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シンデレラ 〜馭者は〇〇でした〜  作者: あぷりこっと
17/20

17.会いたい理由

「そして、その子供が私─エラ・グレイスなんだ。」

 驚いて振り返った馭者に、私はにっこり笑って見せる。

 馭者は何か言おうと口を開いた後、何も言わずに再び前に視線を戻す。

「エラ・グレイス……─シンデレラは偽名、ですか?」

「いいえ、私が継母様たちから呼ばれている名前。

 エラ・グレイスは今日は舞踏会に行かないから、けじめ…みたいなものかな…?」

「そう…ですか。」

 リツルは前を向いたまま、呟くようにそう言う。

「だから、本当に今日は舞踏会に行けると思ってなくて。

 リツルにこうして連れて行ってもらえて、私はとっても嬉しいんだ。ありがとう。」

「……どうして」 

 笑って礼を言うと、リツルがまた呟くように言う。

「え?」

「どうして、舞踏会に行きたいと思われたのですか?」

 その声は、どこか寂しそうだった。

 どうして、そんな声で言うの…?

「それはね、王子に一言謝りたいからなの。」

「謝りたい…?」

「うん。」

 

 私が4歳のときに、一度だけリアム殿下にお会いしたことがあるの。

 あの日はお父様に連れられて初めて王城に入ったんだ。

 幼かった私はどういう場所がよくわかってなかったけど、少しワクワクしてたわ。

 お父様が陛下とお話しをしているときに、殿下とお会いしたの。

 でね、殿下にこう言われた。

「おいお前、僕が遊んでやるよ。」

 って。

 それで私、びっくりしちゃって。ちょっと前に言葉は考えて使いましょうって、乳母に言われたばかりなのもあって、私

「そんな上から目線のことを言ったらダメよ!」

 って言っちゃったの。

 帰りの馬車の中で、あの人はこの国の王子だったって知ってね。そのとき初めて後悔したんだ。

 それからずっと謝る機会を探してたんだけど……気づいたら、13年も経ってしまっていた。

 だから、私は舞踏会に行きたいと思ったの。こうしてリツルに会えて、本当によかった。

 ……まぁ、殿下はそんな昔のことは忘れておられるだろうけど。

 

「それに許してくださるかもわからない。」

 これはただの自己満足かもしれない。謝って、自分の枷をなくしたいのかもしれない。

「ぼ…殿下なら必ず許してくださいますよ。」

 そう、リツルは私を励ましてくれる。

 でも、なんでだろう…どこか傷ついたような……、そんな声をしていた気がした。

「どうして、そんなことが言えるの?」

「さぁ、どうしてでしょうね。」

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