宗教とは
アリサは何故かルカとお茶を飲むことになっていた。
「なんで?」
お茶の入ったカップを手にアリサは呟く。
「同僚同士親交を深めろってことかな」
アリサにとってはやっぱり意味不明だ。
「お前、ここ数十年のこっちの歴史とかわかってる?」
そう言われてアリサは首をかしげた。ただあまり平和だったんじゃないだろうなと思っていただけだ。
「ああ、わかった、じゃあ簡単に教えとくわ、この国は貴族とこの国の国教であるアリステア真教の司祭が支配する国だった。そこまでは?」
「それ、普通のことでは? そりゃ僧侶はそこまで権力持ってないけど貴族が支配するっていうのは当たり前でしょ」
「それはそうなんだが、そっちの司祭はどう言う立ち位置なんだ?」
「そうね、まあ学校を作ったり公共事業に寄付を募ったり? 後、貴族と平民の折衝くらいじゃないかな」
アリサは指を折りながら答えた。
「ああ、それはまた、こっちでは桁が違うんだが」
「そうなの?」
「聖職者は普通は平民と話なんかしない、貴族と同列ってことになってる。独自の政治体制を持っていてもう一つの国と言ってもいい」
その状況はアリサに想像が余る。
「総本山が王宮扱いなの?」
「総本山?」
アリサの母国は山岳国であり、偉い人は標高の高いところに住んでいるのが普通なので聖職者も偉い人は普通に国で二番目に高い山の中腹に住んでいる。一番高い山は過酷過ぎて人間が住むことはできない。たまに修行僧が山にこもるか、さもなければ武者修行の傭兵志願者が修行の一環としてしばらくこもっていることもある。
アリサはそこまで過酷な山にこもったことは無いが、あまり過酷ではないところでは合宿のように暮らしたことはあった。
そんなことを話すとルカの顔が引きつった。
「いや、修行僧と修行中の傭兵が一緒に山籠もりって」
無秩序にもほどがある。
アリサはそれがどう違うのかわからなかった。
修行は過酷な状況を乗り越えるものであり、国で一番過酷な場所で修業したい人間が集まるのは当たり前だと思う。
「お前のところの宗教家って武闘派なのか?」
宗教家すなわち武闘派とは限らない、まあやたらと筋骨隆々とした僧侶は普通にいたがそれが普通ではなく普通の体格の人は多い。
「とにかくだが」
ルカはすでに疲れていた。
「お前の母国の宗教界のことは忘れろ、多分この周辺国で一番普通じゃない」
がっしりと肩を掴まれて力説された。
カトリックとプロテスタントぐらい構造が違います。