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第四十五話:ギルド長のおススメ



「あらぁー! レオちゃんにリゼちゃん、お久しぶりねぇ~」


 翌日の昼を少し過ぎた頃。


 二人が冒険者ギルドを訪れると、上機嫌なギルド長マルヴァリン・ガンドルーフに出迎えられた。


「お久しぶりですギルド長。先日の事後処理、お疲れ様です」


「ふふ、ありがどー。アレから周辺諸国に出向いて都市の安全性とかギルドの態勢とか説明なり弁明なりして、ようやく今朝戻って来たの。もークタクタのクタ!」


 マルヴァリンは肩を竦めるが、小さく「まぁ、有益な事もあったんだけどねぇー?」と、呟いて、パンと手を鳴らして表情を切り替える。


「それよりも、正式にパーティ組んだんだってね。おめでと」


「はい、お陰様で……。二人だけですが『アイギアス』と」


 隣のレオンの顔を見上げたリゼッタは、彼に微笑まれて頬を赤くする。


「やっだぁ~、ラブラブじゃない。英雄の持つ神器『聖なる乙女を守る盾』ね、アナタ達にピッタリよ」


 所で、と。


「もしかして、今からダンジョン? 今日は大分ゆっくりなのねー?」


「あぁ、いえ。今日は探索では無く――」


 リゼッタは咳払いをして、本題を切り出した。


「先日、換金をお願いした『黒い剣』の買い戻しは可能ですか?」


「勿論、OKよ。あの時はリゼちゃんの口座に入れてたけど、引き落とすのはどっちからにする?」


 その問い掛けに、「えっと……」と口籠る彼女に変わり、


「分配が手間になるから、今は一括にさせて貰っているんだ」


 レオンが答えた。


「ちょっと、ヤっダっん! 新婚みたいな事してるー!!」


 キャー! と甲高い男性の奇声がお昼時のギルドに響く。


 実際、信頼し合うパーティの場合は、それぞれの報酬を一括でまとめ各々がその都度必要な分、取り出す形にする事もある。


 二人の場合は、お互いがお互いの為に自分の口座から引く事もままあったので、『だったら一つで良くね?』と軽い気持ちで申請をしたのだが、普通、男女二人組の冒険者が口座を合わせる時はそれこそ『婚姻の証』とする流行が密かにあった。


「いえ、彼とはまだコレからで――」


コレから(・・・・)があるのねー! リゼちゃんファイトー!」


 キャッキャッとはしゃぐギルド長にリゼッタが涙目になった。


 見かねたレオンが割って入る。


「あんまり、俺の相方を揶揄わないで貰いたいんだが?」


 レオンとしても、リゼッタとの“コレから”は気になる所だが、彼女から明確な返事がない今、その辺り割とデリケートなので、そっとしておいて欲しいのだ。


「あら、ごめんなさい。あんまり初々しかったから、ついね。もう野暮な茶々は入れないわ」


 だけど、とマルヴァリンは父の様で母の様に優しく微笑んだ。


「貴方達のコレから――大事にね」


「勿論」


「はい」


 二人の重なる答えにマルヴァリンは満足そうに頷いた。


「それじゃ、その『黒剣』を用意するわね。アレは魔力適正が高いし強度も十分。まさに”磨けば光る”って感じ?」


 しかし、マルヴァリンはわざとらしく眉を顰めた。


「ただ……やっぱり、その磨くのがネックなのよねー。改めて『強者たちの集い』に見て貰ったんだけど、研ぐのに良い砥石を五、六個使い潰さないといけないらしいわ。試しにお願いしてみたら、ソッコーで拒否られたし」


「では、加工は無理なのでしょうか?」


 不安そうなリゼッタの問いに、「だ・け・ど♪」とマルヴァリンは声を弾ませる。


「優秀な職人は他にも居るのよー? 良い“目と腕”を持って、先代からその業と想いを受け継いだ、とっても良いでね。今は、時期的に忙しいと思うんだけど、案外、義理堅い所もあるから私の紹介なら、話位は聞いてくれる筈よ。それに仲良くなれたら、“とびっきりの一振り”を打ってくれるかも」


 (彼女)は、ウィンクをして、



「――『最高の剣』って奴を、ね」


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