デーメーテールのもう一つのダンジョン(探索下)
とりあえず俺は、地下2階の上り階段側と下り階段側に転移の魔法陣を設置しておいた。
せっかくの熱帯気候なのだから、このまま温室代わりに使用しようかなと思っているわけで、
森を焼き尽くしてしまったので、もし新たなモンスターが生まれても数は増えにくいだろうと予測されるためである。
ドスミールが大量に地表に出てきたため、木の根が全て掘り起こされたような状態である。
その周りに、ドスミールのドロップが点々と落ちている。
ドスミールのドロップは、口のところにあるハサミのような部分だ。
特に用途が思い付かない、ドロップがハズレのダンジョンだけはあると思った。
しかし、ある程度はドロップを拾ってから、地下3階へと降りたのだ。
地下3階は、少し奥に大きな扉が見えている。
距離がわからないので、実際の大きさはわからないが、かなり大きなことはわかる。
俺達は、扉に向かって行動を開始した。
この階は、上の階とは異なり、言うなれば秋のような気候になっていた。
地表には、大体50センチくらいの草が多い繁っており、虫が生息するのに好ましいと思われる環境だ。
少し進むと、その草むらからバッタのようなモンスター、グリーンソートレル、その赤い色のレッドソートレル、青い色のアイスソートレル、蜂のようなモンスター、スピアアピスなどが飛び出してきた。
どのモンスターも、30センチ位の大きさで、かなりの俊敏性があるのだが、そのような状態でも俺達には、たいした問題ではなかった。
スミレが、上の階に引き続き魔法の練習を行った。
「フレイムアロー」
「ファイヤーボール」
「サンダークラッシュ」
「ミキシングストーム」
色々と魔法を使っているのだが、周りの草にも当然ながら引火した。
しかも、風の魔法で次第に範囲が拡大されていき、俺達の前方は火の海となっている。
今いるところにも、拡がってきそうだったが、
「エアロカッター」
俺が、周辺の草を刈り取った。
「ギガストーム」
ミミがその草を吹き飛ばした。
「リュウごめん。」
スミレは、ウインクをしながら、謝ってきた。
右手を顔の前にたてて、口はちょっとだけ舌を出している。
火の勢いは、次第に強くなっており、モンスターを巻き込みながら燃え広がっていった。
「スミレ、魔法を使うときに、必ず周りの状況を確認しろよ、今回みたいに、自分の魔法で自分や仲間が傷つくのは嫌だろ。」
「は~い、ごめん、気を付けます。」
スミレが少し落ち込みながら謝ってきた。
「スミレ、魔法は問題ないだ、この魔法を使ったら、どうなるかもイメージしたらいいだよ。そうすれば、問題なくなるだ。」
ミミが、スミレにアドバイスしていた。
しばらくフロア中が燃え続けたが、ようやく落ち着いてきたようだ。
草むらに潜んでいたようなモンスターはほとんどが死滅しているようで、飛び出してこないのだ。
「まあ、今回はスミレ結果的にはよかったな。」
「そうねリュウ、これが私の実力よ。」
「偶然だろ!」
「運も実力のうちよ。」
「それじゃあ、今から1人でボスを倒してもらおうかな。」
「え!?いや、ちょっと待って、ねえ、え?、それはね!、ねえ、ごめんなさい。」
スミレは慌てているが、その様子を見ているキャサリン、ミミ、シルフが笑うのを我慢してみていた。
それでももう何時噴き出してもおかしくない状況だ。
「それじゃあ、行こうか。ボスの部屋へ。」
「ねえ、ちょっと、いや~!」
俺に引っ張られていくスミレを見ながら、後ろの方で3人は笑い転げていた。
ボスの部屋に入ったところで、このダンジョンのボスが出てきた。
アラクネースパイダーという、蜘蛛系のモンスターだ。
その特徴としては、足の数が異常に多い、左右に8本ずつの計16本あり、目が左右4つずつの計8個、口も前後に1ずつあり、体の前方には死角が見当たらないようだ。
体長も約4メートルほどあり、足の長さまで入れると、いうに10メートルを超えるかなりの大型の魔物と思われる。
が、そこはレベルのないモンスターだ。壁に張り付き俺達の動きをじっと見ているが、せっかく目の数が多くても動きに追いついてなく、余計に動けなくなっているようだ。
俺達は、アラクネースパイダーの足を1本ずつ切り落としていった。
左右の足の合計が4本を切ったところで、壁に張り付いたままいられなくなったようで壁から落ちてきた。
それでも必死に残った3本の足で飛び上がりシルフに向かって攻撃を仕掛けていったのだが、シルフの腕の中にあるロングソードに飛び込んでいった形になったため、そのままロングソードで貫かれてしまった。
「あっけなかっただな。」
「う~んと、楽勝?」
アラクネースパイダーを倒した後には、宝箱が出現していた。
その中には、
破魔の羽衣(品質:最上)
が入っていた。
これは、まるで蜘蛛の糸を用いた羽衣のように見えたのだが、鑑定の結果としては、
破魔の羽衣:糸1本ずつに魔力が練りこまれた生地で作成してあり、その白き生地はあらゆる魔からその身を守ってくれるだろう。
というものだった。
俺はこれを、スミレに渡してダンジョンを後にした。
ダンジョンを出て、兵士たちに
「地下2階の熱帯のところが今なにもない状態になっている。ここに転移の魔法陣を置いていくから、2階を畑にできるようにしておいてくれ。」
と、命令した。
「「「「はっ」」」」
兵士たちは、敬礼したのちにすぐに作業に取り掛かった。
ここのダンジョンは、のちに果樹園のダンジョンと呼ばれることとなるのだが、それはまた別のお話。
デーメーテールのダンジョンは、これで今のところ終わりです。
思った以上に長くなってしまいました。
思い付きで書いてますので、今後いくつか頭の中にありながら、どのようにしていこうか悩んでいます。
引き続き読んでいただけることをお願いしたいと思います。