表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シンデレラ 〜馭者は〇〇でした〜  作者: あぷりこっと
19/20

19.帰り道

 ゴーン ゴーン…

 12時の鐘が、帰りの時刻を知らせる。

「あ、行かないと。」

 私は美味しかった食事に別れを告げ、舞踏会を後にした─。

 

「お待たせ、リツル!」

「ちょうど僕も着いたところです。」

 リツルがにこやかに私を迎える。

 私が城から出てきたとき、リツルの馬車は門の前に停められ、リツルは扉の前で待機していた。

 完璧である。とても服を売る馭者とは思えない。

「では、帰りましょうか。」

 リツルが馬車までエスコートしてくれる。

「あのさ…、リツル。」

「? 何でしょう?」

「本当に服売りの馭者…?」

「はい。もちろんでございます。

 シンデレラ様は服売の馭者がここまで紳士的な訳ない…と思われておられるのかもしれませんが…」

 !?

「私はお貴族様(・・・・)の服を売る仕事をしています。

 ある程度のことは、わきまえておりますよ。」

「あ、なるほど。」

 確かに、リツルに渡されたのは貴族がよく着るドレスだった。だったら、ある程度の作法はわきまえているだろう。

 ……、だとしたら…出会ったときの態度は……?

「お乗りください。シンデレラ様。」

「ありがとう。」

 リツルが荷車のドアを開けてくれる。

 私が乗り、ドアを閉めると、リツルは流れるように運転席に座り、馬車を走らせ始めた─。

 

「それで、どうしでしたか? 舞踏会は。」

「う〜ん……目的は果たせなかったけど、楽しかったわ。」

「そう、ですか……。」

 リツルがなぜか、気を落としたような…申し訳なさそうな…そんな声を出す。

 ?

「……楽しかったと、言うのは?」

「あのね、部屋の中に置かれていたお食事が、驚くほど美味しかったの!

 つい、食べすぎてしまったわ。」

「それはそれは。楽しめたようで良かったです。」

 リツルがクスクス笑う。

 さっきのは…気の所為、かな?

 

 それから私達は他愛のない話をして─あっという間に、帰宅した。

「そろそろ着きますよ。」

「あ、うん。」

 正直、帰りたくない。

 夢のような一時だったな〜。

 できることなら、ずっと

「ここに…」

「シンデレラ様?」

 あっ、口に出しちゃった…?

「ごめん、何でもない。」

 私は笑って見せる。もしかしたら、笑えてなかったかもしれない。

 リツルはちらりと振り返り、痛ましそうな顔をして、前を向く。

「もし、もしですよ。僕が…」

 リツルはそこまで言うと、言葉を留め、そして、口を閉じた。

「なんでも、ありません。」

 リツルはそう、静かに言う。

 もしかしたらリツルは、力になりたいと言おうとしたのかもしれない。

 でも、リツルは服売の馭者で私は子爵令嬢。

 そんなの、不可能と行っても過言ではない。

「ありがとう。気持ちだけ受け取っとく。」

 そして私は、家に帰った─。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ