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勇者召喚が失敗らしいので異世界に転生します  作者: shibatura
第3章 新たなる生命の誕生と新たなる生活
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第56話 魔導士団の遠征演習 前編

 宮廷魔導士団に研修団員として体験入団してから3日目。

 いつも通りの朝を迎え、団員達の執務室へと入る。


「おはようございます」


 挨拶をしながら部屋へと入る。

 そして部屋の中を進み、団員達と挨拶を交わしながら、奥にある扉へと進む。

 扉には張り紙で、研修団員用と張ってあった。

 ここが今の私の居場所となる。

 部屋は元々使われていない部屋だったのを、今回の体験研修の為に改装したのだ。

 部屋に入り、扉にカギを掛ける。

 鍵を掛けて、部屋に盗聴防止の結界を張り、窓には不可視化の魔法を掛けておく。

 こうすれば滅多のことが無ければ、諜報される事は無いだろう。

 準備を整えてから椅子に座り、ミセルに対して試作の通信機を起動させる。

 これは今までの通信機とは違い、特殊な方法で通信内容を暗号化することのできるものだ。

 今回、最初の仕事は、この通信機の実用試験からである。


「あ、あ、テスト、テスト。聞こえていますか?」


 設定を軽くしてから通信に試みる。


『はい。ちゃんと聞こえます、ネリア様』

「声の方はクリアに聞こえている?ノイズとか問題ないかな?」

『はい。問題ありません。』

「よろしい。それじゃ、これから3日程遠征と行ってくるから、その間はよろしく」

『かしこまりました』


 ここまで話してから通信を切断する。

 後はこれで、演習の間に耐久試験と僻地や特殊環境下での性能試験をクリアすれば、報告をまとめて終わりである。

 通信機をしまい、着替えを済ませて、今日から出発する遠征の修吾場所へと向かうのだった。



 集合場所である王都郊外の草原へと着いた。

 集合場所には、すでに部隊の全員が集まっていた。

 部隊の装備は、かなり大がかりなものであった。

 3日程とはいえ、かなりの量である。

 設営道具から拠点防御用の警戒監視機器やら、どこかに戦争でも仕掛けに行くのではないかと思うほどの荷物の量である。


「母上、ただいま到着しました」

「お疲れ様ですね。今回の遠征の内容は理解していますね」

「はい。高濃度魔力下でのサバイバル訓練であると」

「よろしい。それではもう少しで転移するので待機しておいて下さい」

「わかりました。それで、一つよろしいですか?」

「なんでしょう?」

「この量の荷物、必要なのでしょうか?」

「そうね。今回の遠征以外にも、もう一つやることがあるから、その分の荷物も含まれているの」

「そうなのですか」

「向こうに行ったら説明するわ」

「わかりました」


 どうやら、遠征の他にもやる事があるようだ。

 今のところ王国軍部内の情報収集は、そこまでやっていないので知らなかった。

 それでも私に連絡を寄こさないのなら、今のところ報告する程では無いのだろう。

 それとも私が、この遠征に参加する筝が分かっていて直接確認すればいい事であるからも知れない。

 まぁ、そこまで重要なことではないのだろう。

 それか母自身が計画したことかもしれないけど。

 それはさておき、今は遠征についてだ。

 現在、周りでは荷物の最終チャックなどをしている。


「おはようございます。ネリア様」


 そう言って声をかけてきたのは、この宮廷魔導士団の副団長のシエスタ副団長である。


「おはようございます、シエスタ副団長」

「ネリア様は、今日の遠征は何処まで聞いておられますか?」

「詳しいことは何も」

「そうでしたか。それでは簡単な概要だけでも聞かれますか?」

「そうですねお願いします」


 副団長曰く、この森の表層地域での訓練を計画しており、高濃度魔力下での対魔物戦闘訓練とサバイバル訓練が主体だという。

 その他に大量の荷物は、この森の中に特別拠点基地を作るための物資だそうだ。


「こんな感じですね。何かその他に聞いておきたい事はありませんか?」

「大丈夫です。ありがとうございました」

「それでは、もう少ししたら出発するので準備してください」


 という事で、私は事前に教えてもらっていた、行動を共にするチームのもとへと集まる。

 今回は私が入るチームは探索チームである。探索チームは部隊の一番先頭に立ち、部隊全体が前進する際の偵察を担当する。

 それ以外にも、こういった場所の探索を行い、部隊が行動する際の休憩地点などの確保も一緒に行う事となる。

 そして私の役目は、その探索部隊に同行し、案内を行う現地協力者役である。

 現地協力者のため、今回は直接的な戦闘は行わず、部隊に守護してもらいながら目的な地点まで同行するというものである。


「おっ!ネリア様、こちらです」


 そんな声が聞こえてきた。

 聞こえてきた方を見ると何人かの人達が集まっていた。

 顔ぶれから見てこれらが今回のチームパートナのようだ。


「ようこそ、ネリア様。今回あなたと同行する小隊の小隊長を務めさせてもらっています ダーテストです」

「よろしく。私は現地案内担当なので、ほとんど戦闘には参加しないが、何かあったら遠慮なく言ってくれればいいから」

「わかりました。それでは他の仲間を軽く紹介しますね」


 そう言って、順番に軽く自己紹介を行う。

 最初は細身のやせ型の男で、小隊の斥候役であるニクソン。

 サブリーダーで防御魔法が専門のトール・マーソン。

 後衛、支援魔法職のポートニー・ルビソン。

 本来の小隊では紅一点で、治療魔法の使い手であるルビア・ピートニーの4人である。

 それぞれの自己紹介も終わったところで、今後の進行ルートの確認を行う。


「今回は、できるだけ開けた道を案内します。ここを通れば大型の荷物と共に移動しても問題ないでしょう。ただし、途中で一点だけ難所があります。この地点は魔物の通り道なっているせいで襲撃が多い所なので、気を付けた方がいいですね」


 私は、今回の進行ルートについて説明する。


「質問よろしいでしょうか?」


 一通りの説明を終えると、隊長のダーテストが問いかけてきた。


「何かな?」

「このポイントなのですが、リスク回避して遠回りはできないのでしょうか?」

「そうですね。出来ると言えば出来ますが、この荷物だと逆に時間を掛けてう回路を使うのは、お勧めできませんね」

「それはどうしてでしょうか?」

「このう回路は道幅も狭く、あまり隊列は伸ばしたくはありませんね。さすがに、この大所帯で移動するのには向きません」

「なるほど。わかりました。ではこのルートで行きましょう。皆さんも大丈夫ですか?」


 ダーテストの呼びかけに、隊全員肯定の意思を示した。

 これにて確認は終了し、すぐさま準備を整え、装備の最終確認を行う。

 私も案内役とはいえ、私も準備を整えておく、もしもの場合もあるからだ。

 そしてついに出発の時間となった。

 すべての部隊が、母の号令を待つ。

 しばらくして、母が特設に設けられた演説台へと登る。

 全部隊を見渡すと、声高々に宣言する。


「これより、定期遠征演習を開始する。皆、必ず目標を達成するように。以上」

『おぉ!』


 ついに演習が開始されたのだった。


 最初は先行偵察部隊である。我々の隊を含む3小隊が森の中へと入る。

 森の中に入ると、一気に魔力濃度が高くなる。

 この森の入り口では村の中にある、対魔力結界のお陰で、そこまで濃度が高くはないのでが、その範囲を抜けると本来の濃度が襲い掛かってくる。


「はぁ、はぁ、これは聞いていたよりもきついですね。かなり魔力消費を抑えとかないといけませんね」


 とダーテストが愚痴る。

 それもそのはず。この森の濃度は幼子なら確実に魔力中毒に陥る。

 たとえある程度魔力耐性がある魔導士であってもかなりきつい。

 この森に慣れるためには、確実にこの森の中で10年ぐらいは魔力鍛錬をしなければ対応できない程である。

 そして、濃密な魔力の中を進み始めて30分頃経った時、最初の脅威と遭遇する。


「止まれ!奥に強力な魔物がいる。どうやらこちらの事は感づかれているらしい」


 声をあげたのはニクソンである。

 隊の皆は慎重に森の木々を盾に前方の様子を窺う。

 前方の少し開けたところに体長3メートルは超えるキングサーベルタイガーが居た。

 この魔物はかなり厄介で、特にこういう森の中は彼らにとっては絶好の狩場である。

 幸いこの種は単独行動を好むため、まだこちらの方が有利ではある。

 といっても、ここはシャルティスの森である。

 高濃度魔力は普通の魔物であっても、簡単に強力な魔物へと変貌させる。


「気を付けてください。普通の魔物ではありません。かなり強力になっています」


 私が注意をする。

 隊全員が、身を固くする。

 この森では、その濃い魔力濃度のせいで魔法の効きが悪くなる。

 魔力を体内で利用するタイプの自己強化系の魔法ならば問題ないが、どうしても攻撃系魔法は、放出系が一般である。

 そのためにすぐに威力が減衰してしまう為、それなりの威力を持たせるためには交戦距離を縮めなければならない。

 それはこのキングサーベルタイガーとの戦闘においては最悪である。

 特に高機動タイプである魔物に近づくことは、一種の自殺行為である。

 それに対して、こちらは数がそこまでいる訳ではない。

 それに実際に戦闘対応できる人数は更に限られている。

 ただ今回よかったのは、相手がこちらの事をなめて奇襲を仕掛けてこなかった事であろう。

 奇襲を掛けられ、一番弱い支援系をやられていたら、最悪部隊が崩れてしまう可能性があった。

 それがない分だけマシである。


「ポートニーは周囲を警戒して奇襲に備えろ。トールは前面に出て奴の気を引き付けろ。私とニクソンは牽制しながら奴の至近距離から攻撃を仕掛ける。それでいいな?」

『はい』

「よし。それでネリア様はどうしますか?一応、案内役なので特に何かしろという訳ではないですが」


 確かに私から戦闘には参加しろとは言われていない。しかし攻撃には参加するなとも言われているため、主だった事は出来ない。


「そうですね、戦闘には参加できないのですが、軽い支援程度なら問題はないですから。適宜支援魔法を掛けるということで。それと何かあった場合は私も戦闘には参加します」

「わかりました。それではお願いします」


 ということで、戦闘へと突入する。


「私から最初に対魔力上昇を掛けておきますね」


 そして隊全員に対魔力上昇のマジックレジスタンスを掛けておく。

 この魔法の効果は自身のみにしか効かないが、それでも周囲からの魔力に対抗する為に消費されていた魔力を低減できる分、戦闘はしやすくなるだろう。

 魔法を掛けて問題がない事を確認すると、最初にトールが先行して前に出る。

 キングサーベルタイガーもトールに対応するために襲い掛かってくる。

 トールが気を引き付けている間にニクソンとダーテストが挟撃の形を作りながら、魔法弾を繰り出す。

 トールに完全に気を惹かれて対応できないまま、魔法弾がキングサーベルタイガーに直撃する。

 魔法弾が着弾とともに爆裂する。

 その勢いにキングサーベルタイガーは体を吹き飛ばされる。

 ただし、そこは軽い身にこなしで体勢を立て直す。

 そのすきを見て、一気に決着を決めるために、トールが一気に踏み込みながらキングサーベルタイガーに突進を仕掛ける。

 ドンっと大きな音を立てて両者がぶつかる。

 何とかトールは体勢を整える間にマウントをとることに成功する。

 トールが抑え込んでいるうちにニクソンとダーテストが杖の先端に魔力刀身を形成し、両側からキングサーベルタイガーを串刺しにする。


「ギャオー!」


 キングサーベルタイガーの苦痛が混じった咆哮を上げる。

 とどめをさすために、魔力刀身を媒体に、内部に一気に強力な火炎魔法を打ち込む。

 そうする事によって、奴の体から白い湯気とともに傷口から火が上がる。

 これにはさすがに効いたのだろう。咆哮を上げるとことなく、断末魔とともにその体から力が抜ける。

 こうしてキングサーベルタイガーとの戦闘は問題なく終了したのだった。

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