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シンデレラ 〜馭者は〇〇でした〜  作者: あぷりこっと
4/20

4.始まり

 お父様が再婚されてから1年半が経った。

 先日義妹も産まれ、一層この家は賑やかになった。

 エレン、可愛かったな〜。

 

 おかしいな……。

 私は時計を見て、そう思う。

 もう、お菓子の時間。

 ルーラがいつもお菓子を持ってきてくれる時間。

 今まで持ってこなかったことはなくはないが、そういう時は事前に言ってくれていた。

 今回はそれがない。だからおかしいのだ。

 トントン

 続き部屋のドアをノックする。

 ? 何も返って来ないってことは、いないのだろうか。

「ルーラ? 入るわよ。」

 ガチャ

 やはり、ルーラは部屋にいない。

 お菓子を厨房に取りに行ったからいないのだろうか。

 だとしたら、まだ私の所に来ないのやはりはおかしい。

 私はとりあえず、厨房に行くことにする。

 

 継母様(おかあさま)がここに来られてからまずされたことは、新しく侍女を雇うことだった。

 この家には元々、ルーラと料理長、それと数人の侍女がいるだけだった。

 それだけだと、侍女たちの負担が大きいのではないか、そう継母様が言われたのだ。

 使用人思いの奥様─家の中での継母様への評価はかなり高かった。

 私もそう思う。

 ほんと、お父様はいい人と出会えたな。

 

「違います! 私は誓ってそのようなことはしていません!!」

 厨房に向かう途中、執務室から叫び声が聞こえる。

 この声は、ルーラ!?

「嘘をつくと、罪が更に重くなりますよ、ルーラさん。」

 今の声は……継母様?

「罪…ってなんのことですか?」

 私は部屋に入る。

「エラ。」

 お父様と継母様が少し驚く。

「すみません、立ち聞きしてしまいました。」

「構わないわよ。このことは、エラにも関係があるのだから。」

「……、どういう、ことですか。」

 なんとなく、予想はついている。

 でも、そうであって欲しくない。

 そう思いながら、私は訊く。

「ルーラが貴女を陥れようとしていたのです。証拠もありますよ。」

「!? ルーラはそんなことをする人ではありません。

 何かの間違いです!!」

「可哀想に、貴女は今まで騙されていたのよ。

 でも大丈夫、今日この娘は追い出すから。

 辛いでしょうけど、貴女のためなのよ、エラ。」

「違います、違います!!

 ルーラは私を大切に、まるで本当の母親のように育ててくれました。例え私が悪さをしたとしても、決して見捨てませんでした。私の血のことで、何か言うようなことも……!

 ルーラは、ルーラは…!」

 次の言葉を言おうとするけど、涙が出るだけで、言葉は出てこない。

「可哀想に、エラ……。

 でも、証拠もあるんだ。レギーナの言っていることは本当なんだよ。」

 お父…様まで……。

「レギーナ、ありがとう。

 君のおかげで、エラを守ることができたよ。」

「妻として、母として、当然のことをしたまでですわ。」

 駄目だ、お父様は継母様のことを信じ切っている……。

 ルーラは、もう諦めてしまったのか、その場で項垂れている。

「ルーラ、お前は今から部屋に行き、荷物をまとめたらこの家から出なさい。

 二度と戻ってこないように。」

「かしこまり、ました……。」

 ルーラは部屋を出る。

 私に、私に、もっと…

「エラ、辛いだろうが、必要なことなんだ。

 わかっておくれ。」

「……、わからない……。」

「え?」

「わからないわ、お父様!」

「! エラ!!」

 私は執務室を飛び出し、ルーラの部屋に行く。

 ガチャ

「ルーラ!」

 私はドアを開け、数秒立ちすくんだ。

 元々物が少なく、寂しかったルーラの部屋がより一層物がなくなっていたからだ。

 本当に今日出るのだと、実感させられる。

「お嬢様。駄目ですよ、来ては。」

 そう微笑んだルーラは…とても、寂しそうだった。

 私は堪らなくなり、ルーラに抱きつき、小さな子どものように泣き出す。

「ごめん、ごめんなさい。

 私、貴女を守れな、かっ……っ……」

 少しの間、ルーラは驚くが、すぐにふわっと笑い、私の背に手を回す。

「お嬢様の所為ではありませんよ。」

 ルーラが優しく、そう言う。

「これから、色々、大変なことが起きるかと思います。

 それでもどうか、生きてください。」

「うん、うん……」

 私はその本当の(・・・)意味を考えることなく、頷いた。

「お嬢様、9年間、ありがとうございました。」

 ルーラの声は、震えていた─。

 

 ルーラが家を出た後私は、自分の部屋に引きこもり、ルーラの出た外をただただ眺めていた。

 必ず、またルーラに会おう。

 私は、家の前の道を通る業者の馬車を眺めながら、そう思った─。

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