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勇者召喚が失敗らしいので異世界に転生します  作者: shibatura
第1章 転生 新たなる物語
5/61

第5話 プロローグ 死んで初めて出会うのが変神だった件

本編開始です

時系列としては1話の直後になります

 気づいたときには、また白い空間に居た。ただ先ほど違うのは目の前に非常に胡散臭い扉があることだけである。


“狐麻川転生事務所”


 やはり胡散臭さ満載である。しかし、これ以外何もないこの空間では、ここに入る以外の選択肢は無そうだった。


「入るしかないのか?」


 すると扉が勝手に開いた。どうやらさっさと入れとのことらしい。仕方なく中へと入る。

 中は、いかにも何処にでもありそうな殺風景な事務所風な中である。

 中央には誰かが後ろを向いて座っている。


「あの、ここは何なんですか?」


 俺はとりあえず、座っている誰かに声をかける。すると椅子がくるりと180度回り、座っている人物が美しい女性であることが分かった。


「ようこそ、狐麻川転生事務所へ。当事務所を開設して10分で、最初で最後のお客様だ。まぁ、そこに座り給え」


 座っている女性が、目の前の席に座るように促してきた。

 俺は言われたとおりに座る。座ると目の前の女性は、おもむろに何かのファイルを机から取り出す。


「あの、それは?」

「これはね、同意書だ。君が転生をするにあたってのね」

「転生の同意書?というか俺は、どうなったんですか?」


 いままで疑問に思っていたことを訪ねてみた。俺の記憶は、女神によって異世界に召喚されようとしたところまでで途切れている。


「そうだね。まずは、ここに至るまでの経緯を説明しよう」


 説明によれば、俺は召喚のために次元の狭間といわれる虚数空間で、保護のために展開されていた魔法陣が、何者かによって破壊されたために保護されなくなり、死んでしまったらしい。

 


「ということでだ。君に残された選択肢は二つ。このまま、この同意書にサインして召喚される予定だった世界に行くか。それか、このままこの次元の狭間で消えて無くなるかのどちらだ」

「それしか、無いんですか?」

「無いね。悲しい現実だが」


 転生か、消滅の二つしか取れる道はないらしい。ただ消滅なんてものは、したくはない。だが、転生というものが確かなものであるという保証もない。なので、転生について聞いてみることにした。


「それでは、転生というものは、どういうものなんですか?」

「ん?転生は転生だろ。生まれ変わること、それだけだ」

「いや、そういう意味ではなくですね、その、なんていうのか、転生したら変なモノだったりとかしたら嫌ですから」

「そうだね。まず、変なモノには、ならないから安心してくれ。そこは、この世界の創造主たる私が保証しよう。これ以上の保証はないぞ。まぁ、延長保証はつかないけど。いや、そうだ付けてあげよう。初回特典の一部としてね」


 変なモノには、ならないらしいので少しは安心できた。どうやら目の前の女性は、召喚された世界の創造主らしい。

 確かに、それはかなりの保証になるだろう。延長保証の意味は分からないが。ついていたら何か変わるのか?いや、変わらんだろ。


「次に転生後についてだが、種族、性別、容姿はランダムに決められるから、何か指定するとかできないので、そこは了承してほしい。ただ、ある程度は転生する前の要素が反映されるから、君なら特別醜いとかには成らないから大丈夫だ。そこは安心してくれ」

「そうなんですか。それ以外には何かあるんですか?」

「そう…だな…、あとは能力についてかな」

「能力?」

「そう、能力だ。例えば元社長が転生するならば、統率スキルとかだったりが付与されるね。そういう意味でいうならば、かなりのものになるぞ、君ならね」


 能力か。例えばなにがあるだろうか?もともと若頭としてやっていたから、先ほどの例みたいに統率スキルとかだろうか?

 そんなことを思っていると、顔に出ていたのか、一つスキルを教えてくれた。


「うーん、君が得るスキルの中に面白いものが一つある。それはユニークスキル上位者というものだ」


 なんかよくわからないスキル名が出てきた。それもユニークスキル。


「その、上位者とかいうスキルは何なんですか?」

「それはだね、スキル“上位者”はかなり強力なスキルだよ。そうだな、君は以前から君より強そうだったり、君より立場の高い人間とかに、かなり有利に話を進められただろう?」


 そういえばと思い出す。確かに今までいろいろと“お話合い”してきたが、何か問題も起こるわけもなく、話を進められてきた。それがこの人は無理なんじゃないかとも思える人物にさえ。


「思い当たることがあったようだね。そう、自分を相手より常に上位に置くことのできるパッシブスキルだ。これはかなり強力で基本的にはレジストは不可能。レジストできるとしたら、神格を持つものぐらいかな」

「神格?」

「そう!神格だ。神と呼ばれるものが持つことのできる一種の資格みたいものだ。まさしく格が違うとはこういう事だな。はっはっは!」


 かなり強力なスキルを持っているらしい。それ以外にも何かいろいろあるらしいが、長くなるからと言われたので、聞くのをやめた。


「それじゃ、転生するにあたって何か質問はもう無いかね?無いのなら次の説明に移るから」

「いまは無いです」

「そうか、じゃぁ次の説明移ろう。次の説明は転生後の記憶についてだ」

「記憶ですか?何か問題になることでも?」

「例えばだ。もし君の性別が女性だったら、いきなり記憶がすべてある状態で転生するとどうなると思う?」


 女性になる。そうか、性別さえもランダムで決まる以上、女性として生まれることもあるのか。そうなると確かに違和感だらけで大変だろう。


「そうですね、混乱するし、そのまま変な精神状態で居たくはないですからね」

「うん、そうだな。それだけじゃないしね。記憶があるということは、それだけ余計な重しにもなる場合がある。特にトラウマになるような記憶とかね」


 そこまでいうと、いったんそこで話を止め、どこからともなく現れたティーカップに口をつける。

 一息ついてから、ティーカップを机に置くとティーカップは忽然と消えた。驚いた様子でそれを見ていると、少しばかりドヤ顔でこっちを見てきた。

 ちょっとイラっと来た。そんな事はどうでもいいんで、サッサと話を続けてほしい。

 彼女はそれで満足したのか、再び表情を戻すと話を再開した。


「というわけだ。なので、転生後から約5年ほどかけて記憶が徐々に戻していくことになる。戻し方も、ちゃんと君になじみやすいようにしておくからね」

「5年なんですか?もっと早くてもいい気がするけど」

「5年の根拠か。確かにもう少し早くてもいいけど、やはりゆっくりとやっていく方が、負担がないからね。それに5歳ともなれば、かなりしっかりとした意識があるころだしね。それぐらいがいいんだよ」

「そうなんですか。わかりました。ほかに何かありますか?

「そうだね、あと注意しておくべきことといえば、特にないかな」


 そこまで言うと何か考え込み始めた。しばらくして何か思いついたようだ。


「そうだ!それから一つ、これは転生とは直接的には関係はないことだが、一つ私から頼まれごとを引き受けてほしいんだ」

「頼まれごと?」

「そ、頼まれごと。簡単に言えば私の仕事の一部を引き受けてほしいということだ」


 なんだか厄介そうなことだった。


「嫌そうな顔だね。だけど、そこまで変なことは頼まないさ。正確に言うなら、今まで君がしてきたようなことの延長だと思って貰って構わない」

「俺が今までしてきたこと?」

「そう、簡単に言えば、転生後の世界で余計な真似をしようとする輩がいるのを、私が指示を出すから、どんな手段を使っても構わないから対処するお仕事さ」


 確かに、そのようなことは今までもやってきたことがある。それにしても神様の仕事とはそんなヤクザめいたことなのだろうか?


「君が思っていることは違うね。これは私個人の仕事だよ。私の仕事は、簡単に言えば裏方の仕事人みたいなものさ」

「裏方…」

「あぁ、裏方だ。絶対とまではいかないが、あまり世間様に言えるような仕事じゃない。危険物は早急に片づける。そういうものだ」


 少し考えてみる。確かに今までもそのようなことをしてきたこともある。うちの家業の一部には、かなりギリギリのところもあったから、今更躊躇するほどでもない。

 あとは、このお願いを受けたとき、何か不利益を被るかだ。それが少ないようならやってもいい気がする。転生後の種族がもし長命な種族だった場合は、やはり途中で暇になる可能性もあるだろうし。


「少しいいですか?」

「いいよ。なんでも答えよう」

「では、お願いを聞いた場合。俺に何か不利益とか起こるとかですか?それにいろいろ拘束されるのも嫌なんですよね」

「拘束することはないかな。基本的にはお願いだから。ただし、今回みたいに勇者召喚される程の場合はそうじゃないけどね」

「わかった。引き受ける」

「即断かい?」

「元々将来のこととか漠然としたことしか考えてこなかったし、今までは出来上がった道しか歩んでこなかったから、この際は自分で決めた道を歩くのもいいかなと思ったから」

「そう。君の決断は分かった。それじゃ、この同意書にサインをしてくれ」


 そう言って、先ほど取り出したファイルを開く。中には一枚の紙が挟んであった。

 俺は、同意書にサインをする。サインし終わると紙が光り輝き、球状になって何処かへ飛んで行った。


「これで転生の準備は完了した。最後に私から君に伝えときたいことがある。これはお願いを聞いてくれる一つの代償というか、特典というか、まぁ、そういうものがあるんだけどね」

「はっきりといってくれないと困るんですけど」

「そうだね。それじゃ言うけど、まず私が持つスキルの一つ“万理眼”というのが付与される。神眼系スキルでありとあらゆる“理”を操るスキルだ。これはレベルが上がるにつれて神へと近づくスキルだ」

「神へと近づく、ですか?」

「そう。ある意味での代償だな。特典としては、神に至れば不老不死たる存在になれるということだ」

「そういう意味の代償と特典というわけですか」

「そういうことだね。まぁ、これは必要なスキルだしね。ということで頑張り給え。それじゃ、転生を開始するよ」


 すると体の輪郭がぼんやりとし始める。何かが失われていく感じがし始めた。

 こんな時に一つ今まで質問するかしないか迷っていたことを聞いてみることにした。


「まだ、時間ありますか?」

「うん?まぁ、3分ぐらいなら」

「それじゃ、あの、疑問に思ってたんですけど。この事務所みたいにしたのって理由あるんですか?」


 すると今までで一番いい笑顔でこう言ってきた。


「理由?そんなものはない!単に思い付きだ!すべては私の一種の趣味だ!」


 とんでもなくどうでもいい理由だった。あと、イラつくので殴ってやりたい


「あぁ、それと最後に、私の名を名乗っておこうか。私の名は狐麻川未久美だ。それじゃ、良い来世を」


 そう言って華麗なお辞儀をする。ここで俺の意識は閉ざされていった。

やっとちゃんとした形で主人公が出てきました

1話の時点では登場はしていませんがちゃんといます


次話では生まれ変わってからの話です


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