愛するあなた様への嘆願書
拝啓
日が長くなり、クーラーが必要になることも増えてまいりました。
いつも大変お世話様になっております。
この度、突然お手紙を差し上げましたのは、あなた様とこれからも共同生活を行っていくにあたり、いくつか改善していただきたいことをお伝えするためです。どうか何卒寛大な御心で検討して下さいますようお願い申し上げます。
いきなり下の話で申し訳ないのですが、トイレ砂は極力遠くまで蹴飛ばさないようにしていただけないでしょうか? 不意打ちで足つぼマッサージを喰らうと、とても痛くてツラいです。また、熱心に砂掛けをなさるのはよいのですが、たまに勢い余ってブツの方がトイレから転び出ていることがございます。まさにフン末転倒ですので、どうかお気を付けください。
レディーに年齢の話題を振るなんて大変失礼かとは思いますが、あなた様も人間であればそろそろ還暦になられる頃かと存じます。水をガブガブ飲んだ後に全力疾走すると気分が悪くなるということは、いい加減覚えておいて下さい。せめてキャットタワーの天辺やベッドの上で盛大にリバースなさることだけは絶対にお止めください。後始末がとても大変です。
爪とぎをしていただくための商品を各種取り揃えておりますが、どうして全てを悉く無視して柱や壁紙を目の敵のように標的とされるのでしょうか? 私が電話中などで手を離せない時に、こちらを見ながらドヤ顔でガリガリなさっているのは完全にわざとですよね? 特にドア枠の戸当たりは、もう瀕死です。
残念ながら天候を操る力など私にはございませんので、曇りや雨で日向ぼっこが出来ないからといって、窓の前で不満げに鳴かれても、恨めしそうに睨まれてもどうすることも出来ません。大人しく諦めて下さい。
毛繕いは決してあなた様への嫌がらせではありません。健康と体調管理、それから身だしなみのためのケアです。特に今の時期は撫でるだけでもフワフワとタンポポの綿毛ように抜け毛が飛び散ってしまいますし、お腹の中に毛球が溜まるのはお嫌でしょう? どうか引っ掻いたり噛みついたりしないで下さい。
これは致し方ないことなのですが、暑くなってきたからか膝の上に乗って下さらなくなったことが寂しいです。早く冬がくればいいのに。
最近、帰宅した瞬間を狙ってのガチ脱走を試みられることが無くなりましたね。寝ぼけている時や機嫌が悪い時によく炸裂していた、噛みつきからの本気の連続両脚蹴りも。勿論嬉しいことではあるのですが、どこか体調が悪いわけではありませんよね?
あなた様は、あまり甘えて鳴くようなことはなさいませんが、どうか本当に苦しいときだけは、きちんと教えてくださいね。
どうかこれからも健康に気をつけて、ずっと長生きして、いつまでも私にあなた様のお世話をさせてください。
敬具
あなた様の親愛なる忠実な下僕より
田中チビ様