セトシェルへの道中
アラダの町を後にした俺達は、運河に沿って北上していた。
元々、アラダの町はダンジョンの近くの港として整備された町で、そのダンジョンは川沿いにあったのだが、同じくセトシェルの町も、ダンジョンと国境を守る形でアンティボデスと運河に挟まれるように町が展開されているのだ。
今のファン・デ・ノヴァは、国土のほとんどが平地であるため、町が出来ている場所は、他よりも高台になっている所に作られているため、それぞれが要塞のような作りになっているらしい。
で、俺達は、運河の東側を遡っているのである。
運河は、俺が整備しなおしたこともあり、周辺の土地は見渡しが良い状況になっているため、最近街道として整備されたらしいのだ。
今では、スネアーズからアンティボデスを抜けて、セトシェルからアラダ、更には、王都ソンソヨルに通じる街道になっているということだ。
今も俺達の横をすれ違って行く商人と思われる馬車の集団が通りすぎていっている。
この街道は、北に向かって左に運河、右に林があり、大変涼しいのだが、逆に言えばそれだけ隠れやすいところでもあるのだ。
ある程度、今までで走ってきたところは索敵して盗賊などは、殲滅してきたので、先程すれ違った馬車などは、この街道を進んでいる限り、危険性は低いと思っている。
((キンキンキン))
((ガン))
「きゃあ~、助けて、だ、誰か~。」
((バキバキ))
「お前ら、男どもは皆殺しだ。やっちまえ。」
((ドン))
「お前達なんかに、負けるわけないだろ。」
やはり、この先で盗賊に襲われている集団がいるようだ。
「リュウ、助けに行くわよ。」
「そうですわ、ご主人様、行きましょう。」
「ああ、言われなくても、そのつもりだから、ティシュトリヤ、アパオシャ急ぐぞ。」
「「ヒヒ~ン」」
あれだけ、声も音も聞こえていたぐらいだから、すぐに見えてきた。
「助太刀する。怪我人がいたら教えてくれ。」
「すまない、助かる。行者が酷い怪我をしているんだ、治療出来るのであれば、助けてやってくれ。」
「聞いていたな、ミミ。ポーションも気にしなくていいから、任せたぞ。」
「はいだ。」
「あとは、こいつら盗賊の殲滅だ。」
「なんだ、お前達は?金持ってそうだな。ちょうどいい、お前らこいつらもやっちまうぞ。」
盗賊の頭みたいなやつは、そう言って後ろを振り返ったのだが、そこにはすでに倒されている他の盗賊達の姿しかなかった。
盗賊の頭みたいなやつは、次の瞬間声をあげることも出来ず、首から2つに別れていた。
盗賊に襲われていた、馬車の人々は、
「す、すまない、助かったよ。俺はこの馬車の護衛をしている冒険者のライアンだ。」
ライアンは、右手を出して握手を求めてきたので、俺はそのまま握り返した。
「無事で何よりだ。俺は、冒険者のリュウだ。」
「すまない、1つ確認させてくれ。ランクは?」
「ランクはSだ。」
「やはりか、では、『白き獣使い』で、デーメーテール国王陛下で間違いないと、言うことでいいかな?」
「ああ、そうだ。」
「よかった、今の護衛がセトシェルまでで、そのあとデーメーテールに行こうと思っていたところだったんだ。」
「なんで、デーメーテールへ?」
「まあ、俺はこれでも貴族出身でな、地方の貧乏貴族の四男で継げる領地も資産もなく、仕方なく冒険者をしてきたんだが、貴族出身ということもあり、読み書きと計算だけはちゃんと出来るので、雇ってもらえないかと思って。」
「それじゃあ、いくつか質問させてくれ。」
「ライアンが住んでいた領地では、何が主要な産業だった?」
「産業か、そうだな、村が少しあっただけなのだが、どちらも漁村だったのでな、そのまま漁業だったよ。」
「漁業か、それでは、港の管理もしていたということでいいか?」
「ああ、それは当然だな。」
「それじゃあ、採用でいいぞ。」
「え?いいのか?じゃなくて、いいのですか?」
「今さらそんな口調で喋られても気色悪い。」
「ご主人様、それでも国王陛下の部下になるのですから、そのくらいはなおしてもらいますわ。」
「まあ、そのへんはマリサに任せるよ。」
「はい、畏まりましたわ。」
「それじゃあ、さっそくスモールモニコーフのところに案内して。」
「わかりましたわ。それでは、こちらに。」
「ちょっと待ってくれ、いや、待ってください。ここにいる俺のパーティも連れていきたいのだが。」
「パーティーもか。」
「はい、ここにいる4人は、俺の部下になりたいとずっとついてきたんだ。だからこれからも部下として連れていきたいのです。右から順に、タンクのジョー、シーフのレルイニ、ヒーラーのアイス、マジシャンのスレットだ、です。」
ジョーとスレットが男性で、レルイニとアイスが女性だ。
「まあ、いいんじゃないか。それじゃあ、マリサ頼んだぞ。」
「はい、それでは、行きますわよ。」
「ここで別れて、歩きで?」
「いえ、これに乗るのですわ。」
5人は、マリサに連れられて、スモールモニコーフのところに向かった。
「それじゃあ、馬車の方は、俺達が護衛を代わりに続けますから、セトシェルへ向かいましょう。」
俺達は、代わりに護衛しながらセトシェルへ向かったのだった。
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