20.〜馭者は〇〇でした〜
俺は、何を言おうとしていたんだ……。
俺は馬車を走らせながら、心の中で頭を抱えていた。
どう考えても、おかしいだろう。馭者が虐待を受けている子爵令嬢を助けようとするとか。何もできないに決まっている。
─馭者ならだが。
いやいや、今更そんなことはできない。
今までこれで通してきたんだ。これからもそうする。
俺は無意識のうちに首を振り、己の考えを否定した。
というか、なんであんなことしたんだ? 俺。
今日みたいにこの格好で出たのは初めてではない。というか、始めてからかれこれ3年になる。
3年も続けてたら、ミスって怪我をしたことだって何回もある。手当しようかと言われたことも。でも全て断ってきた。なのに─。
どうして今回は断れなかったんだ…?
シンデレラが強引だったから…? いや、今までにもっと強引だった奴がいたな。
善意で動いてくれたから…? いや、今までにもいただろ、それこそ。
俺が、シンデレラに同情したから…? それはないか。今はしているかもしれないが、シンデレラの過去を知ったのは手当の後だ。
……、俺が、シンデレラに惹かれたから……?
そんなことが頭に浮かび、俺は顔が熱を持つのを感じる。
いやいや、そんなわけないだろ。
いくら、この国では珍しい、透き通るような金の髪で、宝石のような緑の瞳をしていて、その母のように目を引くような美しい顔立ちをしていても─平民の子であることには変わりないし……。
そう思うが、もう一人の自分が言い訳はするなと突っ込む。
案外俺、面食いなのかも……。
【王子に一言謝りたいからなの。】
─最初は本当に顔が気に入ったからかもしれないが…今はそれだけではないかもしれない。
13年も機会を窺ってたとか、律儀にも程があるだろう。
俺の口から、小さな笑いが漏れる。
普通、そこまできたら諦めるか忘れるかするだろうに。
だから俺は─
「お帰りなさいませ。」
俺が王城に再び帰ってくると、今回の舞踏会の計画者である公爵が、侍女頭と共に出迎えてくれる。
「ただいま。舞踏会はどうだったか?」
「はい。無事に終わりましたよ。……貴方様が来られなかったことを除いて。」
「ははは、そう言うなって。」
「笑い事ではありませんぞ!
今回は未来の王太子妃を選ぶための大切な」
「はいはい。」
俺は面倒になり、軽く流そうとする。
「殿下!」
「わかったって。
つまり、俺がその未来の王太子妃とか言うのを連れてくればいい話だろ?」
「!? 適当ではなりませんよ!?
せめて今回の舞踏会に呼ばれた方の中からお選びに」
「わかってるって。」
あいつは今日の舞踏会の招待状を持っていた。不足はあるまい。
「疲れたから俺はもう寝る。後のことは任せたぞ。」
「あっ! 殿下!!」
俺─リツルの本名はリアム・ラース・アルノルト─この国の第一王子である。
─シンデレラ 〜馭者は王子でした〜─
お久しぶりです、あぷりこっとです。
最近忙しく、なかなか後書きに手を出せなかったのですが、流石に今回は…ということで、書かせていただいています。
これで、この作品のタイトルの伏線を回収できましたね。思ってたより時間がかかりましたが、この日を迎えられて良かったです(笑)。
実は最初、今回のサブタイトルにネタバレが含まれていたんです。流石に、どうかな〜と悩んだ末、こんな感じになりました。
ネタバレも少なく、いい感じになったと感じられていたら幸いです。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
また次回、お会いしましょう。
バイバ〜イ!