9.毒
舞踏会まで、残り5日─。
今日の夕飯には、私の好きなスープが含まれている。
心のなかで「わーい」と言ってしまうくらい嬉しい。
「いただきます。」
一方、外面はいつもどおり、平然としている。
あ〜、美味し…!?
いつもと違う。
そう気づいたのは、飲み込んだ後だった。
「っ…。」
「どうしんだい? エラ?」
「ちょ、ちょっと、目眩がして…。」
私は痺れで回りにくくなった舌を動かし、そう言う。
「大丈夫ですか? 義姉様。お部屋で休まれては?」
「……、ごめんけど、そうさせてもらうわ。」
エレンの口角がわずかに上がる。
エレンの仕業か。
「わかった。部屋に行くよう、オリナに伝えておくよ。」
「ありがとう、お父様。」
私はそう言うと、逃げるようにリビングから出る。
そして、ドアを閉めた途端、その場にしゃがみ込んでしまう。
頭、クラクラする…。
先程お父様は、オリナに伝えておくと言ったが、伝えるのは恐らく使用人。
使用人には継母の息が掛かっている。すぐに来るとは期待できない。
吐けば多少楽になるだろうが、ここでするのは違う。
だが、このままでは…
「お嬢様? どうされました?」
「オリナ…」
そこにとてもタイミング良く現れたのは、オリナだった。
「助け、て……。」
「これで大丈夫だと思います。」
処置を終えた後、オリナはそう言った。
「ありがとう、オリナがいてくれて、助かったよ。」
私が口にしたのはやはり毒だった。
「助かったのは、お嬢様が一口しか食べてなかったからでもありますよ? 出なかったら、どうなっていたことか…。」
私は一口しか食べなかった。お陰で致死量には至らなかったのだ。
「……、やはりおかしいです、こんなの。」
「? 何が?」
「お嬢様がこんな目に遭うことが、ですよ!
お嬢様は何もしてないのに!!」
オリナが珍しく感情的になる。
「旦那様に報告しましょう。こんなの、間違ってます!」
「……、ありがとう、オリナ。
…でも、大丈夫。」
こんなのだから、こんな目に遭うんだ。わかっている、だけど、お父様には言いたくない。
「お父様には、『ここ数日、舞踏会に行くのが楽しみで寝れてなかった』って伝えてくれない?」
「……、わかりました。寝不足が原因、と伝えておきます。」
「ありがとう、オリナ。」
どうも、こんにちは。
毒を食べた、と明かすタイミングを一瞬失ったあぷりこっとです。
ちょっと、焦りました(笑)。
流れ的に入れたら違和感があったりしてまして…、まぁはっきりわかってからにしようと思い、あの位置になりました。
この前、スノーフレークという鈴蘭に似た花が咲いていまして。とても可愛かったです。
鈴蘭に似ているので、毒性あるのかな…と思い調べたら、本当にありました(笑)。食べても食中毒を起こす程度らしいですが。
ちなみに、鈴蘭の毒性は強く、最悪の場合死に至ります。絶対に口にしないでくださいね。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
また次回、お会いしましょう。
バイバ〜イ!