7.オリナ
「これでもう大丈夫だと思います。」
オリナは子犬への手当を終え、そう言う。
子犬は穏やかな寝息をたてながら眠っている。
「ありがとう。オリナが犬好きで助かった。」
「…別に、犬好きじゃなくても助けましたよ。」
オリナが呆れたように言う。
「え? でも私…」
「別に、貴女が誰だろうが変わりません。
困っている人がいたら助ける、それが主治医ですから。」
私は思いもしなかった言葉に、キョトンとする。
そして
「ふふ、ふふふ」
思わず、笑いだしてしまう。
「…? どうされました?」
「いや、その…ふふ、オリナらしいなと思って。」
この人は、他人に興味がない。
だから、私が平民の子であろうが、周りからいじめられていようが、関係ない。自分の仕事をただする。
ただ、それだけだ。彼にとっては本当にそれだけのことだ。
でも
「そっか、そう、だよね。」
「!?」
それがとても嬉しくて。
勝手に声が震え…涙が出た。
「ど、どうされましたか、お嬢様?!
どこか痛いところでも…」
オリナが珍しく慌てる。
「ふふ、大丈夫、なんでもないの。」
でも、涙は止めどなく流れてくる。
それを拭おうと手を動かしたとき、その手を、オリナに掴まれた。
「どう、したの?」
「怪我を、されていますので。」
よく見ると、私の小指に一筋の小さな傷が出来ていた。
あの低木の枝で切ったのかもしれない。
「…自分は何の力もないただの主治医です。貴女を今の状況から救って差し上げるのは難しいでしょう。
ですが」
オリナは私の小指を手当しながら、話す。
「一人の人間として、話を聞くぐらいはできます。
どうか、独りで抱え込まないでください。」
「……。」
それを聞き、止まりかけていた涙が、また流れ始める。
「……、そ、そろそろ泣き止んでください。
私が旦那様に怒られてしまいます。」
「オリナのせいでしょ。バカ。」
独りになったと、思ってた。
だから─、オリナにそう言ってもらえて、嬉しかった。
「ありがとう、オリナ。」
ガチャ
そろそろお父様が帰ってくるので、私は着替えるために医療室を出た。
ドアを開けると、腕を組んだ継母様がいた。
「シンデレラ、貴女、途中で仕事を放り出したそうじゃない。」
「……、申し訳ありません、奥様。
緊急事態でしたし、仕事がもうすぐ終わる時間でしたので」
「言い訳しないで! 見苦しい。」
言い訳、か。
このことをお父様に話したら、私に手を出すことすらできなくなるというのに。
まぁ、出来ないからこの状態なんだけど。
「申し訳ありません、奥様。次からは気をつけます。
……、そろそろ部屋に戻ってもよろしいでしょうか。
この格好では、旦那様を驚かせてしまいますので。」
「……、いいわ。早く行きなさい。」
「ありがとうございます。」
こんなの、お父様に言えるわけない。
いじめられているという事実に幻滅されたら嫌だから。
…いや、違うか。
もしお父様も継母様のように扱うようになったらと思うと、怖いんだ。
そんなことがあったら、私は…生きていけないから─。
どうも、こんにちは。
オリナが改めて好きになったあぷりこっとです(笑)。
いや〜、いい奴ですね、オリナくん。
もういっそ、エラとくっつけちゃおうかな〜(笑)。
と、いう風に使えるので便利です、男の子。
多分エラが会えるであろう王子と、ライバルになったりとかしてくれてもいいかと思います。
あ、私も加わって四角関係?になります!
まぁ流石にそれはどうかと思いますが。
今回はオリナくんのいいところを見つつ、継母のことをなぜ父に言えないかを描くことが出来ました。
いじめられてるって、なんか言い難いですよね〜。
自分が情けないというか、格好悪いというか、言うべきだと思えば思うほど言いづらくなるというか…。
それでも話せる人がいるというのはとても大切なことだと思います。
例え状況が変わらなくても、気持ちはそれだけで思いの外楽になるんですよね〜。
オリナくんがエラにとってのそういう人になってくれればいいな、と思っています。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
また次回、お会いしましょう。
バイバ〜イ!