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タブー

 アリサは奥様、シンシアとともに馬車に乗った。

 子供たちは子供たちだけでネリーと一緒の馬車だ。

 そして、アリサは聖書を渡された。

「そう言えばアリサはこの国のことをあまり知らないわよね、だから失敗しないように覚えておきなさいな」

 そう言われて分厚い聖書を渡されアリサは困惑した。

 最初から読んだら読み終えるまでに数カ月かかりそうだ。アリサの古語は喋る方はともかく読み書きとなると周囲の者よりちょっと遅れている。

 読めるけど、苦手意識が先に立つ。

 しかし、失敗しないようにとなるといったいどのあたりから読めばいいのか。

 いわゆる宗教的タブーに触れないようにという意味だろうが、そうしたトラブルは外国に出稼ぎに出た知り合いからよく聞いたことがあった。

 アリサは悩みつつ最初のページを開いた。

 最初はありきたりの天地創造の物語だ。神がその手で大地を創りそこから生き物が生まれた。それが海から泡が固まり生き物になったり、大地の削りくずが生き物になったり、まず植物が生まれそこから人間が生まれたりそのあたりは国によって違う。

 だが、そのあとから妙に経路が変わってきた。

 それはかつて混乱の時代を遠方から来た救世主が救い、そしてそれによって教化され、正しき神の教えに帰依たというくだりだ。

 それがこの国で最も敬愛されている聖女マリアンヌだった。

 聖女はこの国の過ちをすべてただし、聖女に救われた民はその罪を償うべく聖女とその配下たる貴族に使えた。

 そして聖女の教えに逆らうことは罪。

 そしてその教えに関することがぎっちりと二十以上の項目にわたっている。

 その中にはなんだこれと思われるものもあった。

「あのお、これ、厳密に守っているんですか」

 思わず真顔になる。それは本当にこまごまとした、ここまでやるかと思われるものもあって、この国にいるなら、自分もそれを守らなければならないのだろうかと思わず頭を抱えた。

「今は厳密に守られていないわ」

 そうなんですか、良かった。

 大きく息をついた。

 しかし、そこまで聞いてふと思う。

「昔は守っていたのに今は守っていないということは」

 そう、シンシア様の夫は黒々とした髪をしていた。

「まあ、数十年も前からの話なんだけどね」

 いわゆる下級貴族や裕福な庶民が貴族に反旗を翻したということか。

 アリサは項目をいくつか思い出した。かなり庶民に厳しい内容が盛りだくさんだったように思われる。

 アリサは、結構な無茶振り多かったし、それにまあいろいろと書いてないところにもあったんだろうなと思うし。そんなことをつくづくと思った。

「それにしてもなんで、聖典に海なんて書いてあるんですか?」

 内陸国であれば海に対してタブーなどあるはずがないのに。海にかかわるな海が災いの身元だと、そのためこの国の貴族は真珠すら身に着けない。




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