デーメーテールのもう一つのダンジョン(準備)
自称勇者佐藤が、王都を離れて数日が過ぎた頃、この国に元からあるダンジョンの事を考えていた。
どういった資源がドロップされるのか?どんなモンスターが出てくるのか、しかも、そのダンジョンは、ギルドで管理しているものだ、フンドのダンジョンは、デーメーテールで管理しているが、基本誰でも入ることが可能にはしている。
まあ、眷族化していない人が入ってしまうと、まずはモンスターを倒すことさえ出来ない。場合によっては死んでしまうだろう。
ダンジョンの入り口に、騎士団は配属されていて、入ろうとするものには、
1 自己責任で 2 中で何かあっても国もギルドも助けない
この2つのことは、肝に命じておくように伝えさせている。
フンドでは、小麦粉と酵母菌が手に入るから、パンを作ることが流行っているらしい。
基本パンは、日保ちしないので他で販売はしていないものの、材料を持って行商しようか考えている人もいるらしい。
フンドのダンジョンでさえ、ドロップで町が少しでも発展しているのだから、もうひとつのダンジョンもドロップ次第で近くの町は更に発展出来る可能性はあると思うのだ。
そこで、俺達はワールトの近くにあるダンジョンに行くことにした。
ただ、そこで問題が発生したのだ、なんの問題かというと、誰が俺についてくるかということだ、いつものメンバーでいいかと思っていたのだが、ナーリヤやターリヤ、騎士団のメンバー、メイドや執事希望者が噴出してきたのだ。
中には、マリサを慕ってついてきたいメイドや、スミレに対して片想いの兵士や、デニスに憧れを持った、魔法騎士団の女性団員など様々な希望の理由があるのだが、
まあ、とりあえずメイドと執事は全員留守番だ。
今回は、スミレ、キャサリン、ミミ、シルフ、ウィードが一緒に行くことにした。
ワールトにはすでに転移の魔法陣を設置しているため、移動することは容易なのである。
「それじゃあ、行ってくる。」
「「「「「「行ってらっしゃいませ」」」」」」
俺達は転移の魔法陣を抜けてワールトに入った。
この町は、デーメーテールで一番西側に位置しており、アイセルモンデに向かう際に、必ず通る必要がある町になっている。
そのため、この町には行商人がよく行き来しており、交通のかなめともゆうべき町である。
この町では、通常の店舗で経営している商人も多いのだけれども、それ以上に屋台形式で店を営んでいるものも少なくない、むしろ店舗より多いと思われる。
しかも、デーメーテールになり、商人の取引も自由化されたため、以前のファン・デ・ノヴァでは考えられないような賑わいになっている。
デーメーテール国内では、様々な肉や魚、コメなども城から卸しており、コメひとつにおいても様々な料理が考えられ、それを目当てにしてアイセルモンデから旅行に来るものもいるくらいだ。
俺達は、屋台を見ながら歩いていたのだが、あまりこういう光景を見たことがないスミレは、屋台に興味津々だった。
「ねえねえ、リュウ、あれは何なの、あれちょっといい匂いね。あっ、あっちもおいしそう。あれあれ、あれ可愛くない?」
矢継ぎ早に目に留まるものすべてに興味を持ち、何か説明をする前に次のものに興味が移っていた。
「ちょっとスミレ、落ち着くだ。ゆっくり見ても時間はあるだ。それにここはデーメーテール国内だで、いつでも来れるだ。そんなに急いでみていたら、楽しめないだよ。」
ミミがスミレに言って聞かせているのだが、当のスミレは、そんなことは全然耳に入っていない。
ミミの手を引っ張て、屋台を覗き込んでいた。
俺は、スミレのことをミミとキャサリンに頼んで、シルフと一緒に屋台のめぼしいものがないか見て回った。
この世界に、少なかったものは調味料、塩はあったものの、それ以外が全くではないもののほとんどない状況だった。
今回のダンジョンのおかげで、しょうゆ、砂糖、唐辛子や味噌、酢などが流通するようになった。
これも、ほとんどがデーメーテール国内での流通であるのだが、その中で特に砂糖の流通が劇的にこの世界の甘味というものを変えてしまった。
今まで甘味料としてははちみつが基本だったものが、それよりも保存がきく砂糖が登場したことにより、果物以外でお菓子が作られるようになったのだ。
今目の前にある屋台でも、サーターアンダギーのような揚げ物が大量に作られていた。
ただし、今の作ったものには、中に砂糖が溶かしてあるだけで、そこまですごく甘いというものではなかった。
「店主、ちょっといいか、その砂糖をもう少しすりつぶしてな、揚げたものにまぶしてから売ってみたらもっと売れるぞ。」
その店主のおやじは、怪訝そうな顔をしたが、俺が懐から別の砂糖を取り出し、それをまぶしてから店主に食べさせたところ、目を見開て驚いていた。
「このような方法教えていただいてよかったのですか?」
「ああ、独占するなら駄目だっていうけど、こういう方法もあるってことで、いろいろなことに利用してもっと料理の幅を広げてくれるなら、どんどん使ってくれ。」
「だんな、ありがとうございます、早速これからこの方法で売っていきたいと思います。」
この店主の声が大きかったこともあり、すでに多くの人の興味を引いている、後ろにも行列が出来上がっていた。
俺は5個購入して、次のめぼしいものを探して回った。
気になるところがあれば、他にも使えそうな調理法を少しずつ伝えていき、様々な屋台で行列ができていた。
しばらくすると、スミレたちと合流しその日はこの町の今は利用していない領主の館を宿代わりに休んだのだった。