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大河渡らば蛇を釣らん

「弓を持つものはこっちだ! 鉤付き矢を各自二本持って行け! それとアモ隊、お前達は網を!」


 統一感のある鎧に身を包むもの達と多くの共通点を持ちながら、少しばかり豪華な装備を着けたものが指示を出している。


 橋の前に設けられた関所から、縄を括りつけた矢を持った兵士達が姿を現し、雑多な装備に身を包む冒険者達に矢を渡して関所に戻って行く。


 矢を受け取った冒険者達は岸へ走り、一定の間隔を開けて各々の弓に矢を番える。

 一部には兵士も混ざっている。


「おい待てよあんた、あれを引っ張り上げる気か!? 正気じゃねぇぜ!?」

「ならばあれを放置するか? 既にトゥーネア大橋という要所を壊したあの化け物を!? 貴様こそ正気か!? あれを放置したら更に大きな被害が出るぞ!」


 彼らが忙しなく動くのを傍目に、一人の冒険者が指示を出す兵士に噛み付く。


 彼と彼の周囲にいる仲間だろうもの達の面頬には幼さが残っており、強張った表情からも経験の無い新人である事が見て取れる。


「戦う気が無いのなら近隣の村へ伝令に走れ。金は私の給料から幾らでも出してやる。この場に足手まといは不要だ」

「なっ、そんな言い方無いだろ! 俺達だって冒険者だ!」


 足手まといと言われたからか、新人冒険者は自分の恐れや実力の無さを棚に上げ、より食ってかかる。


「それを言うのなら我らは兵士だ! 命を賭してこの場を守るのが務めだ! 退くことは決してない!」


 兵士は彼へ一喝した以降は何を言われても完全に無視し、指示を聞く兵士達と冒険者へ声を張り上げる。


「次に魔術を得意とするものは橋へ! 具体的な指示はトッコが、あなた方への被害は我らが防ぐ! だから安心して向かってくれ! 難しいというのならそこにいるディアンに指示を仰げ! 彼なら適切な指示を出してくれる!」


 下らないものへの対処より、現在進行形で橋を壊し続けている巨獣を優先したのだ。

 間断なく響く兵士の声に、冒険者も兵士も関係なく動きを見せる。

 その中には、新人と共にいた魔術師風の少女も含まれる。


「おぅい新人、あんま兵士さんを困らせんじゃあねぇよ。邪魔するだけならとっととどっか逃げちまいな」


 少女が離れたことが予想外で気勢を弱めた新人に、巨漢の男が声をかける。

 名のある冒険者なのか、周囲のものらが騒然とする。


「…………よし。なぁ、それを貰ってもいいか」

「え? あ、はい! どうぞ」

「感謝する」


 優れた耳が、指示と同時に勝手に拾う下らないやり取りを聞き流していたゼルは、現在冒険者達と共に岸に居た。


 縄を括りつけた槍を地面に突き立て、新たな縄を受け取る。


 加えて新たな槍を、岸の上で待機させている青鹿毛から取る。


「リン、お前は状況に応じて馬を退かせろ」

「畏まりました」


 姿の見えないリンに指示を出し、川岸に戻る。


 槍に縄を括り、鏃の鉤状の返しを留め具として利用して縄を固定する。

 その際、縄によって隠れた柄の形状を変えて縄が抜けないようにすることも忘れない。


 ゼルに縄矢を譲った兵士と冒険者の二人は、彼の淀みない動きと絞られた身体を見て、例の如く高位の冒険者だろうという間違った推測を立てる。


 彼らが目の内に宿す輝きから勘違いを悟ったゼルだったが、訂正すること無く眼前の魔獣を見据える。


 今水面から顔を出しているのは、複数の丸太の首に鰐の頭を持つ多頭の巨獣。

 本来ならもっと上流付近にある沼地の奥に居るはずの巨獣は、侯級に分類される厄介な魔物である。


 凶悪な顎は強く、橋の石材を容易に噛み砕く。

 徐に大口を開けた一つの頭が、川の水を目に見える形で大量に吸い込み、鎌首をもたげる。


 水が口端から零れるが、吸い込んだ量と比べれば微々たるもの。


 向く先は対岸の関所の上。

 こちら側の関所の屋上部に居る、旗を持つ三人の兵士達と同様のものらが、互いに旗を振り合い意思伝達を繰り返している。


 この戦いに於いて、最も重要度の高い場所だ。


 どちらかが欠けても、今後の戦いの趨勢を大きく左右する事になるだろう。


「不味い、誰かあれを止めろ!」


 巨獣の行動を悟ったものの切羽詰まった声が響く。


 ゼルと巨漢、岸と橋に居る強者二人が、声に応えるまでも無く己が得物を振りかぶる。


 だがそれよりも早く、眩い煌きを放つナニカが、再び大口を開けた頭の上に向かって飛んでいく。


 巨獣の挙動に注目するこの場の全てのものの視界に映り込んだソレは、巨獣の頭上に到達した瞬間、強烈な光と音で皆の網膜を焼き、耳朶を撃つ。


「――――――――!」


 奪い去られた音と視界が戻ると、まず最初に荒ぶる飛沫の豪快な音が聞こえ、だらんと垂れた頭から力なく水を吐く巨獣が目に入る。


 次に、残る他の頭達が悲鳴にも似た方向を上げ、荒ぶる姿が確認できる。

 加え、ぱらぱらと関所の一部が崩れ、荒れた川の中に呑まれる様子も。


 しかし、幸いな事に三人の兵士は無事だった。


「あぁ、くそっ、希少なモンだってのに! 俺がぼろ儲けする予定だった分くらいの活躍はしてくれよ、戦士さん方よォ!」


 強烈な雷を呼び起こした思われるものが発した叫びを機に、戦場が動く。


 第一に、雷の主を探り視線を彷徨わすものと、己のすべきことを全うするものに分かれた。

 無論、ゼルは後者だ。


 関所の兵士達が旗を振り、笛の音が響く。

 合図を受け、崩れた橋に並ぶ魔術師達が川の流れに干渉を開始する。


 第二に、岸に並ぶもの達が縄矢を弓弦に番え、ゼルが槍の投擲体勢に入る。


「まだ撃つな!」


 荒ぶる巨獣の咆哮に畏怖を抱き、先走るものが出た中で、戦士達は見た。


 魔術師20名弱が協力して川に作り出した、巨大な土壁を。

 残る10名強がが協力して、壁を越えて多頭の獣を水中に隠そうとする水を制御する様を。


「魔獣の全容を確認! 推定通り、侯級指定魔獣多頭蛇(オロチ)と判明! 誰ださっき多頭竜(ヒュドラ)とか抜かした奴は! ひびらせやがって、給金引くからな!」

「仕方ないだろ! 息吹(ブレス)吐くとこも見た目も似てんだから!」


 水を退かせて晒された多頭の獣改め、多頭蛇の胴体は、正に獲物を呑み込んだばかりの蛇といった見た目をしている。


 先程まで水面から顔を出していた首達はその胴体から伸びている。

 ここから更に強靭な四肢が生えていれば、段違いの危険度をもつ多頭竜として分類される。


「放て!」


 多頭竜じゃなかった事で安堵に緩んだ空気が、兵士の号令により一瞬で引き締まる。

 岸と川では当然高低差がある為、放射状ではなく直線的な軌道を描いて飛んでいく無数の矢達。


 多頭竜と違い、柔らかな鱗に幾つかの矢が刺さる。

 場所は首や胴体と、人によって異なる。


 一射目は首に三本、胴体に二十本前後という結果だ。

 ゼルの槍は首の方に入る。


「くっ……!」


 槍が刺さった瞬間、繋がる縄が凄まじい力で引っ張られる。

 それを受け、ゼルは身体の動きを完全に縄を引くためのものに切り替えるために、他より先んじて二本目を投げる。


 ゼルの動きに追随する形で、余裕のある胴体部には二射目が放たれる。

 首を狙う矢は、一射目で当たった矢と繋がる縄を、当てたものとは違うものが複数人で掴む。


 手の空いた二人の射手が、再び矢を放つ。

 片や外れ、片や命中。

 縄を引くものから譲り渡された矢で、同じ行動を繰り返していく。


「ぬぅ……っ!」

「手伝うぞ!」

「それはいい! それより壁を作ってくれ!」


 首に刺さる矢が着実に増えていくのを尻目に、ゼルは近くの冒険者へ要求する。


「は? か、壁?」

「俺は魔術が使えん! ぐっ、ぬっ、このままだと引きずり込まれる!」


 人外の膂力にものを言わせて踏ん張るも、地面が砂利であるせいで、ゼルの身は少しずつ川へと近付いていた。


 だから、ゼルは助力では無く協力を求めた。

 有り体に言えば、()()()だ。


「わ、分かった!」


 冒険者はゼルの要求に応え、岸の土を盛り上がらせる。


「助かる……!」


 盛り上がった土に足をめり込ませ、一人耐えるゼルが持つ二本の縄。それは、それぞれ異なる首に繋がっていた。


 身体強化を使っていない彼は、現在込められる最大の力で首を抑える。


「すっご……」

「見ている暇が、あるなら。向こうを手伝え!」


 驚嘆に言葉を失い棒立ちする冒険者に、他の首を引っ張るもの達を手伝うよう言い放つ。

 余裕がなく、語調が荒くなるが、おかげで冒険者は思考を取り戻す。


 しかし、彼が他の首の元に向かうことは無かった。


「良いや、手伝う! あんたほどではないが、少しくらいは力になれる筈だ!」


 言いながらゼルの後ろに回る冒険者。

 ゼルは尚も彼を他の所に回そうと口を動かすが、その言葉は他のもの達に掻き消される。


「ダメだダメだ、胴体は駄目だ、なんの拘束にもなりゃしねぇ! 俺達もそっちに回るぞ!」


 胴体に繋がった縄を放置したもの達が来たのだ。

 だが、それにしても数が多い。


 ゼルは人が増えた事で出来た余裕を利用し、天を向いていた顔を正面に戻す。

 そうして視界に入るのは、形を変えた川を遮る土壁と、その向こうから舟に乗って姿を現す冒険者と兵士達。


 なんと彼らは、川の流れが一局に集中して凄まじい濁流になっている中を渡って来たのだ。

 変わった流れを利用するにしても、あまりに無謀。


 彼らを拾うのは、多頭蛇から抜けたり、はなから刺さらずに回収された鉤縄だ。


「おい、向こうの戦力は!」

「最低限は残ってらァ! おら全員行くぞ! 蛇釣りじゃあ!!」

「「「「うおおおおおお!!」」」」


 彼らに驚愕した冒険者が問いかければ、凄まじい咆哮が響き渡る。

 それは多頭蛇の咆哮と引けを取らない大きさだった。


 彼らは多頭蛇の頭に繋がる縄々に向かって散っていく。


 縄の数にして約十本、頭の数は約四。

 各縄に分散した戦士達の数は、平均二十人ずつ。


 ゼルや巨漢が引く縄には、人の数が若干少ない。


「「「「「せーのっ!」」」」」


 大河を渡る為の要所であるおかげで集まった二百名の戦士達が、協力して縄を引っ張っていく。


 維持する必要の無くなった壁が崩れ、再び川中に隠れた多頭蛇の身体が、また少しずつ姿を晒していく。


「縄が千切れたっ!」


 そんな中で、最悪の報せが走る。

 それは他の首には複数の矢が刺さっているのに、唯一一本だけで首を抑える、ゼルの槍に繋がれていた一本だった。


 縄に込めていた力が唐突に浮き、体制を崩す二十名弱とゼル。


「あんたら、十人程でこの縄を継いでくれ!」


 ゼルは浮いた手で残る縄を掴みながら、転んだものらに声を掛ける。


「分かった!」


 先んじて動いたもの達が縄に取り付く。


「俺たちは!?」

「あの男の所だ! 奴を呼んでくれ! よし、良いか、離すぞ!」

「「おう!」」


 ゼルが縄を離した瞬間、少しだけ三十人の身体が引っ張られる。


 踏ん張りを効かせ始めた彼らに託したゼルは、岸の上で未だに待機する青鹿毛の元へ向かう。


「リン、そろそろ馬を遠くへやれ。直にここは荒れる」

「分かりました。それにしても、貴方の準備がここまで功を奏すとは思いもよりませんでした」

「俺もだ。よし行け」

「えぇ、また後ほど」


 リンと会話をしながら青鹿毛に括り付けていた剣を帯ごと外して肩に掛け、投槍用の槍二本と盾を手に取ったゼルは、青鹿毛の臀を叩いて逃がすと岸に戻って行く。


 迂闊に武器を生成出来ない状況を見越しての武器群だが、流石にここまで使えるとはゼルも予想していなかった。


「そいで、兄ちゃん、儂に何をして欲しいんじゃ」

「色々あるが、俺を投げろ」

「そりゃあ随分詰めたのぅ!」


 髭に覆われた口元から歯を覗かせ、豪快に腹を揺らす巨漢の冒険者。


 綱引きを他のものに託して呼ばれてみれば、ゼルは投げろと言う。

 一人で二頭を抑えて見せた事といい、破天荒で命知らずなゼルの行動に、彼は小さくない好感を抱いていた。


 おう、そうじゃ。冒険者をやってっと面白いもんが舞い込んでくる。これこそが儂が求める本領じゃけぇのお。


 喜色満面の彼に、ゼルは槍を一本手渡す。


「うん? これは」

「何かあったら頼む」

「おぉう、良いぞ。代わりに兄ちゃんはこれ持ってってくれんか」

「了解した」


 新たな鉤縄を受け取ったゼルは、それを腰に括り付ける。


「おい、不味いぞ! また水を呑み始めてる!」


 二人は咄嗟に反応し、多頭蛇に目を向けた。

 そこでは綱引きから解放された頭が、大口を開けて水を呑んでいた。


「なぁ、 あんた! さっきの雷は起こせないのか!?」

「出来ねぇよ! 出来たとしてもやらねぇよ! あれ仕入れんのに馬鹿苦労したんだぞ!?」


 どこかから聞こえるやり取りを横目に、ゼルと巨漢の男は言葉もなく動き出す。


 熊と見紛う如き巨躯を活かし、片手を首に、もう片手は腰の帯を掴む。


「ん、なんじゃぁ、この帯。えらく硬いのう」

「あぁ、自慢の帯だ」

「だったらしっかり掴まんとなぁ」


 持ち上げられたゼルは、脱力して手足を垂らし、完全に身を預ける。


「そんじゃあ行くけぇ、堪えろよ兄ちゃん!」


 地面を向いていた手足が、慣性に従い後ろに流れる。

 その場で一回転して勢いを乗せた巨漢が、ゼルを大口開ける頭に向けて投げ出した。


「galalaaaaa――!!」


 迎撃する大蛇は呑み込みを中断し、鎌首をもたげる。


 頭の位置は、丁度ゼルの軌道の行く先だ。


 大蛇が再び大口を開ける。

 溢れ落ちる濁流をすら掻き消す()が、ゼルの元へ真っ直ぐ放たれる。


 ゼルは咄嗟に盾を掲げるが、水圧に持っていかれそうになり即座に離す。

 一瞬の判断。おかげでゼルは撃墜と怪我を免れた。


 しかし、蛇の頭上に向かっていたゼルの軌道は、水流に遮られた事で鋭角を描く。

 加え、水流に触れて煽られた事で、ゼルの身体は駒のようにぐるぐる回っている。


 万に一つの可能性で蛇の顎を掴めなければ、どう足掻いても彼は川に呑まれるだろう。


 それか、蛇の首に槍を突き刺すか。

 だが、回転の勢いからして刺さった直後には、意図せずに薙ぎ払ってしまう事になるのはほぼ確定で、蛇から槍が離れのは確実だ。


「兄ちゃん!」

「っ!」


 脳裏に詰みという言葉を過ぎらせたゼルの耳に、巨漢の声が響く。

 天と地が入れ替わり続ける視界の中で、ゼルは何とか巨漢に目を向けた。


 そこには、岩を削り出して作ったかのような大斧で蛇の水吐きを防ぎながら、槍を投擲しようとする巨漢の姿があった。


 応え、ゼルは槍を幾度か手の内で踊らせる。


「「行くぞ!」」


 互いに機会を窺い、叫ぶ。

 ゼルは今持っていても意味の無い槍を巨漢に。

 巨漢はゼルの活路を拓くための槍をゼルに。


 双方が放った槍が交差する。


 直後、蛇の水吐きが止まり、代わりに二所で異なる飛沫が舞う。


 それは土と、蛇の血だ。


「ぐぅ……っ!」


 届いた槍を持ち、勢いのままに槍と蛇の元へ到達したゼル。

 今の場所はすぐそこに頭を仰ぐ首元だ。


 背を蛇に叩き付けた衝撃で身体が跳ねるが、槍を掴んで無理矢理抑える。

 それにより発生する戻る力、反動を利用して、ゼルは蛇の首の腹から背へと場所を移す。


 その最中に、彼は素早く背中の剣を抜いていた。


 痛みに荒ぶる首に自分の身体を固定するために、ゼルは剣を突き刺す。


「兄ちゃん! とっとと括れぃ!」

「分かってる!」


 首の荒ぶりようは凄まじく、さしものゼルも迂闊に動けない。


 それは他の首にぶつかる程で、その衝撃で剣が抜け、ゼルの身が他の首に転がり落ちる。


「槍を!」


 ぶつかった事で多少荒れたが、綱引きを続ける首の動きは比較的大人しい。


「すまんのぉ! 深ぇ突き刺さっとって抜けそうに無いんじゃ!」


 巨漢の言葉に、ゼルは腰から無銘の剣を抜く。


「ぜァっ!!」


 荒ぶる首に向け、跳躍。


「galaaalaaaaa――!!」


 急速に近付くゼルを喰らわんと開けられる上顎に、ゼルは剣を叩き付ける。


「抜けっぞぉ!」


 抜けた。行くぞ。二つの単語が混ざった叫び。


 無理矢理閉じた顎の上を転がり、無銘の剣を蛇の頭に突き刺して己を留めたゼルは、回転しながら飛んでくる槍を受け止め、無銘の剣の隣に刺す。


「ふっ……!」


 二つの間に鉤縄を通すと、荒ぶる頭から飛び降りる。


 縄を強く持ち過ぎず、共に落ちるように。

 岸を転がり、迅速に立ち上がり縄を引く。

 鉤は二つの武器の柄に引っ掛かって取れそうもない。


「よぉやった!」


 逆に引っ張れそうになるゼルの後ろで、巨漢が縄を取る。

 凶悪な膂力の持ち主二人に引っ張られれば、弱った首にはどうしようもない。


 先程まで暴れ狂っていた首が、力無く項垂れる。

 無銘の剣が、槍が、頭を刺した影響が出始めたのだ。


 そして、多頭蛇の全容が、再び陽の元に晒される。


「今だ! 全軍、ありったけの攻撃をぉぉおおお!!」

「「「「「「うおおおおお!!!」」」」」」


 ゼルと巨漢の活躍を見て士気を高めた兵共の前に、地の利を失った魔獣は呆気ないほど簡単に仕留められた。


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