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勇者召喚が失敗らしいので異世界に転生します  作者: shibatura
第2章 学生生活と冒険者生活
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第37話 問題の解決に向けて

 不味い。何が不味いかと言えば全てが不味い。

 まさかミセルを襲ってしまったのか。


「えーっと、ミセルいいかな?」

「はい」

「昨日の夜、私は何をした?」


 そう訪ねると、微妙な顔で目を逸らされた。

 もしやこれは行ってはならないところまで、やってしまったのだろうか。


「ミセル。本当のことを言って欲しい。どこまでいった?」

「そのですね、最後までいっていないと思います。恥ずかしながら、最後の方は私自身も記憶が曖昧でして。大丈夫だと思いますよ」


 念のため万理眼で確かめるが、確かに最後までやってしまったという事はないようだ。

 ただこのままでは、また暴走してしまう事は目に見えている。

 仕方ない。まずは両親に話をしなければ。

 私の体のこの異常さは同じエルフである両親ならば、何かしらの事を知っているに違いない。

 なので、まずはミセルに服を着るように言いつけ、私もすぐに服を着る。

 多分この時間ならば、両親は食堂にいるはずだ。

 急いで着替え、軽く身だしなみを整えると、速足で食堂へと向かう。

 案の定食堂では両親が朝食までの時間をゆっくりと過ごしていた。


「父上、母上、ご相談したいことがあります!」


 少し勢いよく出過ぎたせいで、少しばかり引き気味の父。


「ど、どうかしたのか、ネリア?」

「はい。どうにも自分が抑えられなくなってしまいました!」

「はい?」


 恥ずかしさとパニックで少し言動がおかしくなってしまった。

 少しばかり言われた意味を理解しようとしていた父だが、突然その顔が青ざめていく。


「ね、ネリア、まさか、やってしまったのか?」

「えーっと、多分。あ!でも最後まではやってませんから!ミセルと!」

「え?ミセル?」

「そ、そうですが」


 そのまま固まってしまう父。それを見ながら、あらあらと面白そうなものを見る目で様子を見ている母。

 そんなカオスな状態で数分が過ぎた。

 暫くしてやっと現実に戻ってきた父は、急いで何処かへと出ていった。

 どうしたらいいのか分からない状態で放置されてその場で突っ立ったままでいると、不意に後ろから抱きしめられた。


「大丈夫よ、ネリア」

「母上…」

「大丈夫。誰だって間違いはあるんですから。それよりもこれから大変だから覚悟しておきなさい」

「大変な事でもあるのですか?」

「そうねぇ、なんと言えばいいのかしらね。ちょっと不自由な事になるけど我慢するしかないとしか言えないかしら」

「そ、そうですか」


 よく分からないが、どうすることもできなそうなので父が戻ってくるのを待つことにした。

 しばらくして父が戻ってきた。それも何やら色々な人々を連れて。

 嫌な予感がするが、とりあえず今の状況を知る方が先だ。


「あの、これは一体どういうことですか?」

「その、済まないがネリア。抵抗せずにおとなしくしているんだ」

「いえ、そういう事ではなくてですね、説明をしてほしいのですが」


 説明を求めると父は顔をそむけてしまった。

 仕方がないので、なぜこの場所にいるのか分からないが、知っている人物であるガイルの方に視線を向ける。

 私と目が合ったガイルは、苦笑しながらも口を開く。


「あー、説明しにくいんだが、ネリアはシャルティス村のエルフについてなんて言われているか知っているか?」

「まぁ、一応は」

「それで、その、何だ、シャルティス村のエルフ。特に女性の方は春になると発情期に近い状況になってしまうんだ」

「それが、今の私にも当てはまると」

「そうだな、そういう事だな」


 なるほど、そういうとこなら今の私の状況を説明できる。

 つまり、この春の時期は性欲が非常に高まり、一歩間違えれば異性を襲ってしまうという事だろう。

 確かに昨日の私の状況を鑑みれば頷ける。

 それにしても今の状況を説明するには足らない。

 なぜならば、こんなにも実力者を連れてくる必要があるのだろうか。

 見たところ今私を取り囲んでいるのは第1騎士団の副長であるトーラス・ブルックリンにS級冒険者のパーゴラス。

 その他にもA級の実力派が勢ぞろいしている。

 たかが小娘1人を取り囲むには些か過剰戦力だろう。

 ただそれにしては彼らの表情は真剣そのものである。

 まるで危険の魔獣を相手にしているようだ。

 確かに私のレベルは173になっているし、以前よりも基礎ステータス自体も上がっているおかげで、筋力のステータスはすでに439となっている。

 筋力ステータス値439は一部の高レベル者しかいないスタータスとなっている。

 それでもここまで実力者が大人数で囲むものでは無い。

 力は強くてもまだ10歳の少女である。体格もあるわけでない為、強引に倒されてしまっては、さすがの私でも振りほどくのは容易ではない。

 そんな感じで、ものすごく緊張した雰囲気が漂う中、私はどうしたらよいのかと考えていた。

 こういう時は1人で行動するよりも、誰かに私の行動を制限してもらった方が酔いのではないだろうか。

 となると今、そういうことの出来そうな人物は母ぐらいだろうか。

 なので私は母の方を向く。

 すると一つ頷くと私の右腕を取る。


「戒めるもの、この者に大いなる抑制を与えよ」


 すると右手首に光り輝く円環があらわれる。

 それと同時に体中が何かによって押さえつけられているような圧迫感を感じる。

 どうなっているのかと万理眼で視てみると、ステータスに対して約6割ほどの低下させられていた。


「あの、この魔法って、かなり強力な奴ですよね?」

「そうね。抑止の円環っていう魔法なんだけど、主にステータスに大きな差があるときに、それを縮める為の魔法よ」


 そして母は私を取り囲んでいる人たちを向く。


「これで、この子の力はある程度弱くなっているから大丈夫なはずよ。監視につくんだったら数人でいいはず」

「あぁ、分かった。済まないが来てくれた皆には感謝する。とりあえずはトーラス君とガイルさんには引き続きお願いしたい」

「わかりました」

「了解しました。それでは1度ギルドの方に行きましょう。色々と説明したいこともありますから」


 という事で、1度ギルド支部へと行くことになった。

 どうやら必要なものが現在無いらしく、取り寄せるのに1日くらいかかるらしい。

 その間はギルドで監視のもと過ごしてほしいとのことだった。



 という事で冒険者ギルド王都支部へとやって来たのだが、なぜか私は地下にいた。


「1ついいですか?」

「何だい?」

「なぜ私は特殊魔獣用の檻に入れられているのでしょうか?」

「それは…、黙秘する」

「そうですか」


 話が続かない。さきほどから1刻ほどこうしている。

 今のところ性欲の高まりは感じられていない。

 ただ今はよくてもいつ暴発するか分からない現状、迂闊な行動は出来ない。

 といってもこのままでは、やることが無さ過ぎて、別の意味で暴発してしまいそうだ。

 それにこのまま、このような事が毎年あるようでは色々と問題がありすぎる。

 それにもっとひどいことになりそうな予感がするのだ。

 だからこそ、この体質をどうにかしなければならない。

 そのためにも私の体について。もっと言えばハイエルフについて調べなければならい。

 どうせ明日までは暇だし、それにこの場所からも移動できない以上、調べ物をして時間を過ごす方が良い。


「ガイル、ちょっといい?」

「何かな?」

「少し調べだい事があるのだが、今から言うような内容の書籍があったら持ってきてほしい」

「わかった。それでどんな内容だ?」

「ハイエルフに関することで」

「ハイエルフについてかぁ」


 なにやら訳ありな様子だが、ハイエルフに関して規制でもされているのだろうか


「何か問題でも?」

「あぁ、実はハイエルフに関しての資料なんかは、ほとんどがマルテリィーア王国によって管理されているんだよ」

「そうなんですか!」


 どうやらエルフの国であるマルテリィーア王国によって厳重に管理されているらしい。

 資料が貴重とかそういう事ではないらしく、ハイエルフの情報全般が厳しく管理されているらしい。

 つまりは、あまり調べられて欲しくない事があるのだろう。

 ただそれにしては、私というハイエルフを野放しにしているのはどういう事なのだろうか。

 情報をほとんど規制しているのならば、生きた情報である私を自由にさせているはなぜなのだろうか。

 まぁ利用は色々と考えられるが、現状問題が無いのなら、この事は一旦置いておこう。


「わかりました。それじゃあるのだけでいいんで持ってきてもらえますか?」

「わかった。すぐに用意しよう」


 そう言ってガイルは、その場を後にした。

 ガイルがこの場を去ってから私は、書籍が来るまでの間に、万理眼を使って何かできないか探ってみる。

 そうして30分ほど過ぎたころ、3冊の本を持ってガイルが戻ってきた。


「とりあえずハイエルフに関しての乗っている資料だ。といっても1つはエルフについての調査の報告書で少しばかりハイエルフの事について記載がある。そして後の残りが古代エルフの研究書だ」

「古代エルフ?」

「あぁ、ハイエルフのもとになったとされる古代種だそうだ。という事で用意できたのは3つだけだったが、いいかな?」

「えぇ、ありがとうございます」

「そうか。また何かあったら言ってくれ。出来る限り用意はしよう」

「ありがとうございます」


 それからゆっくりと内容を確かめていった。

 そして暫くして、昼食の時間となった。


「ネリア。簡素なものだが昼食だ」


 そう言ってなぜか長い棒で食事の乗ったトレイを押してきた。


「なんで、こんな渡し方なんですか?」

「いや、その、念のためだ。念のため」

「そうですか」


 そんな事もありつつ時間が過ぎっていった。

 そして翌日。


「ネリア、必要なものがやっと入荷された。今から薬を渡すから飲んでくれ」


 そう言って格子越しから薬を渡される。


「これは?」

「性欲抑制薬だ。シャルティス村のエルフには、この薬を渡しているんだが、今回ネリアの分まで用意できていなかったんだ。という訳でこれを飲めば、今年の発情期は問題ない」

「わかりました。でもその前に1つ試しておきたいことがあるんですが、いいですか?」

「ん?まぁ、大丈夫だが…」

「ありがとうございます」


 という事で早速始めることとした。

 今からやるのは昨日から万理眼を使ってどうにか出来ないだろうかと試行錯誤をした結果である。

 使う能力は、事象改変能力である。

 この力で私の中にあるハイエルフの性欲に関する本能の部分に細工を施す。

 魔力を高め、万理眼へとこめる。

 そして万理眼で私の性欲に関する本能部分を視て、そこに新たなるイメージを今まであったモノに被せるようにする。

 後は固定化するだけだ。


「ふぅー」


 様子を伺っていたガイルが恐る恐る声をかけてきた。


「大丈夫か?」

「えぇ、完璧です」

「そうか。それで何をしたんだ?」

「私の中にある性欲に制限を掛けました。これで暴走する事は無くなりました」

「詳しくは…。いや、いい。多分聞いても分からないし」

「そうですか。確かに説明をしろと言われても、ある意味感覚的な事なので説明は難しいですね」


 本当のところは、あまり万理眼について話すのは不味いかなと思ったからなのだが。


「取り敢えず大丈夫という理解でいいか?」

「はい」

「そうか。でも取り敢えず、その薬は今回の分は飲んでおいてくれ」

「わかりました」


 ということで貰った薬を飲み、魔獣用の檻から1日ぶりに出る。

 凝り固まった体をほぐす為に軽いストレッチをする。


「流石に少し疲れました。あまりこういう所には居たくないですね」

「ハハッ、そうだな。一応今後、何か違和感があったら私まで伝えてくれ。直ぐに君の分を用意できるにしておくから」

「わかりました。それではまた」


 こうして今回の騒動と問題は解決したのであった。

次回は登場人物紹介回の予定です。

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