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勇者召喚が失敗らしいので異世界に転生します  作者: shibatura
第0章 もう一つのプロローグ
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第1話 日常とは、いつも突然終わりを告げるもの

 12月11日午前10時ごろ、日条学園高等部3年1組の教室にて爆弾爆発事件が発生した。

 しかし不思議なことに、そこに居たと思われる生徒と担任の遺体らしき痕跡は、一切見つかることはなかった。

 警察は、爆発の威力から見て生徒と担任、総勢43人の生存は絶望的とみて、被害者全員死亡として事件は犯人の特定作業へと移っていった。



 卒業まで数か月となったある日。俺たち日条学園高等部3年1組は、いつも通りの朝を迎えていた。

 それが起こったのは1時間目の半ば頃。ちょうどこの時、通常通りの授業ではなくホームルームを行っていた。

 俺、佐貫川仁良(ひとよし)には退屈な時間であった。今回のホームルームはこれから迎える受験時期の予定事項の説明であった。

 すでに推薦で進学先が決まっていた俺にとっては、あまり説明を聞く必要がなかったからだ。

 退屈さから欠伸が出そうになり慌てて口をふさぐ。そんな時だった。突然、視界がグニャリと曲がったのだ。


「なんだ?」

「うわぁ!」


 教室がざわめく中、さらに周りの景色がまるでコーヒーにミルクを垂らして、ゆっくりとかき混ぜるがごとく混ざりあってゆくように見える。

 俺はその気持ち悪い景色に酔い、椅子から転げ落ちる。

 何とか立ち上がろうとするも立てず、そのまま床に崩れ落ちる。そしてそのまま意識を失ったのである。



 次に目を覚ましたのは、唯々白い何もない空間だった。

 周りには倒れてうつぶせになっているクラスの面々。急いで近くにいた男子生徒に近寄りその肩をゆする。


「おい、起きろ」


 ゆすられた生徒が起きる。


「こ、ここは?」

「わからない。それより皆を起こそう」

「わ、分かった」


 それから分担して皆を起こして回る。皆を起こし終わったころ、何もない空間から一人の女性が現れた。

 その人は歳にして20台半ばごろで、肩のところで切りそろえたスレンダーなひとであった。


「皆さん、突然のことで申し訳ございません。少しお話よろしいですか?」


 その声で皆の視線が、現れた女性に集まる。皆の視線が集まったところで、その女性は話を始めた。


「まずは、皆さま初めまして。あなた方の住んでいる世界とは別の世界で、女神をしているメルスティーと申します。今回このような場所に呼ばせてもらったことから説明させていただきますね」


 それから彼女、女神メルスティーによると、自分たちが住む世界と別の世界、つまりは異世界のことだが、その世界では魔王と呼ばれるものによって統率された魔族と魔物の集団に責められており、俺らに勇者となって彼らの侵攻を食い止めてほしいとのことだった。

 それと俺たちは、元居た世界ではすでに死んでいることになっているとかで、もし元の世界に戻っても強制的に“世界”によって誰知れずに殺されるとのこと。

 これは世界が持つ絶対的なルールで神様であろうともどうしようもないらしい。

 つまり俺たちは、これからも生き続けるためには異世界に転移しなければならないらしい。

 なんだか嵌められたような気がした微妙な顔になっていたのだろ。それに気づいた女神は、俺の方をみて苦笑しながら


「もし仮に、このようなことが無かったとしても、あの後30分後には教室に仕掛けられた爆弾によって皆さん死んでしまうことになっていました。まぁ、これから異世界に行くのが幸運だったかは何とも言えませんけどね」


 と教えてくれた。


 それからしばらくすると、白い空間の地面に魔法陣らしき文様が現れ、光始める。


「どうも向こう側の準備もできたようですね。それでは皆さん、私達の世界の

ことをよろしくお願いしますね。私も微力ながらお手伝いしますから。それと何か困ったことがあったら、私の巫女のセルフィという者がいますので、その者に伝えてください。そうすれば私と話が出来るので。」


 徐々に光が強くなっていき、眩しさを感じるぐらいになる。


「それでは皆さんのご健闘をお祈りします」


 その言葉とともに魔法陣の光によって周りが見えなくなる。こうして俺たちは異世界へと転移したのであった。



 そして、白い空間には女神ただ一柱となった。無事に異世界へと旅立ったことに安堵していると、床に光っている魔法陣が突然消え去った。


「なっ!」


 慌てて消えた魔法陣付近を調べてみるが、さっきまであった魔法陣の痕跡は跡形もなくなっていた。

 この召喚の魔法陣には転移を完了するまでの間、世界と世界との間の虚数空間を渡る際に彼らを保護する機能がある。

 これがなくなると彼らの身の安全が保てなくなってしまう。


「まずいですね。早急に対応せねば」


 そう独り言ちると、すぐさま何処かへと姿を消した。

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