第43話 出撃準備
中々文章化できずにいた為、遅くなりました。
次の投稿は遅くならないようにします。
急いで王城まで戻ってきた私達は、すぐさま事態の収拾に向けて動き始めた。
最初に国王への報告である。
ミトラストは近衛の1人を見つけると声をかける。
「今、ノルマンは居るかのう?」
「はっ!ただいま執務中であります」
「そうか、それでは緊急事態だからすぐさま会議室まで来るように伝えてもらって良いかの?」
「はい!今すぐ伝えてまいります」
そう言って踵を返すと足早に王の執務室へと向かっていった。
彼を見送ると私達は会議室の方へと向かう。
私達が会議室に到着すると、そこには息を切らせた国王が居た。
「おぉノルマン、ずいぶん早かったの」
「えぇ、ミトラスト様が緊急事態とおっしゃいましたからな」
「そうか、それはありがとう。それでな。あと重役は全員呼んでもらえるかのう」
「わかりました。よし、聞いたな?すぐさま集めろ」
ノルマンが素早く従者に指示すると、席へとつく。
私達もそれに習い、近衛が引いてくれた席にそれぞれ座る。
「それで森に行った結果はどうでしたか?」
「ふむ、それについてはネリアちゃんの方から説明してもらった方が早いかのう。頼めるかの?」
私は静かに頷くと、説明を開始した。
事の顛末をノルマンに説明を終えたころ、会議室に呼び出された重役達が揃い始めた。
さらに数分程すれば、全員が揃ったようだ。
全員が集まったのを確認したノルマンは口を開く
「諸君、全員が揃ったので緊急会議を始める。まずは状況を説明しよう」
それから軽く状況説明がされた後、早速話し合いが始められた。
「それでは話し合いたいと思うが、何か追加で説明が必要なことがあるだろうか?」
そうノルマンが問いかけると、王国軍の将軍の一人が手を上げる。
「デルク将軍」
「はっ!相手は魔物の最上位精霊とのことでしたが、相手の戦力はどのような物でしょうか?」
「ネリア様説明のほどをお願いしますか?」
ノルマンから話を振られたので、少しばかり考えてから話を始める。
「そうですね。最悪の事を言えば、無限大といったところでしょう。相手は霊脈の魔力を元に魔物を生み出していますから」
その言葉に一同が沈黙する。
敵対勢力の戦力が無限だなんて言われれば、誰だって黙ってしまうだろう。
周りからは動揺の声が小さく響き合う。
さすがになんの対策を示さないのは不味いだろう。
それに、この作戦は私しかできないだろうから。
「ご安心ください。その事については私が対処しますので、皆さんには湧き出した魔物の対処をお願いします」
「分かりました。魔物の対処は我々軍が対応いたしましょう。それで一つ伺いますが、どのようにして対処するのでしょうか?できれば護衛の者を付けるためにもお伺いしたいと思いまして」
護衛か。正直言えば居ては欲しくないのだが。
自分の力について、あまり詳しい事までは知られたくはない。
ただ精霊の対処を行っているときは周りに対しての警戒が、どうしてもおろそかになってしまう。
そのためにも最低、警戒要因として1人ぐらいは居てもらった方が良いかもしれない。
「そうですね。でしたら1人だけ、お願いできますか?」
そう問いかけると、将軍は少しばかり困った顔をしたが、すぐに元の顔に戻し、返答した。
「わかりました。それでは後程、私達の方で選抜したメンバーの中からお選びください」
「ありがとうございます。後は何かありますか?」
それから軍の編成、もしもの場合を考え、森周辺の住民の避難誘導等を話し合った。
テキパキと必要なことが決まっていく。
全ての話し合いが終わったのは、会議を開始してから1刻半もかかった。
「それでは皆の者、すぐさま行動を始めよ!」
『はっ!』
ノルマンの号令とともに皆が、それぞれの持ち場へと戻っていく。
そして、その場にはミトラストとノルマンに私が残った。
「お疲れさまでした、ミトラスト様、ネリア様。少しばかり休憩の為にお茶としましょう」
「そうじゃの、ありがたく頂くとしよう」
「えぇ、ありがとうございます」
すぐさま控えている給仕にお茶の用意をするように指示をすると、私達の方を向き直し、真剣な表情で話し始めた。
「今回は本当にありがとうございました」
「気にせんでよい」
「そのお言葉、ありがとうございます」
そして私の方に向き直り、深く頭を下げる。
「今回、このような状況に巻き込んでしまって誠に申し訳ございませんでした。そのうえご協力までしていただきありがとうございます。このお礼は、事が済み次第すぐさまご用意致します」
さすがにここまでされる程ではないのだが、ここは相手の顔を立てるためにも話は受けておいた方が良いだろう。
「いえ、私もそこまで気にはしていませんから。一種の不可抗力ですし。お礼は程々で結構ですから」
「お気遣いありがとうございます。それではちょうどお茶の準備も整ったようですから、どうぞ」
そうして、お茶を飲み一服する。
「ふぅ~」
少しばかりため息が出てしまった。思っていた以上に疲れていたようだ。
そこで私は一度、自分の体調を整えるために、魔力を体中で循環させる。
こうすることによって、体の中の淀んだモノを解消することが出来るのだ。
体調を整え、一度自分の様子を観察する。
体に在った疲れなどが殆ど感じられないのを確認して、私は装備を整えるために、部屋へと戻ることにした。
部屋に戻ると、ミセルが忙しなく動いていた。
私が戻ってきたのを見つけると、いったん作業を止め、私の下に駆け寄ってきた。
「お帰りなさいませ、ネリア様。調査のほどはいかがでしたか?」
「調査の方は完了したが、問題が発生した。これから大変だが一仕事やってもらうぞ。いいな?」
「もちろんです。その為の私なのですから。ご自由にお使いください」
「ありがとう。それでは、これから戦支度だ。頼むぞ」
「はい。お任せください」
ミセルは再び、作業へと戻る。
私も必要なものを収納より取り出し、準備を進める。
ほどなく準備を進めていると、部屋の扉をノックする音がする。
「どうぞ」
「失礼します」
やって来たのは近衛のヨセフだった。
「ネリア様、作戦のお付き1人の候補を選定しましたので、ご足労お願いできますか?」
「わかった、行こう」
そしてヨセフに案内されるままやって来たのは、この城にある近衛隊の控室であった。
「ネリア様がお越しである」
ヨセフがそう言うと扉が開けられる。
中には近衛隊の面々と、それから中央に片膝をついて1列に並ぶ5人の兵がいた。
「これらが今回お付きにふさわしいと選別いたした者達です。この者達の中からお選びください」
それから一人ひとり、どんな能力があるとか、どんな性格や、特技などについて説明された。
その説明を聞きながら私は万理眼で、それぞれのパーソナルデーターを確認していく。
そして最後の兵を視たときに面白いのを見つけた。
「彼にします」
そう言って最後の兵を指名する。
私に指名された兵は、私の前に出てくると挨拶をしてきた。
「お選びくださいましてありがとうございます、ネリア様。私は第7方面防備隊所属、ミロール・ハルストールです。よろしくお願いいたします」
「あぁ、よろしく」
「それでは、もう大丈夫でしょうか?他に何かあれば、この場にてお願いします」
「ん~、いや、特にないから大丈夫だ。それと作戦は何時からだい?」
「明日、10の刻よりです」
「ありがとう。それじゃ私は戻る」
「わかりました。何かあればすぐにお呼びください」
「わかった。失礼するよ」
そう言って近衛隊の控室を後にした。
それからマルテリィーア王国は1日中、明日の準備のために追われていった。
各地に緊急連絡が行われ、各地で参加できる兵士たちが、次々に王都へと出立する。
遠方の部隊は、儀式魔法による大規模転移魔法により、王都へと送られてきた。
そして王都の各地では、やって来た兵士のための炊き出しが行なわれていた。
さらに王国はギルド連合にも緊急依頼を出した。
内容は、もしも魔物の軍勢が王都まで押し寄せた場合の対処を求めるものだ。
そして着実に明日への準備を続けていったのだ。
翌日の10の刻。王城の前広場には、各地からやって来た兵士たちが、王城前の大広場へと集められていた。
その数はざっと5000人程。
臨時の緊急召集とはいえ、それなりの数が揃っている。
そんな中、私はどうしているのかというと、整列している兵士達の前に用意された雛壇の上で、軍の将軍たちに混ざって座っている。
何故、そのような場所にいるかといえば、これから私が今回の作戦に参加するという事を紹介するためだ。
そして10の刻の鐘が鳴り止んだ頃、国王であるノルマンが雛壇にやって来た。
すると今まで少しばかり騒がしかった兵士達が静かになる。
静かになったところでノルマンが話し始める。
「諸君、緊急召集に答えてくれてありがとう。今回、諸君らが集められたのは聞いている者もいるかもしれないが、サガワルトの森で突如発生した魔物の最上位精霊が、大量の魔物を生み出し、この王都へと侵攻しようとしているからである!」
この言葉に少しざわめきが起こるが、直ぐにまた静かになる。
しっかりと統率されている。
それからしばらくノルマンの話が続く。
そして数分程度話してから、今回の作戦内容について説明する為、今回の作戦の総指揮を執る将軍の一人であるデルク将軍が、ノルマンと入れ替わるか達で前に出る。
「えー、今回の作戦の総指揮を執るデルクである。作戦の内容は実にシンプルである。侵攻してくる魔物の軍勢を出来る限り、サガワルトの森から外へと出させない事だ」
そしてついに私の出番となる。
「そして今作戦の要となる最上位精霊を無力化してくださるのは、ミドルテッシモ王国からお越しくださったハイエルフのネリア様である」
そういって私の方を見やる。
私はそれに答えるべく席を立ち、デルク将軍の横に並ぶ。
「それではネリア様、軽く一言お願いできますか?」
「わかった」
そして私は一歩前に出る。
「はじめまして。今回の作戦に参加させてもらう、ネリア・シャルティス・ドリュッセンです。今回の作戦の間、皆さんにはお世話になります。よろしくお願いします」
そう言って頭を下げる。
すると兵士たちから割れんばかりの拍手が上がる。
こういうのにはあまり慣れていないので、少し気恥しい。
拍手が止み、そして私が後ろに下がると、再びノルマンが前に出て来た。
「諸君、そういうわけで今はこれで終わりにしよう。諸君の良き働きを期待している。以上だ」
そういうと後ろにいるデルク将軍に目配せをする。
デルク将軍は頷くと、声を張り上げ号令をかける。
「出撃準備!」
『おー!!』
その言葉とともに一斉に兵士達は声を上げ、それからすぐさま行動を開始した。