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勇者召喚が失敗らしいので異世界に転生します  作者: shibatura
第2章 学生生活と冒険者生活
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第25話 事件の終息を経て

 明るさを感じ、目を開ける。

 そこは見慣れない天井だった。

 状況を確かめるべく起き上がる。

 周りはカーテンに仕切られて分からない。

 この感じからするに、医務室のようだ。

 倒れてからどのぐらい時間がたったか確認してみる。


「3刻か。意外と早かったな。1日ぐらいは寝込むかと思ったけど」


 ここで気づく。

 今、独り言をつぶやいたのに何も反応が無い。

 それどころか、この部屋に人の気配が無い。

 これは、かなり気を使われたのか、それどころじゃないかのどちらかだな。

 とりあえず、誰かを見つけなければ。

 そう思い、ベッドから起き上がる。

 はらりと目の前にかかる髪を払い、ベッドから立ち上がる。

 下を見ると、前世の病院で見かける検査着のような服だった。

 どうやら、念のために着替えさせられていたようだ。


「どこだ?私の服は?」


 ひとまずカーテンの隙間から顔を出し、回りの様子を窺う。

 誰も居ないことを再確認して、カーテンを開けて服を探す。

 幸い、服は近くの丸椅子の上に畳んで置いてあった。

 服をつかみ取り、一度カーテンのうちに入り、着替える。

 服を着替え終えて、医務室の扉を開こうとして、扉に手をかけたところで、一度思いとどまる。


「そういえば、ちゃんと確認しておかないと、問題は無いと思うが」


 傷とか、そういうものは無いと思うが念のために確認しておくことにした。

 それに今まで寝ていたせいで、身だしなみがしっかりとしていない可能性もあるし。

 前世が男だったしても、今は女性なのだから、人前に出ても問題ない身だしなみをしておかないと。

 部屋に置かれている全身鏡の前まで行き、おかしなところが無いか確認する。

 ここで少し違和感を覚える。

 なんだか肌や髪の毛の艶が違う。


「あれ、こんな感じだっけ。手入れはしているといってもここまでは…。もしかしてレベルアップの時に体をレベルアップ後の能力に合わせて作り変えるという事は、レベルアップ時に体が生まれたてになったのと同じことになるんじゃ…。使えるな、コレ」


 とまぁ、そんなことを考えつつ、今まで確認していなかったレベルの方を確認する。


「さて、レベルの方はどうなったかなっと」


 そしてステータスを確認する。


「ぶふっ!ゲホゲホ!あ~びっくりした」


 1万もの魔物を倒したせいで、それなりの経験値が得られることは予想がついていたが、それに称号による経験値補助の方を考えていなかった。


「それにしてもレベル153かぁ。大分いったな。もう少ししたら親に追いつきそう、レベルだけでも」


 とりあえずレベルの確認も終え、身だしなみの方も問題ないので、そろそろ人を探しに出ることにする。

 医務室を出て、最初に向かうのは自分のホームルームである。

 ホームルームの前まで来ると、中からは何やらガヤガヤと話し合う声がする。

 あんまりこういう状況で、お邪魔するのも悪い気がしたが、それでは意味がないので扉を開ける。

 開ける音に皆の視線が一斉に私のもとに集まる。

 その視線に一瞬のけ反るが、何かしらの返事をしなければ。


「えーっと、なんだかお騒がせさせて、すみませんでした」

「ネリアさん、大丈夫ですよ。皆さんも分かっていますから」

「そうだと思いますけど、一応は謝っておかないと私が気にするんで」

「そうでしたか」


 最初に声をかけてきたのがミーナス学級担任だった。

 それからクラスの皆に気にするなという感じの事を言われた。

 という事で、皆とあえてから、その日は解散という事になった。

 私は一度、自分がどのぐらいの力を発揮できるか確かめるために、家に帰るとミセルとファスタを連れて、シャルティス村の森へと赴いた。


「それでネリア様、これからどうするのでしょうか?」

「うん?あ!そっか、まだ目的を言ってなかったけ」

「はい。ただ付いてこいとしか言われていませんので」

「ミセルは何があったか聞いてる?」

「はい。詳しくは聞いていませんが、学院の迷宮でスタンピードが起こったとか」

「そう。それに私は巻き込まれてね。ちょっと、その時にたくさんの魔物を斃したから、だいぶレベルが上がったから、一度どんなものか確かめておきたくてね、今こうして来たわけだ」

「そうだったのですか。それでレベルはどのぐらいまで上がったのでしょうか?」

「153だね」

「ひゃ、153ですか!?それはなんとまぁ」


 そんなことを話しながら、森の入り口から10分ほど中に入ったところで歩みを止める。


「うん、ここで良いかな。ミセルにファスタ、私の前には出ないでね。危ないから」

「はい」

「わかった、ご主人」


 それから周りにいい感じの魔物がいないかと探ってみると、ちょうどいい時にひょこっと魔物が現れた。


「あれはヘヴィーガードバイソンか。あれでいいか」


 ヘヴィーガードバイソンは、物理耐性が恐ろしく強力なミノタウロスみたいな魔物である。

 後ろからミセルが心配そうな声で訪ねてくる。


「大丈夫でしょうか?かなり危ないと思いますが」

「大丈夫でしょ。何かあったらファスタが何とかしてくれるでしょ?」


 いきなり話を振られて驚いた声を上げるファスタ。


「えぇ!我が相手するの、あれ」

「大丈夫でしょ、あなたなら」

「いや、あれは…」

「大丈夫でしょ」

「は、はい」


 何やらゴチャゴチャ言っていたが笑顔で黙らせる。

 ファスタを黙らせたところで、はヘヴィーガードバイソンを観察する。

 分厚い胸板に、はち切れん場からの腕の筋肉。

 全身が強固な筋肉によって守られており、生半可な攻撃は通さない。

 相手のレベルを確認する。


「レベル102。かなりの強敵だな。さて、私の力を試すにはちょうどいいかな」


 最初は何も強化してない素の力で試してみる。

 相手に気づかれないうちに、足に力を入れて全力で駆け出す。

 ズサァっと後方で大量の砂が跳ね飛ばされる音がしたが、気にせずまっすぐバイソンに向かってかける。

 数秒もしないで相手が近づく。

 あと2~3メートルほどのところで急制動をかける。

 それでも止まらずバイソンの目の前で止まる。

 バイソンはいきなりの事で一瞬、動けずにいたが私を認識すると雄叫びを上げながら、腕を振り回してくる。

 それをギリギリのところで交わしながら、徐々に後ろへと下がる。


「う~ん、レベルアップしてるといっても反射神経までは上がらないか、さすがに。よし、そろそろいいかな」


 いつまでたっても攻撃が当てられないと悟ったバイソンが攻撃をやめ、何やら全身に魔力を込める。


「身体強化かぁ。厄介な」


 全身にくまなく身体強化の魔法が行き渡ると、バイソンは近くに生えている木に抱き着く。

 そのまま雄叫びを上げながら、その木を地面から根ごと引き抜く。

 さすがレベル102もあれば、かなりすごいこともできるものだ。

 さすがに私でも、あれは無理そうだ。

 バイソンは引き抜いた木を持ち替え、脇に抱え込む。

 そのままこちらに突っ込んできた。

 さすがに、あの状況でやり合うのは無理だ。

 こちらとリーチの差がありすぎる。

 このまま突っ込むのは、かなり危険を伴う。

 やってやれない事は無いだろうが、ただ自分の力を試すために大けがをするのは違うだろう。

 仕方がないので、先に奴の持つ棍棒代わりの木をどうにかする事にする。

 火で燃やしてしまうのが一番早いが、さすがに森の中ではためらわれる。

 代わりに何かいいのが無いか、振り回される攻撃の範囲外に退避しながら考える。


「木をどうにかしようとすると、あいつが傷つく可能性あるしな。どうにかして危害を与えずに木だけをどうにかできないものか?」


 ふとここで万理眼の能力で、いいのがあったことに気づく。

 そこで、私は自分の腕に木材破砕の概念を付与する。

 近くの木に手を当てると、音もなく気が細切れになる。

 ちゃんと効果があることを確認してから、バイソンに向かって駆け出す。

 今度は攻撃を避けず、風を切りながらものすごい勢いで振りぬかれる木に向かって、手を差し出す。

 差し出した手に木が触れた瞬間、木が一瞬で粉々になる。

 しかし勢いまでは消える事は無いので、私は一気にバイソンの懐まで移動する。

 懐に入り込むと、急制動をかける。

 バイソンは、私が懐に入り込んだことは認識しているようだが、今まで勢いよく動いていたことがあだとなり、何もできずにいる。

 私は、がら空きとなったバイソンの腹めがけて、渾身の力で殴りつける。


「はぁっ!」

「ゴッア!?」


 筋力のステータスが244あるとはいえ、人間とは思えない怪力程度では、魔物の高レベルに対しては効きが低いようだ。

 バイソンは、私の攻撃を受けて、その場に蹲る。

 大体の力は視れたので、復帰するまでにさっさと片づけることにする。

 ちょうど蹲ってくれたおかげで、首が切りやすい位置にある。

 すぐさま収納から1本の刀を取り出す。

 取り出した刀は、いったいどうやって入手したのか知らないが、生前に持っていた長ドスである。

 どうやらこれも転生の延長保証の特典らしいが、どうしてこれが延長保証の特典になるのかは謎である。

 ただ今の私にはかなり長い。

 何せ刃渡り80センチもあるのだから。

 といっても、この場においてはちょうどよい。

 私は鞘から抜くと、刀身に切れ味上昇の概念を付与する。

 そして、いまだに痛みに唸り声を上げるバイソンの首に狙いをつける。

 すると私の中のナニかが切り替わる。

 静かに澄み渡った気持ちの中で、私は刃を振り下ろす。


「死ね」


 余分な力を入れず振り下ろした刃は、分厚い筋肉をモノともせず切り裂いていく。

 そして、骨もきれいに切り裂き、刃はついにバイソンの首を切り落とした。

 その様子を他人事のように見つめていたが、完全にバイソンの命が立たれた瞬間、はっとなる。

 今までこのように自らの手によって、相手の命を絶ったことは前世を含めて、今回が2度目であるが、人型を切ったのは初めてだった。

 それでもここまで、なんの感情を抱かないものなのかと、自分自身でも驚いている。

 まさかここまで冷めていたものなのかと。


「やはりなんか……。いや…、今はまだ深くは考えたくはないな…」


 なんか暗い感じになってしまった気持ちを振り払うように、血の付いた刃を振り、血を振り払う。

 そして静かに刀身を鞘にしまい、そのまま収納へとしまう。

 私はバイソンの死体の前にかがむと手を合わせ、黙礼をする。

 これが今、私が思いつく最善の行為だった。

 黙礼を捧げると、私は遠くで様子を見ていたミセルとファスタを呼ぶ。

 駆け寄ってきたミセルは感嘆の声を上げる。


「わぁ!さすがですねネリア様!」

「ありがとう。それじゃ、ある程度は程度も分かったから、帰ろうか」

「はい。わかりました」


 そのまま私は、バイソンの死体を収納すると家路につく。

 私は帰りながら、これからどんなことになるのだろうかと考えながら歩くのだった。

とりあえずひと段落。

次回はいったん、人物紹介を入れます。

その次ぐらいで章は変わりませんが、少しばかり時間が飛び、新たな話が始まります。

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