01 最果ての世界
新連載です。
よろしくお願いします。
世界の最果て。
石造りの建物が並んでいる、広大な遺跡。
碁盤の目状に伸びている街路に沿って立ち並ぶ、多くの家々。
その街の中央を横切る大河は広大な海に流れ込んでいる。河の両岸を繋いでいたのであろう大きな橋の残骸や、港の跡なども窺える。
おそらく、この都市は海の外や大河の上流から来る物資を集積し、また送り出すための中継点、つまりは港湾都市として栄えていたのだろう。
その中でもひときわ目立つのが、小高い丘の上に聳え立つ、白亜の城。
かつてこの地に住んでいた人間は、この城を天へと連なる神聖な建造物だと思ったに違いない。
権威の象徴として、また外敵から攻め込まれた時の拠点として、その城は大きな存在感とともに佇んでいたのだろう。
しかし。
今ではその全てが無残にも壊れ、崩れて、廃墟と化していた。
都市の周囲を囲う城壁のようなものも。
人間が住んでいたであろう、石造りの家々も。
荘厳な外見によって人間から畏怖と尊敬を集めたであろう、丘の上の城も。
全てが破壊され、今ではその残骸が残るばかりであった。
何者かが極大の爆発魔法でも放ったのか、それとも巨大な隕石が降ってきたのか。
街の多くの建物には黒い焼け跡が残っており、廃都市の隣接部分では地面が陥没し、大きな池が出来ていた。
遺跡に面したその池は、陽光を受け、数多の光点を水の上に浮かべ、明滅を繰り返していた。
繁栄のあるものは、いずれ崩壊する。
終わりがあるからこそ、始まりがあり、過程がある。
一度始まりを迎えたものは、時間とともに終わりへと歩を進め、前に戻ることは許されない。
そう語りかけるような雄大な景色は、長い間誰の目に触れることもなく、ただそこに在るだけだった。
それは、静かに終焉を待っているかのように。
そんな都市の廃墟に、城の残骸のある丘の中腹に、一つの祠があった。
都市の建物と同じように石造りのそれは、長い年月で風化し、また焼け跡も付いてているが、それでも彫り込まれた当時の文字だけは、しっかりと残っていた。
『元始の魔獣 ここに祀る』
☆ ★
人間の姿が失われて久しい閑散とした廃墟に、しばらくぶりに人間が訪れていた。
丘の中腹にある祠の前に、一人の男が佇んでいた。
黒いフードを目深に被り、暗色の外套を羽織った背の高い男。
灰色のスカーフで口元を覆い隠し、素早く周囲を警戒する様子は、さながら陰の世界を生きる者のようだった。
祠の傍に立つ彼の目前には、ぽっかりと地面に穴が開いていた。
深淵に続くかのような、底の見えない円形の穴。
小さな水溜まりくらいの大きさのそれは、漆黒の色に染められていた。
ふと、風が吹く。
風を切るような音が静寂の中に響く。
地面から舞い上げられた砂が吸い込まれるようにして深淵へと沈んでゆく。
彼は頷いて、小さく呟く。
「……もうじき、時が来る」
彼は、祠の前から立ち去った。