5.本性
ルーラが辞めた後、新しく私専属の使用人を雇うか、家族で相談した。
その時に継母様は言った。
「私の使用人にさせましょうか?」
と。
継母様の使用人は、継母様が「人を見る目には自身があるの」と言って選ばれた使用人だ。
確かに、今まで継母様の選んだ使用人が問題を起こしたことがない。皆、いい使用人だと思う。
─でもその時、なんとなく継母様の使用人はダメだ、と思った。だから
「いえ、大丈夫です。
自分のことは自分で出来ますわ。」
断った。
「そう? 何かあったら言ってね。」
「はい、継母様。」
継母様は不思議そうにそう言った。
今では、あの判断は正しかったと思う。
ルーラが辞めてから一週間が経ったとき、継母様に呼ばれた。
お父様が仕事で出ている日だった。
「どうされましたか? 継母様。」
「実は、先程使用人たちの新しい制服が届いたの。
よかったらこれを着て、感想を聞かせてくれないかしら。」
そう言って継母様はメイド服を私に渡す。
「もちろんです。」
その日から、継母様はメイド服を私に着せるようになった。
私は日に日に疑問を募らせつつも、継母様の言うとおりにメイド服を着た。
それはだんだんエスカレートしていって、お父様が帰るまで着ているように言うようになり、使用人として働くよう言ってくるようにもなった。
私は従った。何か継母様に考えがなるのだと思ったからだ。
今はあれを後悔している。
そしてある日、私は暖炉の掃除をしながら継母様に尋ねた。
「どうして、私にこのようなことをさせるのですか?」
と。
すると継母様は、堪えきれなくなったと言わんばかりに、笑い出した。
「!?」
「どうしてって、まだわかってなかったの?」
嘲笑うような目を、継母様は私に向けながらそう言った。
「貴女が、平民の子だからよ、シンデレラ。」
「え…?」
今までの継母様と別人なのではないかと思ってしまうくらい、継母様の態度は豹変した。
「どういうことですか…?」
「そのままの意味よ。
全く、やっぱり平民の子は物わかりが悪いわね。
私と同じように、この家で貴族として振舞っていて、旦那様の愛を私達以上に受けていると考えるだけで、反吐が出るわ。」
継母様は吐き捨てるように言う。
「で、では、私にこのような雑務をさせているのは…。」
「そう。貴女がその格好の方がお似合いだと思ったからよ、シンデレラ。
本っ当に似合っているわ、シンデレラ。」
私は、絶望した。
今まで信じていた人に裏切られた、そう感じた。
でも、私の味方をしてくれる使用人は、慰めてくれる人は…一人もいない。
そうか…、継母様は私を孤立させるために嘘の証拠を用い、ルーラを追い出したんだ…。使用人を新しく入れたのは、自分の味方を増やすため……。
この屋敷の者は、皆継母様の味方なんだ……。
そのことがわかり、私はやっとルーラの言ったことの意味が理解できた。
【これから、色々、大変なことが起きるかと思います。
それでもどうか、生きてください。】