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シンデレラ 〜馭者は〇〇でした〜  作者: あぷりこっと
16/20

16.物語

「どうしてシンデレラ様は、王城に行こうと思われたのですか?」

 ギクッ

 私は今日、行けることを心から喜んでいた。だから、リツルにそう尋ねられ、返事がすぐにできなかった。

「シンデレラ様? もしかして、訊いてはいけないことでしたか?」

「あ、えっと…」

 どうしよう。

 真実を話して、もしリツルが他の人に話したら…と考えると、真実はできるだけ隠したい。

 だが、私はあまり嘘が得意ではない。

 どうしようか…といつまでも悩んでしまえば、気まずい空気になることは間違いないし……。

 ふと、私はリツルのことを考える。本当にリツルは周りの人に言いふらすような人だろうか…と。

 彼は私と会った時、身分を気にして逃げ腰になっていた。

 今も、私に質問しておきながら、やはりなしでと言いそうな雰囲気が漂っている。

 真実を話すのも一つの手か、と私は思ってしまった。

「あの、やはり今のは」

「うん、話すよ。」

「え?」

 私の応えに、戸惑いの声が返ってくる。

 今まで相談する人は身内(・・)に一人しかいなかった。

 他人(・・)に相談すると気分が楽になると聞いたことがある。私も楽になりたかったのだと、後に私は気づいた。

「リツルは知ってる? 平民と子爵の結婚の話。」

「…はい。踊り子の女と貴族である子爵が結ばれる話ですよね?

 あれは本にもなっているので、流石に知ってます。」

 

『女は、踊り子(平民)だった。

 男は、子爵(貴族)だった。

 ある日、(子爵)はお忍びで城下の祭りに行った。

 (子爵)は、舞台の中心で一輪の花のように、美しく可憐に舞う(踊り子)に心を奪われた。

 その女(踊り子)に、(子爵)は恋に落ちた。

 (踊り子)(子爵)と共に過ごすうちに、好きになっていった。

 2人は恋仲となった。

 でも、周りは反対した。子爵(貴族)踊り子(平民)が…と。

 でも、2人は諦めなかった。

 最終的に(子爵)の仕事の上司であった公爵のおかげで、結婚できたが、貴族の位というものは、(平民)には重すぎた。

 度重なるストレスに耐えきれず、(平民)は、日に日に弱っていき、息絶えた。

 でも、(子爵)には悲しんでいる暇は、あまりなかった。

 女が残してくれたものがあったから─。』

 

「あの話には、続きがあるの。」

「続き…ですか?」

 この物語は、子爵が愛を持って子供を育てる─そんな美談で終わっている。

 でも、本当は─そこで終わらない。

「その後(子爵)は、上司から一つの縁談話をもらった。

 (子爵)はその女に惹かれ、再婚した。

 だが、子爵は気づいていなかったのだ。その女の真のすかたに─。

 女は平民の娘である(子爵)の子供を、虐めるようになった。女の娘も母の真似をした。

 子供の信頼できる人は徐々に削られ、使用人の真似事までさせるようになった。」

「─そんな続きがあったのですね。」

「うん。」

「でも、どうして今そのようなお話を?」

「……実はその(子爵)が私の父でね。」

「え?」

「そして、その子供が私─エラ・グレイスなんだ。」

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