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勇者召喚が失敗らしいので異世界に転生します  作者: shibatura
第2章 学生生活と冒険者生活
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第46話 終結、そして帰国

 魔物を討伐完了し、今は一旦、野営陣地へと全軍を戻したところだ。

 これから一度休息を取った後、私と偵察部隊による最終確認を行う予定だ。


「ネリアス、どんな感じだ?」


 私は今回の戦闘を終えて、ネリアスの状態を確認している所である。


「調子は問題ありません。余計な感覚も有りませんし」

「そうか。レベルの方はどうだ?」

「変わらないですね」

「そうか。ん、もう大丈夫だ」


 視たところなんの問題は無さそうだ。

 最後にレベルに関して聞いていたのは、彼女のレベルが私と同じだったからだ。

 多分だが、彼女のレベルは私とリンクしているようだ。

 それは彼女が私という概念の精霊だからだろう。

 まだ確認していないので分からないが、彼女の得た経験値は私に入ってくるのではないだろうか。

 これは後程、検証する必要があるが、今は置いておこう。


「それじゃ、そろそろ行こうか。今後の予定の事もあるし」

「はい」


 ということで、特別に用意されていた天幕から出る。

 この天幕は、私の休憩用に用意されたものだ。

 天幕を出て、向かった先は作戦本部だ。

 そろそろ偵察部隊からの連絡が来る頃だろう。

 中に入ると、皆一様にホッとした雰囲気が流れていた。


「戻られましたか」

「あぁ、それで偵察隊の方からは、何かありましたか?」

「まだ、届いていない。でも時間的にはそろそろだろう」


 そんな事をデルク将軍と話していると、作戦本部に伝令兵が入ってきた。


「歓談中、失礼します。偵察部隊からの報告が上がってきました」

「ありがとう」


 そう言って伝令兵から報告書を受け取る。

 ザっと目を通すと、私の方に報告書を差し出してきた。

 私はデルク将軍から報告書を受け取る。

 内容は大まかな討伐された魔物の報告と、森の被害状況の報告であった。


「問題ないようですね。それに森の方も、それほど大きな被害が出ていないようでよかった」

「そうですね。我々もホッとしてますよ。それでネリア様は、この後どうしますか?我々はここに残って討伐された魔物の片づけをしなければなりませんので」

「ん~、そうですね。それでは、後はお任せしちゃってもいいですかね?」

「わかりました。それでは魔導車の方を用意いたしますので、しばしお待ちを」


 そう言ってデルク将軍は作戦本部を後にした。

 私は帰り支度を始めることにした。

 まずはミセルを呼びいく。

 暫く探し回ると、ミセルは炊事場の方に居た。

 私が近づいてきたのを見つけると作業をやめて、こちらに駆け寄ってきた。


「どうなされましたか?」

「完全に事態が収拾したから、一足先に戻ることになったから、呼びに来たのだ」

「そうだったのですか。わかりました、すぐに準備いたしますね」


 そう言って再び炊事場に戻っていった。

 それを見送ると、私は次にファスタを見つけにかかる。

 ファスタは討伐が完了してからは、森の様子を偵察隊とは別に見てもらいに行っている。

 多分、そろそろ戻ってくるはずなのだが、まだ此処には戻ってきている様子はない。

 仕方がないので、ここは古典的な方法を利用することにした。

 フェンリルといえば、犬種の魔獣。つまり使うのは、ズバリ犬笛である。

 ただし、私の使っている犬笛は、ちょっとした魔導具となっていて、吹くと超音波以外に使用者の魔力波を増幅して発振する機能が備わっている。

 これを使えば魔獣であるファスタには、例え音が聞こえない場所に居たとしてもも、私の魔力波を感じる事さえ出来れば、問題ないようになっている。

 ということで、吹き口に口をつけ、息を吐くと同時に魔力を混ぜてやる。

 そうすれば、超音波と増幅された魔力波が周囲へと広がっていく。

 しばらくすると猛スピードで、こちらにやってくる反応が1つ現れる。

 ファスタが私に呼ばれて急いで戻ってきたようだ。


「遅かったではないか」

「すまんぬ。初めてのところだったので少し迷ってしまった。ここは魔力が濃すぎる」

「そうか。それは仕方がないか。で、様子の方はどうだった?」

「問題は無いとは思う」

「わかった。ありがとう。そろそろ戻るから離れないように」

「わかったご主人」


 ということで、ファスタも回収したので、一度戻ることにする。

 そうして作戦本部まで戻り、ミセルが準備を終えるのを待つ。

 しばらくして、息を切らせながらミセルが戻ってきた。


「お待たせいたしました」

「問題ない。それでは行こうか」

「はい」


 皆がそろったので、すぐさま魔導車に乗り込む。

 全員が乗り込むと、魔導車は首都を目指して動き出した。



 それからしばらくして、魔導車は王城の裏手へと到着する。

 到着し車から降りると、そこには国王とミランダが待っていた。

 最初に国王であるノルマンが進み出る。


「この度はご協力くださいまして、誠にありがとうございました」

「あまり気にすることはない。それに私も色々と手に入ったしな」


 そう言って、後ろに控えているネリアスの方をちらりと見る。


「そうでしたか。それはよかったですね。とはいえ、我々としても何もお礼をしないのは沽券にかかわりますので、なんでもおっしゃって下さい」

「そうだな……。それじゃ、1つ頼みたいことがある」

「どのようなことでしょうか?」

「ネリアスの為にマリテージの精霊結晶を1つ欲しいんだ。あれはマリテージ現地で作らないといけないから、この機会にでもと思ってね」

「わかりました。すぐさま準備をさせましょう。明日までには整いますので」

「そうか、ありがとう」


 そして次はノルマンと交代でミランダが前に出てくる。

 そのまま私に抱き着いてきた。


「無事で何よりですわ」

「あぁ、何一つ問題ない」

「できればネリアには、こういう無茶はあまりして欲しくはないのですわよ」

「ん。善処するよ」

「あまりその言葉はあまり信用できませんけど、今はそれで結構ですわ」


 それからギュっと強く抱きしめられた。

 数秒間たっぷりと抱き着いてから、ミランダは離れてくれた。


「それでは中に行きましょうか。色々とお話も聞きたいですし」

「わかった」


 ということで、ミランダと共に王城へと入った。

 私は持っていた荷物などを預けると、ミランダ達と共に王城の王族専用の談話室へと招かれた。

 今、一緒にいるのはミランダにノルマン、そして私とミセルにネリアスといった面々だ。

 各々自由な席に座り、早速これまでの事について簡単に説明をした。


「なるほど、そして彼女が新たに生まれた精霊ですか。それも最上位精霊ですか。これは非常に幸運な事ですね」


 最上位精霊は数百年に一柱程度しか発生しない為、その数が少ない。

 さらに最上位精霊が居る場所も人里離れた奥地に住んでいることが多い為、出くわす機会は長命種であっても2、3回程である。

 そんな訳で、生まれたての最上位精霊など、本当に奇跡的にしか会う事が出来ないのである。


「そうなのでしょうか?私にはよくは分かりませんが」

「そうですよね。こういう事は」


 それから色々と話して1刻程で談話は、お開きとなった。

 談話を終えると明日のために早めに休息をとることにした。

 明日は一度、ネリアスとともにこの街をまわる予定である。

 ネリアスは私から直接、知識を仕入れているようだが、やはりちゃんと自身の目で世界を確かめてもらいたい。

 やはり他人から教えられるだけより、自分で見聞きする方が断然よいに決まっている。

 今後、私と共にやっていく時に役に立つはずなのだから。

 そんな事を思いつつ私は眠りについた。



 そして翌日、今までろくに観光できていなかった城下町の散策の日だ。

 それとネリアスに、この世界というものを感じてもらう事もだ。

 私は、ネリアス、ミランダとともに城下町へと繰り出した。

 城下町では、昨日の事については、まだ正式に発表されていないようで、戦勝祝いという感じはしない。

 それでも人々の話を聞いている限り、噂話程度だがそれなりに話が出回っているようだ。

 そのおかげか、出立前に比べて街中は落ち着いた雰囲気が流れている。

 そんな街中を色々と見てまわる。

 ネリアスは、そんな街中を興味深く見て回っている。

 表情はあまり動いていないが、それでも初めて見るモノたちに、感動している様子ではある。

 そのような感じで街中を歩いていると、ちょうどこの街のギルド連合の支部が見えた。

 せっかくなのでお邪魔することにした。

 中に入るとそこらじゅうで、宴会の様相を見せている。

 組合に出されていた街の防衛などの依頼が終了して、その戦勝祝いのようだ。

 多分いつもより5割増しほど賑やかな中を進み依頼の掲示板の方を覗いてみる。

 やはりこちらの支部では、魔物の討伐依頼よりも、薬草関連の依頼が多い。

 マルテリィーア王国の主産業の1つには薬の製造などがある。

 古来より森と共に暮らしてきてエルフだけあって、他国にはないような薬が多数ある。

 まぁ、その1つには私達、シャルティス村の一部住人がお世話になっている、あちら系の薬もこの国のモノである。

 そんな掲示板を見ていると、何やら少し前から私の方に視線が集まっているような気がする。

 それに今まであれだけ騒がしかったのに、今は物音一つしない程に静かである。

 なんだかヤな予感がするが、そのままとはいかない。

 なので、恐る恐る後ろを振り返ってみる。

 するとギルドの全員がこちらをじっと見てきている。

 そして、その中に1人で、多分この支部の職員であるエルフの青年が近づいてきた。


「あの、何か?」

「あの~、もしかしてネリア様でしょうか?」

「そうだけど。何か?」

「あっ、いえ!その、お、お会いできて光栄です!」


 そう叫び気味で頭を下げてきた。

 その瞬間、ギルド支部内に居たエルフたちが皆、私たちの前に跪く。

 なんだか大事になってしまったなぁ、なんて思いながら、この場の収集を図ることにする。


「え~っと、どうも。そうですね、魔物の軍勢は退けられました。なので、今日は無礼講という事で、皆さん楽しんでください?」


 なんかいい言葉が思いつかなかったせいで、疑問形になってしまったのは仕方がないだろう。

 それでも問題ないらしく、一気にその場が大歓声に包まれる。

 私は、そんな中を揉みくちゃになりながら、すぐさま退散した。

 やっとのことで支部から抜け出した私は、このままでは支部から騒ぎが大きくなりそうだったので、王城へと戻ることにした。

 それにネリアスの方も満足している様子だし、そろそろ時間的にも昨日頼んでおいて物も届くころであろう。

 そして王城まで戻ってくると、ちょうど例の物が届いたと伝えられたので、部屋の方に持ってきてもらえるように伝えてから部屋へと戻る。

 部屋に戻ってから程なくして、ノルマンとミランダが部屋を訪ねてきた。


「これが報酬のマリテージの精霊結晶だ。受け取ってくれ」

「どうもありがとうございます」


 そう言って受け取ったのは無色透明のクリスタルである。

 そして私はネリアスを呼ぶ。


「ネリアス、ちょっと来て」

「はい」


 そう言って私の側に来たネリアスに、精霊結晶を手渡す。


「それじゃネリアス、その結晶に力を注いでみてくれ」

「わかりました」


 すると今まで無色透明だった結晶が、透き通った翡翠色に変わる。


「よし、その位で大丈夫だ」


 私はネリアスから色の変わった精霊結晶を受け取ると、その場で必要な呪文を唱える。


「汝、大いなる精霊、ネリアスよ。我、ネリア・シャルティス・ドリュッセンを主とし、ここに血の契約を交わすか?」


 そう言って、精霊結晶に魔力を込める。

 そうすれば、精霊結晶は光りだす。

 ネリアスは、私の持つ結晶に手を触れる。

 そして返答の呪文を唱える。


「我、大いなる精霊であり、ネリア・シャルティス・ドリュッセを司る者なり。我は、其方を主と認め、ここに契約をなす」


 そして私は光り輝く精霊結晶に昨日のうちに採取しておいた自分の血を垂らす。

 そうすれば、結晶は血を吸い込むと、眩く一瞬光り輝くと、光るのをやめる。

 光のやめると、そこには光を反射したときのような虹色の光を少し漏らす翡翠色となる。


「よし。これで精霊契約は相成った」


 これでやっておきたかった事は、すべて終わった。

 私は改めて感謝の言葉を伝え、今日は終わりとなった。

 そして翌日、ついに帰国する時となった。


「それではネリア、次会うときは学院ですわね」

「あぁ、そうだな。それまでは元気で」

「ネリアもお元気で」


 送りに来てくれたミランダに別れの挨拶をすると、私達は帰国の途に就いたのだった。

次回は人物録です。

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