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第二十八話:戦いの後



 ユニークウェポン(黒剣)の正式な所有権が決まり、その換金分をリゼッタ・バリアンの個人の資金としてギルドに預けた。


 ソレは良く見ると、若干質の悪さが気になるもののダンジョン下層で採れるオリハルコンを片手剣風に削り出した様な雑な物だった。


 寧ろ、異常に頑丈な棍棒の方がしっくりくる代物。


 それを真面な“剣”とするには加工に手間が掛かる分、換金時の価値は下がってしまうが、無理に合わない得物を振るうよりは、と了承したのだった。


「――すまん、遅くなった」


「ううん、別に……」


 ギルドの酒場に待たせていたミリンダ・ルクワードにレオン・グレイシスが声をかけた。


「悪いがこいつをヴィルに返してやってくれないか。今のアイツには必要な物だから」


「うん……」


 レオンが短剣を渡すが、二の句は継げなかった。


 ……――。


 僅かな沈黙に、お互いにバツの悪さを感じて先にミリンダが自嘲気味に小さく笑う。


「アンタを追放してから、私達は――ううん。最初から、バラバラだったのかも。今思えば、アンタの言っていた通りにもっと連携とか、相談とか……ちゃんとするべきだったのよね」


「――俺がちゃんとアイツと向き合っていれば少しは違ったと思うんだけどな……」


 大きく息を吐き、


「俺の言えた義理じゃないが、ヴィルを頼む」


「うん。一度止まって、考えるわ。ヴィルがどんな英雄になりたいのか、私達もちゃんと理解して、私自身もどうしたいのか――。こんな事になっちゃったけど、良い機会よね」


 彼女は小さくレオンにお礼を呟いて、ヴィルとライラの居る治療院に向かって行った。


「――――」


 ミリンダを見送るレオンの表情に、リゼッタは気休めだと思いつつも、


「……治癒術師が言うには、彼は負傷していませんが“今までの無理がたたった”様でしばらくは動けないらしいです。ただ、ちゃんと休めば回復すると仰っていました」


「そうか……なら、後は――二人に……」


 答えるレオンはクラリと姿勢を崩してリゼッタに支えられた。


「無理をしているのは貴方も一緒です。今日は、休みましょう――休んで、下さい」


「……ごめんな。――ありがとう……」





「――今は、どうかごゆるりと」


 宿に戻った途端に崩れ落ちてしまったレオンをリゼッタはどうにかベットに運び込んだ。


 疲れてはいる様だが、うなされる事も無いので、ようやく彼女も安心して一息ついた。


 だが、昨日の彼の話を思い出し、妙に痛む胸に手を添える。


 ――孤児。


 リゼッタ・バリアンもその一人ではあるが、レオン・グレイシスとヴィル・アルマークも同じだという。


 辺境、と呼ばれる地域では都会と比べるとその割合は格段に多い。


 賊や魔物に襲われ、小国の小競り合いに巻き込まれて身寄りを失う事あるし、貧しさに捨てられる事も少なくない。


 悲しい事ではあるが、実際に珍しい事では無い。


 逆に、辺境でも裕福で不自由が無い、という方が珍しいのだ。その場合は大抵、“何かに”手を出している程。


 今の世界は、それが当たり前だ。



 ――だからこそ、人は英雄を求める。






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