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御屋敷

アリサがその建物をぽかんとした顔で見ていた。

 白亜の城と言ってもいいその城は見事に荒れ果てていた。

 目を射るほどに真っ白だったはずの壁はあちこちひび割れくすんでいた。

 そう言えばこの道を通る途中の馬車を見送る近くの村の村民たちは妙な目でこちらを見ていた。

 窓からボロボロになったカーテンがずり下がっているのが見えた。

「あの、これ」

 それ以上言えなかった。

「お化け屋敷って言いたいの」

 ネリーの言葉に納得するしかなかった。

「なんでここまで」

 実家が落ちぶれて格下の家に嫁ぐしかなかったという奥様だが、ここまで行くまでにどうにかならなかったのだろうか。

「この家と庭しか領地は残ってないの、あとは全部切り売りしてしまったわ」

 ころころと奥様は笑った。

「そして最後に私が身売りしておしまい、この家は私の持参金なの」

 はっきり言って巨大なガラクタだ。壊して更地にするのにも金がかかるし。その家を奇麗に直すにはもっと金がかかるだろう。

「これ、住めるんですか?」

 アリサはぐらぐらする気分でその建物を見た。

「これから掃除に決まっているじゃない」

 ネリーが無情にそう言った。

 アリサは覚悟を決めて、扉を開けた。

 こもった空気が漂ってきた。

 ゲホゲホとせき込んで慌てて自分の荷物から布を取り出して顔を覆った。

「奥様、空気の入れ替えが終わらないと入ることができませんよ」

 そう言ってアリサは顔を覆った状態で中に入った。振り返れば埃に足跡がくっきりと残っている。

 そして向こうの壁にある窓を開けて風を通す。

「はたきはどこだ」

 はたきと箒雑巾は入り口近くに置いてあった。

 アリサは適当にはたきを使って埃を落とし、それからざっと箒で床の埃を集めた。

「水はこっち汲むでのよ」

 中を覗き込んだ奥様が桶を手に取りそのまま水を汲みに行く。

「奥様、私がやりますから」

 そう言ったがいいからいいからとそのまま井戸から水を汲んでいた。

「お母様何してるの」

 双子が母親のスカートにまとわりついている。

「危ないからここに近づいちゃだめよ、ネリーこの子を放してちょうだい」

 ネリーが子供たちを両脇に挟んでアリサのところに連れてきた。

「奥様は放っておきなさい。あの人は使用人も雇えなくなって自分で掃除洗濯料理をしていたのよ、そのせいでここに帰るとその時分に戻ってしまうの」

 桶に汲んだ水で雑巾がけを始めようとする奥様をどうしてもそのままにしておけずアリサはぞうきんを奪い取った。

「私がやります」

「そう?」

 奥様はそう言って引き下がった。

 取り敢えず人を入れてもいいなと思う程度に雑巾がけを終えたアリサは親子三人で草むしりをしている姿を見て顎を外しそうになった。



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