騎士団選考試験 3
希望者を連れて俺は森に来ていた。
周りでは、一瞬で景色が変わってしまっていることに驚きが隠せない希望者たちばかりであったが、
「え~、は~い、ちゅ~うも~く、今から討伐対象を発表するぞ。」
俺の声に従い、戸惑いはあるものの全員が俺の方に注目していた。
「今回の対象は、森の中にできているオーク集落の駆除、殲滅だ。」
希望者たちの顔つきが一瞬にして変わった。
「それでは、3次試験開始する。」
俺が宣言すると、それぞれの班長が一斉に指示を始めた。
全班が開始したのはまず、拠点の確保だった。
テントの設営、調理場の設営、水場の確保、トイレの設営etc・・・。
事前にどの班が、何をするか決めていたようだ、スムーズな設営になっている。
設営が終わったら、調査班は、森の調査に向かったようだ。
ここ周辺の地図自体は、簡易なものをすでに渡しているので、メイリーン・ドルトスはテーブルにその地図を広げた。
「調査班が、帰ってきたらまずは地図に森の大まかな広さを書き込んでいこう。私は、その情報をもとにさらにオーク集落の場所を特定していきたいと思っていますが。どうでしょうか?」
全班長が、集合して会議をしていた。
「ちょっといいか、オーク集落の討伐だろ、だったらこれだけいるんだ一斉に中を進んでいけばいいだろ?」
口を開いたのは、カルロスだった。
彼は、今回斧装備部隊の班長になっていた。
「ええ、国王陛下のお話では、試験の討伐対象はオーク集落の討伐で間違ってはいませんが、この森がオークだけの森とは聞いておりませんが」
メイリーン・ドルトスは、カルロスに反論していた。
「それなら、今聞いてみたらいいだろ?」
カルロスはさらに反論してきた。
「聞いてもいいかもしれませんが、たぶんそれをしたら脱落になってしまうと思いますが?」
メイリーン・ドルトスは、思っていることを伝えているようだ。
やはり、このメイリーン・ドルトスは、今回の試験内容を理解しているようだ。
「なぜだ?たったこの程度で脱落に?」
カルロスは、席を立ちあがってまで聞いてきた。
「王様が調べたからその情報だけを基に倒して来いって試験ですか?違いますよね、これは討伐隊じゃないんですか?対象を確認することも、状況を確認することも試験内容なはずです。たしかに、この試験で対象を確認されてあるでしょうから、聞けば情報はあると思います。それは、脱落でいいから情報くださいって言っているように思えるのです。」
メイリーン・ドルトスが、淡々と自分の考えをカルロスに告げていた。
「わかった、俺が悪かった。そこまで考えが回っていなかったようだ。あくまで俺は副隊長だ。隊長の指示に従うぜ。」
カルロスは、自分の考えが浅はかであることを理解したようだ。
俺は、相手の意見を取りえれることが出来る〇と、頭の中でカルロスの評価を付け加えていた。
班長は全員ここにそろっているため、調査班班長以外の19名が戻ってきた。
次々に情報が簡易な地図に書き込まれていく。
大まかな森の大きさ、入ってすぐどういう動物や魔物がいたかなどが記されていった。
やはり、情報が入ってきたことにより、戸惑いを隠せなくなったようだ。
通常であれば、どういった地域、気候に伴って、どのような魔物が生息しているかが一定してくるはずなのだが、この森は俺とデービスで作り上げたため、様々なところからかき集めた動物や魔物を集めてきたせいで、通常の魔物分布図では考えられない魔物になっているのだ。
それでも今回の討伐は、試験であるためそんなに時間はかけることが出来ない、期限としては1週間ほどを予定している。希望者に期限の話はしていないが、何もせず期限に達してしまった場合は、不合格になる予定だ。
ただし、オークの集落の場所は確認してからでないと、森に入っていくことも出来ず、部隊を細かく分けることになってしまうため、討伐隊が殲滅してしまう可能性だってあるわけだ。
そこは、安全考慮のため紅がひそかに森の中で警戒は行っているのだが。
まず2日間は、情報収集だけに時間が費やされていた。
2日目に、オーク集落の場所をある程度特定できたようなので、進軍を開始することにしたようだ。
ただし、進軍するのは班ごとではなく、全班を合わせて、それを3部隊に編成しなおしたようだ。
現在いるところから、正面から1部隊、左右に分かれたそれぞれから1部隊ずつで進軍する形らしい。
先頭を進んでいるのは、補助系を得意とする魔法使いだ、ライト系の魔法を使用し進んでいっている。
大体1時間行進したところで、それぞれの部隊は休憩に入ったようだ。これに関したは、悪くない考え方だと思う。
どこに魔物がいるかなんて基本分からないのだ、いつでも動けるように細かに休憩をとることはこのような状況のときには好ましいだろう。
5分ほどの休憩をはさんだのち、行進は再開された。
あと1度の休憩をはさみ、その後行進をしているところでオーク集落の周辺に到達した。
オークとオーグレス合わせて300体ほどいるようだが、数の上だけで見ればこちらが有利という状況だ。
今からの問題は、部隊の配置である。
今回の攻撃の計画は、まずは弓隊と、魔法使い隊による遠方よりの攻撃、その後それ以外の攻撃部隊による
波状攻撃の予定らしい。
ただ、1600人いるといっても全てが攻撃部隊ではない、400人ほどは明らかに今回攻撃部隊ではないのだ。
だから、攻撃部隊といっても大体1200人、3つに分けているのだから400人、そのなかで、さらに弓隊と、魔法使い隊を除くと残りは300人ほど、あくまでレベルのない人だから、通常オークを1体倒すのに3~5人程度で対応するのが基本らしい。
それであれば、今回の人数はぎりぎりな状況なのだ。
準備が完了したようだ。
のろしが3か所上がっている。
のろしが3か所確認できたところで、5分後一斉に弓隊と魔法使い隊の一斉攻撃が音もなく開始することになっている。
静かな森の中に、急に爆音が響き渡った。
((ドーン))
((GYAaaaaaaaa))
((バシュバシュ))
((バキバキバキ))
((Gryuuuuuuuuuu))
((ガガガガガガガガガガガ))
しばらく、して攻撃が収まったところで、残りの攻撃部隊が一斉に踏み込んだ。
弓隊、魔法使い隊の攻撃により、残りは200体ほどに減ってはいるものの、まだまだ殲滅に至っているわけではなかった。
一度攻撃が終了した弓隊、魔法使い隊も一度補給部隊のところまでで戻り、弓隊は矢の補充、魔法使い隊はマジックポーションの補充を行っていた。
弓隊と魔法使い隊が、戻っていく中負傷したものが次々に運び込まれていた。衛生兵と、回復魔法使い隊はすぐさま治療の準備を開始した。
今回の討伐ほかのところを含めて、ポーションに関しては俺特製のポーションを200本ずつ配布しておいた。
ひどい重傷者の場合は、必ず使用するように言ってある。
今のところ、そこまでの重傷者はいないようだが。
他にも、途中で武器が壊れてしまったものや、疲労により動けなくなったものも戻ってくるようになった。
ただし、今回の希望者はある程度したら全員戻っていくので、今のところ脱落者はいないと判断している。
紅もどうしても危ない状況であれば、気付かれないようにオークを倒しているのだ、希望者は、自分たちで倒せたと勘違いしているようだが、それで士気が上がっているので結果的にオーライだ。
オークの集落は、オークが建てた建物に籠城始めたようで、丸1日ほどの攻撃が落ち着いた時には残り40体ほどのオークが一番大きな建物の中に籠城していた。
籠城に残っているオークは、アーチャーもいたらしく、近づこうとすると、弓で攻撃を仕掛けてくるので、続けての攻撃が止まってしまった。
籠城が始まった日は、そのまますぎてしまったのだが、現時点で4日経過した。
あと3日、ここまで追いつめているのだから殲滅してほしいところではあるのだが。
さらに2日間何もできないまま過ぎていった。
最終日、俺は知らないところで、準備は進んでいたらしい。
魔法使い隊が、全部隊集まって魔力を集めた魔法陣を展開していたらしい。
大規模魔法で、一度に殲滅する予定だそうだ。
昼すぐになったころ、魔法が発動された。
大きな光の奔流となって、籠城している建物に降り注いだ。
建物は、瞬く間に塵となり、オーク達は見えなくなっていった。
光が収まったときに何体かのオークは、生き残ってはいたがすでに虫の息であったため、無事殲滅と言えるだろう。
「全員よくやった、拠点に戻ったら、撤収の後城へ帰還するから速やかに拠点に戻るように。」
俺が、希望者達にそう告げて、全員が拠点に向けて戻っていったのであった。