男が居た大地に。彼の遺した悍ましい獣達が跋扈する地に渡り、身を闘争に浸そうと。


 だが、目の前の美しい舞いを見て少しばかり考えを改めた。


 ()に身を浸していた影響で、人の死に無感動になった。


 ()を見る前の激情こそ残ってはいるが、それでもやはり、目の前で人が死ぬ事には何も感じない。殺す事にも躊躇いが無くなっていた。


 まぁ、でも、誇りや尊厳が踏み躙られる事はまだ許せないけれど、言ってしまえばそれだけ。


 不死、怪力、歪な力(王眼)。それらに加えてこの有り様。自分は壊れている。歪んでいる。


 魔法使いは言った。留まり探せと。

 それは多分、堕ちるなという意味もあるけど、人の世に留まれという事でもあるのだとゼルは解釈していた。


 もし不死を晒せば、不老という名の永遠の権力と若さを求めるものが絡んでくる。

 もし王眼を、時間が許せば無限に剣を作れるこの力を知られれば、国に目を付けられる。


 それ等を振り払うのは簡単だ。殺せばいい。

 だがそれをすると、魔法使い達が出張って来る。人類の守護者達が。よしんば彼らも殺せたとして、その先に待つのは魔王と同じ末路だろう。


 自分の死の為に他者の何もかもを踏み躙る暴君。

 それだけは御免だった。

 だから隠して……少しばかり面倒になった。


 だから、人目に付かず心を無にして暴れ狂える北に渡ろうとしていたのだが……。


 もう暫く、人と関わるのも良いかもしれない、と。


「っ……ん、これは?」


 一瞬だけ踊り子と宝石越しに目が合ったと思えば目の前に揺蕩う水が姿を変え、紙切れと化した。それを掴み、ゼルは首を傾げた。


「お、珍しい。そら招待状だ。今宵一夜の夢にご案内、なんてな。他にも客は居るから静かに頼むぜ」


 ゼルは訝しげに眉を顰めた。

 そんな彼に店主が手で指し示すのは、今し方踊り子が姿を消した上階に繋がる階段。


「あー、親父。俺が渡した金、どれだけ減った」


 そして踊りが終わり、踊り子が姿を消してなお静寂の広がる酒場を睥睨し、ゼルは店主に問う。


「そうだな。何せお前さんの置いた金はこの店の三日分の売り上げと同じだ。そう簡単に減らねぇさ。時間外滞在許可に金貨2として……ツィラー七杯に銀貨30。残りが……まぁ、一割も減ってねぇな」

「なんだ、意外と稼ぐんだな」

「奴さんのお陰でな」


 態々ゼルの渡した皮袋から硬貨を取りだして答える店主に軽口を叩き、余韻に浸る荒くれ者共に喧騒の種を撒く為にゼルは二の句を告げる。


「だったら今ここでぱーっと使ってくれ」

「お?」

「良いのですかな?」

「あぁ、存分に愉しんでくれ。どうせ既に俺の金じゃ無いんだ」


 言いやがる。と店主は笑い、隣で聞いていた冒険者と商人は早速とばかりに新たな酒を注文した。

 店主は共に酒の管理をしている息子にそれらの用意を頼むと、余韻に浸る客に向けて声を張り上げた。


「おう、おめぇら、いつまで余韻に浸ってやがる! 今日はこの坊主の奢りだぞ! 噂の首採り殺し様からの餞別だ! 有難く受け取らねぇってんなら出て行きな! うちに酒呑まねぇ阿呆は要らねぇからな!」

「…………え」


 途端、場に満ちる静寂の意味が変わった。

 そして、この店で稀に見る熱狂に包まれた。

 それを背にしてゼルは踊り子が姿を消した上階へと向かっていく。


「おい、違うぞ! 首採りを()ったのは俺じゃねぇ!!」


 そんな悲痛な叫びを完全に無視して着いた先には――


「いらっしゃい、また会ったわね?」


 ――()()()の髪に紫の瞳を称えた、娼女がいた。

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