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勇者召喚が失敗らしいので異世界に転生します  作者: shibatura
第2章 学生生活と冒険者生活
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第32話 ある日の学院での1コマ

長らくお待たせしました。

中々気力が出ず、時間がかかってしました。


 私は久しぶりに学院へとやって来た。

 私が色々とやっていた頃に学院は、夏の長期休暇を終えて通常通りの授業を開始していた。

 私の場合は元々受けるべき授業自体が非常に少なかった為、学院が始まっても1週間ほど行かなくても問題なかった。

 そんなわけで長期休暇とその他の事で、他の皆とは少しばかり遅れてホームルームへと来ていた。

 教室の扉を開けると、いの一番に反応したのはミランダだった。


「お久しぶりですわね、ネリア」

「久しぶりミランダ」


 軽く挨拶をしてから、自分の席へと向かう。

 今日受けるべき授業は、体育だけである。

 つまりは、ほとんどの時間が暇となるわけだ。

 一応、研究室を貰ったからには何かする必要があるので、暇な時間は研究室で、ちょっとした開発をおこなっている。

 現在、開発を進めているのは、通信機の開発だ。

 と言っても、ゼロから始めるわけではない。

 そもそも通信機自体は、すでに存在している。

 ただし、その大きさは気軽に持ち運べるものではなく、一番小さくても背中に大きなリュックサック程度にはなる。

 どうしてそんな大きさになってしまうかというと、一番の原因は魔力消費にある。

 現在使われている通信機の構成内容が、音声を特定の魔力波に変換する音声魔力波交互変換部分。

 これはマイクやスピーカーと似た構造なので、大きさは問題ない。

 次に変換した魔力波を色々な方法で別の場所に送信する発信機部分。

 これは複雑な魔力回路を描いている為に、どうしても大きさが大きくなってしまう。

 さらに魔力波をある一定以上の出力する為に、かなりの魔力を食う。

 その為、通信機に使う魔力結晶を大きくせざるを得ない状況になってしまっている。

 つまり、通信機を小型化するためには、現行の魔力回路より、効率良く、そして小型な魔力回路にする必要がある。

 まぁ、という感じの事を開発している。

 今のところ、良さそうな方法が見つからないでいるのだが。

 そんなことを考えていると、学級担任のミーナス教諭がやって来た。


「皆さん揃っていますか?」


 そう言って教室内を見渡し、そして私の姿を見つける。

 それから少しだけ、こちらに会釈だけすると教壇へと上がる。


「皆さん揃っているようなので、連絡事項をお伝えします」


 それから、2、3程度、連絡事項を伝えると、教室を後にした。

 ミーナス教諭が教室から去ると、私の机にミランダがやって来た。


「どうかした?」


 先に私が声を掛ける。


「その、騎士爵おめでとうございますわ、ネリア」

「あぁ、ありがとう」


 どうやら私が騎士爵に拝命されたことについてのお祝いをしに来たようだ。

 あの時招かれていたのは、この国の人間だけだったから、ミランダは出られなかった。

 そのために今言いに来たのだろう。


「それでネリアは今日、どうするのです?」

「今日は授業があるまでは研究室の方にでも籠っていようかと思っていてね。少しばかり試しておきたいこともあるし」

「そうですか。それでは後程、空いた時間にでも様子を見に行きますわね」

「わかった。お茶の用意をしておくよ」

「それでは」


 そう言ってミランダは最初の授業へと向かっていった。

 私は、ミランダがホームルームを出っていくのを見送ると、私も自分自身の準備をしてホームルームを後にした。



 場所は変わって、ここは私が持つ研究室の応接間。

 私は、つい最近ギルド支部長のガイルに頼み込んで、ギルドの方で使われている魔道具を貸してもらった。

 ここで使われている魔道具は、一般に出回っている魔道具とは違い、非常に小型化されている。

 すべて国際ギルド連合本部より支給されている物だが、さらに大本をたどれば、ギルド連合の運営母体であるフォックスリバー財団から提供されているという。

 そこで私は、今までのやり方では到底無理だと感じたため、このギルド連合で使われている魔道具を調べてみようと思ったのだ。

 それに、このギルド連合の運営母体であるフォックスリバー財団。

 私は、この名前から1つ怪しさを感じていた。

 何せフォックスリバー。つまり狐川。

 そして私を、この世界へと転生させた人の名は、狐麻川である。

 どうにも怪しさ満点なのである。

 という事で、そこから支給されている魔道具の中身を調べれば、何かわかるかもしれないと踏んだのだった。

 今回借りてきた魔道具は、ギルドの所属証を発行する魔道具である。

 大きさはティッシュボックス程度。

 この大きさで使用頻度によって変わるが、魔力を満充填すると約1年程、魔力が持つという。

 今主流のやり方をやっても、この大きさにはする事はできない。

 という事で早速、調査を開始する。

 手始めに軽く万理眼で覗いてみる。

 しかし術式部分が黒く塗りつぶされていて全く読めない。

 さらに深く視てみるが、隠蔽されて全く視れなかった。

 ここまでは、まだ予想していた範囲内だ。

 ここまでの高度な技術を簡単に見られなくしている事は、よくあることである。

 なので、施されているプロテクションを強引に突破する。

 そしてようやく私が視ることの出来る最大限の力で、ようやく術式を視ることに成功する。


「どれ、どんな術式か…、な!」


 まさか、それが使えるなんて。

 なんと使われていたのが、どう見たって電子回路図であったからだ。

 というか、これで大丈夫なのか。

 でも実際にそれで動いているようだし。

 じっくり観察してみると論理回路に集積回路も組み込まれていた。

 魔法なんかがあるファンタジー世界で見るとは思っていなかった。

 それにしても論理回路なんて、世界が認識するのだろうか?

 こういうものが存在していない、この世界で普通は機能しないと思うのだが、どういう事だろうか。

 この辺はよくわかっていない。

 魔導学の授業を受けているが、その辺の詳しいことは高等教育機関等で研究されていることなので、わからないのだ。

 なので、ここで悩んでいても先に進むことが出来なくなってしまう。

 とりあえず今は置いといて先に進もうとして時、いきなり背後に気配が現れた。


「誰!」


 振り返ると同時に、収納から抜身の状態でナイフを取り出し、素早く構えて相手と対峙する。

 するとそこには、どこかで見たような人物が立っていた。


「あ、あなたは狐麻川未久美さん…」


 と、ここであることに気づく。

 それは頭とお尻から狐の耳と尻尾らしきモノが生えていた。


「あの、その狐の耳と尻尾は何なんですか?」

「ん?あぁ、そうか!まだ私の正体について詳しくは教えてなかったね。私はこう見えて本当は狐なんだよね。あ、それと獣人とかじゃなくて、れっきとした獣だから。そこんとこは間違えないようにね!」

「そ、そうですか」

「う~ん、反応が固いなぁ。まぁいっか」


 正体が分かったので、持っていたナイフを再び収納し、きちんと向き直る。


「それで、何の用ですか?」

「いやぁ、なんだか悩んでいたようだしぃ、ちょっとぉ、助言でもぉ、なんてぇ、思ったりして」

「あの、気持ち悪いので普通に話して下さい」

「そう。わかった」


 少しイラッときたが、ここは我慢である。相手のリズムに乗せられれば面倒な事になる。

 付き合いは非常に短いが、これまでの経験則からいえば間違いない。


「で、用っていう訳じゃないけど、貴方の様子をチョッとばかし見ていたら、けっこう悩んで居たようだから、アドバイスでもしようかと思ってね」

「そうだったんですか。それならさっさと、そう言えばいいんですよ。一々余計な事を挟まずに」

「ごめんね。私の性分だから仕方ないのさ」

「……」

「ハハッ」


 それから未久美さんは、この世界の魔法の仕組みの一部について教えてくれた。


「魔法っというのは習ったと思うけど、簡単に言えば、魔力を使用者の思う形に変質させ、それをこの世界に対して出力するというも。似たようなものである魔術は、魔力を変質させる方法が魔法と違って、思考体の意志ではなく、魔力に対して形ある世界の法則をなぞらせることによって、変質を促しているという事だけど、ここで重要なのは、この世界の法則についてだ」

「どういうことですか?」

「そうだね。ネリアは世界の法則はどういったものだと思う?」

「法則って…、いきなり言われても分からないですね。どこかに記録でもされているんですかね?」

「そう。記録されているんだ。世界の根源、別名アカシックレコードって」


 ここで意外な言葉が出てきた。世界の根源、アカシックレコード。

 よくオカルトで出てくる言葉だ。存在しているのか、して無いのかのかよくわからないものだが。


「確かに、その存在の真偽は色々言われているけど、実際に存在はしている。ただし、基本的には観測や干渉も出来ない位置にある。それが零次元という場所さ」


 零次元。観測も干渉することもできない場所。確かにそれでは存在しているかどうかも確かめることはできない。

 でもそれでは、根源の存在している意味がなくなってしまう。という事は例外が存在しているという事だ。


「それで観測も干渉もできないと言ったけど、それは通常の方法では出来ないという事だ。それじゃ、どうやって根源に干渉するかっていうと、ここで出てくるのが魔力だ。この世界で言う魔力というモノは、正式に言えば概念エネルギーという」

「概念エネルギーですか?」

「そう概念エネルギー。つまりは概念を現実世界で実行するために必要なエネルギーが魔力という訳だ。ここまで言えばわかるんじゃないかな?」


 つまり魔法っていうモノは、魔力と言う概念エネルギーを使って概念を現実世界で再現するという事。

 さらに言えば魔法は、概念として存在しているものならば、必要量のエネルギーを使用することによって、何でも実現が出来るという事だ。

 なんでも実現が出来る。例えそれが別世界の事であっても、だ。


「つまり、この世界に無い概念であっても、別世界に存在しているならば、この世界でも使えるという事ですか?」

「そう。だから魔術でも同じことが出来るという訳。ここまで言えば問題は解決したでしょ」

「はい。これなら今までのやり方よりも、さらに色々出来るようになりました。ありがとうございます」

「よかった。それじゃ、私はそろそろお暇するね。あ、あとそれから万理眼は唯一概念に対して完全に干渉することの出来る能力だからね。それを使えば君の知らないことでも問題ないからね。じゃ、またいつかね」


 そう言って未久美さんは扉を開けて出ていった。

 それから私の開発は、飛躍的に進むことが出来たのだった。



どれくらいの時間が過ぎただろうか。ふと時間を確認する。


「あれ?もうお昼か。食事しないと」


 気づいたらすでに時刻は12の刻を半分も過ぎていた。

 そろそろミランダがやってくる頃だろう。

 私は給湯室に入り、湯を沸かす。

 その間に家であらかじめ作っておいたサンドイッチを収納から取り出す。

 そして戸棚から紅茶の入った缶を取り出し、ティーポッドに入れる。

 沸いたお湯をポッドに注ぎ、少しばかり蒸らし、ティーカップに注いでいく。

 それから、ミランダのために収納から王都で有名のケーキ店の限定チョコレートケーキをさらに取り出していく。

 すべての準備を整え、再び応接間に戻り、配膳をしていると、ここで扉をたたく音がする。


「ネリア。今、大丈夫ですか?」

「あぁ、どうぞ」


私が声をかけると、扉を開けてミランダが入ってくる。


「いらっしゃい。もう食事は済んでるかい?」

「えぇ、済んでいますわ」

「そう、それじゃ食後のデザートはどうかな?」


 そう言って私の対面の席に座るように促す。


「有り難く頂戴しますわね。これはずいぶんと高そうなケーキですけど、どうしたのです?」

「王都の有名店に知り合いがいるから、特別にもらったんだよ。いつものお礼にって」

「そうだったのですか」


 そう言ってミランダは席につく。

 そして私も席に座る。

 席につくと早速、昼食を開始した。


「ところでネリア。開発の方は進んでいるのですか?」

「あぁ、ちょうど一番の問題を解決出来たところだよ」

「それは、おめでとうですわね」

「ありがとう」


 それから他愛無い話をしながら過ごす。

 ほどなくして昼の時間が終わりを告げる。


「おいしかったですわ。それじゃ後程の体育の時間で」


 そう言ってミランダは研究室を後にした。

 それから、開発の続きを少しばかりしてから、授業の時間が迫ってきたので、準備を始める。

 体育用の衣服に着替え、専用のグランドへと向かう。

 グランドに向かうと、ほとんどの生徒はすでに集まっていた。


「ネリア、来たか」

「はい」


 私に声をかけてきたのは、専属の体育教員である。

 名前はジークライト。見た感じはこれでもかと思うほどの体育教師である。

 小麦粉に焼けた肌は眩しく光り、見るからに鍛え上げられた筋肉は、自然の鎧の様である。


「ネリアは、いつも通りに準備運動が終わり次第、私とランニングからだ。いいな」

「はい、わかりました」


 今、体育の時間は、基本的に教師と一緒に行っている。

 皆とはだいぶレベル差がある為、体力や力などが皆とは、だいぶ違うせいで私だけ特別メニューとなっている。

 それでも最近は、徐々にトレーニング内容が、私の運動能力と合わなくなってきている。

 レベルが高いと、基礎ステータスが少しでも変動するだけで、実際のステータスもだいぶ変わってきてしまうからだ。

 そろそろ自主練に切り替えておくべきだろうか。

 そんな事を、つい最近考えるようになってきた。

 基礎鍛錬と持久力と瞬発力等のあらゆる状況での対応出来る筋力づくりをしていけば問題無いだろうし。

 今度、ジークライトにでも提案をしておこう。

 これからの事を決めてから、準備運動を始める。

 だいぶ体が温まってきたところで、ジークライトの側まで行く。


「ん、準備は大丈夫か?」

「はい。万全です」

「それはよし。それでは初めに2000からいってみようか」

「わかりました」


 それから2000mを2本と100mの短距離を5本程度やったところで授業の終わりの時間がやって来た。


「ネリア。以前より早くなっているな。私では付いていくには、ちょっときつくなってきてしまったな」


 その言葉を聞いて私は早速、考えていたことを提案する。

 ジークライトは二つ返事で許可してくれた。

 これでもっと効率よく体を鍛える事が出来るようになる。

 それと、私の提案を聞いた後のジークライトの顔は無表情を貫こうとしていたが、かすかにだが安堵の表情が含まれていた。

 少しばかり最近は無理をさせていたようだ。

 何時か何かしらのお礼の品でも差し上げておこう。



このような感じで、私の学園生活は過ぎていくのだった。

次回はミセルの眷属化のお話

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